ファントム・ペイン―天命探偵 真田省吾3―
1,210円(税込)
発売日:2010/02/22
- 書籍
人の哀しみに塩を塗り込むやつは許せねェ! ますますヒートアップ、シリーズ第三弾!!
殺人予知夢の精度が増した美少女・志乃。狂気の麻薬王と対決する不死身の真田。タッグを組んだ二人は、死を定められた人々の運命を変えることができるのか? そして、初めて明かされる公香と山縣の衝撃の過去とは――心に“消えない痛み”を抱えるすべての人に贈る、涙を吹き飛ばすアクションミステリー!
目次
プロローグ
第一章 Phantom
第二章 Pain
第三章 Revenge
第二章 Pain
第三章 Revenge
エピローグ
書誌情報
読み仮名 | ファントムペインテンメイタンテイサナダショウゴ03 |
---|---|
発行形態 | 書籍 |
判型 | 四六判 |
頁数 | 352ページ |
ISBN | 978-4-10-306603-3 |
C-CODE | 0093 |
ジャンル | ミステリー・サスペンス・ハードボイルド |
定価 | 1,210円 |
書評
波 2010年3月号より 過去を未来につなぐこと
人が殺されるところを目撃する。
ナイフで刺される、拳銃で撃たれて一瞬――そんなシチュエーションならまだいい。命乞いをしている人が殺される。無惨な姿になった子供に半狂乱になって駆け寄る母親の姿が見える。耳をそがれ、目を潰される残酷な拷問の末に殺されていく人間。「やめて! やめて! やめて!」そう叫んでも惨劇は止められない。目を瞑っても、無駄。凄惨な光景は、常に目撃者を必要とする……。
車椅子の少女・志乃が経験してきたのはそういうことだった。12歳の時に遭遇した事故で母を失って以来、自らも複雑骨折をした足を抱えて「歩かない」ことを選択した志乃。それ以来そなわった、未来に人が殺されるところを克明に夢に見る能力。わかっていても、助けられない。夢に見た惨劇は必ず、現実になる。
それが少しずつ変わり始めたのは、オートバイをぶっ飛ばす無鉄砲な青年・真田省吾に出会ってからだ。真田と、その仲間である勝気で肉感的な女探偵・公香、そして真田の親代わりである元刑事の探偵・山縣。
志乃は、彼らと出会って以来、はっきりとその牙をあらわにし始めた「運命」と対峙し、事件の怒濤の展開の中で父をも失った。それが、天命探偵・真田省吾シリーズ第一作『タイム・ラッシュ』。第二弾『スナイパーズ・アイ』を経て、今回出版されたのが第三弾『ファントム・ペイン』だ。
動かない足を抱えて、それでも「情報」を処理する役割として真田たちと共に探偵事務所で働き始めた志乃。今回彼らが対峙するのは、シリーズ最大の敵であり、今まで起こった事件すべての黒幕とも言える、右耳の半分が欠けた男。
生きた人間の身体を切り刻むことにも、殺すことにも、まったく何のためらいも感情もない、「亡霊」と呼ばれた男。刑務所の中から巨大な麻薬シンジケートを操り続けた男。その男が刑務所を脱獄した。自分を裏切った人間、自分を捕らえた刑事たちへの復讐のために。
志乃・真田・公香・山縣――。
それぞれが、それぞれに重い過去を背負っている。
志乃と真田は両親を殺され、山縣は恋人を失い、そして公香は……?
この物語では公香の過去が明らかになる。
過去に、どうしようもなく失ったもの。自分の半身が根こそぎ持っていかれたような感覚。失った肢体が、まだそこにあるかのように痛みを与える。
――「ファントム・ペイン」。失ったものの痛み。
それは志乃の過去であり、真田の過去であり、公香の過去であり、山縣の過去である。
PTSD。過去は何度でもよみがえって未来を拘束しようとする。私をそのままにして、あなただけ幸せになるのは許さない、というように。
志乃が見続ける夢。人が殺される。わかっていても何もできない。その絶望的な無力感は、過去に起こった出来事が潜在意識に刻みつけた傷に囚われ続ける人間のそれかもしれない。それを知って何度逃れようとしても運命は変わらない。何度も何度も同じ絶望が繰り返されるだけ。
けれど、変えようとしなければ、逃れようとしなければ、変わることは決してない。
目の前の敵との戦いは、各人にとって、そこから抜け出すべき過去との戦いに重ねられる。
ファントム・ペイン。消えない過去の傷。逃れようとするすべての人間が、すでに定まっているように見える運命の輪から抜け出すことはできるのか?
