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桑田佳祐 言の葉大全集 やっぱり、ただの歌詩じゃねえか、こんなもん

桑田佳祐/著

1,760円(税込)

発売日:2012/09/15

書誌情報

読み仮名 クワタケイスケコトノハダイゼンシュウヤッパリタダノカシジャネエカコンナモン
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 334ページ
ISBN 978-4-10-332831-5
C-CODE 0095
ジャンル 音楽
定価 1,760円

活動開始25年、ソロワークスのすべてを綴った、書き下ろしエッセイ。

サザンとは違った、新しい音楽仲間と切磋琢磨した80年代、亡くなった母の棺の傍らで作った曲、執念で臨んだアルバム『MUSICMAN』と突然の病。闘病の日々、震災、復活の紅白出演、そしてツアーへ――。音楽と歩んだ人生、向き合った命、未来について真摯に紡いだ言葉の数々。自選88曲の歌詩と共にたどる、歌手・桑田佳祐の軌跡。

目次
やっぱり、歌詩じゃないか!
80年代 ソロ活動開始
ポップスでいこう
『ROCK AND ROLL HERO』の反省
命をありがとネ
未来に向かって
愛しい人へ捧ぐ歌
索引

書評

波 2012年10月号より 桑田佳祐は詩人である

鈴木光司

高校時代、ぼくはロックンローラーだった。学園祭のステージはもとより、地元浜松のライブホールやロックコンテストに出たりして、勉強そっちのけでバンド活動にのめり込んだ。
大人たちに混じって演奏する合間に、ふとしたきっかけで、先輩ミュージシャンと論争になったことがある。
論争のテーマは、「ロックミュージックにとって歌詞は大切か、否か」であった。
ぼくが、「ロックにとって歌詞はいかほどのものでもない」と論じるや、先輩は、ボブ・ディランを引き合いに出し、「歌詞はロックの命である」と論駁してきた。
喧嘩になることはなく、じっくり話し込んで議論を終えたけれど、高説を拝聴しても持論が変わることはなかった。当時、ぼくが聴いていたのは英米のハードロックばかりで、ボーカリストの声はひとつの楽器としてしか響いてこなかった。そもそも、英語がわからないのだから、歌詞が織り成すストーリーや背景を理解できるはずもない。当時、コピーしていたディープ・パープルのリードボーカル、イアン・ギランの歌は雄叫びに近く、真似てうたった学園祭のステージを見たガールフレンドからは、「光司くん、ずっと吠えていたね」とありがたい感想をいただいた。
パワーで押し切るハードロックを好み、生ギターで女々しさを語るフォークが苦手という性癖も影響してか、高校時代のぼくは、歌詞をおろそかにしていた。
ロックンロール一色で染まり、まったく勉強をしなかった高校時代を反省し、受験浪人を経て大学の文学部に進んだ年、ぼくはある新人バンドのデビュー曲を聴いて、強い衝撃を受けた。
サザンオールスターズの『勝手にシンドバッド』である。
譜面として表現するのがやっかいな独特のリズムを持ち、身体全体で正確にビートを刻まなければうたうことはできない。メロディライン、リズム、歌詞、すべて斬新で、聴けば聴くほど、この曲の持つ凄さを実感した。
一体、どこが凄いのか……、繰り返し聴いて歌詞を暗唱し、コンパの席でアカペラでうたう回数が増すにつれ、脳裏に、湘南の海を舞台に繰り広げられる若い男女の恋が、躍動感を持って動き始めてきたのだ。
しかも