過去を未来につなぐこと。
「運命は、変えられる」
疾走するオートバイがその答えを知っている。
ナイフで刺される、拳銃で撃たれて一瞬――そんなシチュエーションならまだいい。命乞いをしている人が殺される。無惨な姿になった子供に半狂乱になって駆け寄る母親の姿が見える。耳をそがれ、目を潰される残酷な拷問の末に殺されていく人間。「やめて! やめて! やめて!」そう叫んでも惨劇は止められない。目を瞑っても、無駄。凄惨な光景は、常に目撃者を必要とする……。
車椅子の少女・志乃が経験してきたのはそういうことだった。12歳の時に遭遇した事故で母を失って以来、自らも複雑骨折をした足を抱えて「歩かない」ことを選択した志乃。それ以来そなわった、未来に人が殺されるところを克明に夢に見る能力。わかっていても、助けられない。夢に見た惨劇は必ず、現実になる。
それが少しずつ変わり始めたのは、オートバイをぶっ飛ばす無鉄砲な青年・真田省吾に出会ってからだ。真田と、その仲間である勝気で肉感的な女探偵・公香、そして真田の親代わりである元刑事の探偵・山縣。
志乃は、彼らと出会って以来、はっきりとその牙をあらわにし始めた「運命」と対峙し、事件の怒濤の展開の中で父をも失った。それが、天命探偵・真田省吾シリーズ第一作『タイム・ラッシュ』。第二弾『スナイパーズ・アイ』を経て、今回出版されたのが第三弾『ファントム・ペイン』だ。
動かない足を抱えて、それでも「情報」を処理する役割として真田たちと共に探偵事務所で働き始めた志乃。今回彼らが対峙するのは、シリーズ最大の敵であり、今まで起こった事件すべての黒幕とも言える、右耳の半分が欠けた男。
生きた人間の身体を切り刻むことにも、殺すことにも、まったく何のためらいも感情もない、「亡霊」と呼ばれた男。刑務所の中から巨大な麻薬シンジケートを操り続けた男。その男が刑務所を脱獄した。自分を裏切った人間、自分を捕らえた刑事たちへの復讐のために。
志乃・真田・公香・山縣――。
それぞれが、それぞれに重い過去を背負っている。
志乃と真田は両親を殺され、山縣は恋人を失い、そして公香は……?
この物語では公香の過去が明らかになる。
過去に、どうしようもなく失ったもの。自分の半身が根こそぎ持っていかれたような感覚。失った肢体が、まだそこにあるかのように痛みを与える。
――「ファントム・ペイン」。失ったものの痛み。
それは志乃の過去であり、真田の過去であり、公香の過去であり、山縣の過去である。
PTSD。過去は何度でもよみがえって未来を拘束しようとする。私をそのままにして、あなただけ幸せになるのは許さない、というように。
志乃が見続ける夢。人が殺される。わかっていても何もできない。その絶望的な無力感は、過去に起こった出来事が潜在意識に刻みつけた傷に囚われ続ける人間のそれかもしれない。それを知って何度逃れようとしても運命は変わらない。何度も何度も同じ絶望が繰り返されるだけ。
けれど、変えようとしなければ、逃れようとしなければ、変わることは決してない。
目の前の敵との戦いは、各人にとって、そこから抜け出すべき過去との戦いに重ねられる。
ファントム・ペイン。消えない過去の傷。逃れようとするすべての人間が、すでに定まっているように見える運命の輪から抜け出すことはできるのか?
過去を未来につなぐこと。
「運命は、変えられる」
疾走するオートバイがその答えを知っている。
(ふじもと・ゆかり 評論家)
関連コンテンツ
著者プロフィール
神永学
カミナガ・マナブ
1974(昭和49)年、山梨県生れ。日本映画学校(現日本映画大学)卒。自費出版した「赤い隻眼」が編集者の目に留まり、大幅に改稿の上、2004(平成16)年『心霊探偵八雲 赤い瞳は知っている』として刊行され作家デビュー。「心霊探偵八雲」シリーズとして人気を集める。小説の他、舞台脚本の執筆なども手がけている。他の著作に、「怪盗探偵山猫」「天命探偵」「確率捜査官 御子柴岳人」「革命のリベリオン」「浮雲心霊奇譚」「悪魔と呼ばれた男」の各シリーズ、『コンダクター』『イノセントブルー 記憶の旅人』『ガラスの城壁』などがある。
関連書籍
判型違い(文庫)
この本へのご意見・ご感想をお待ちしております。
感想を送る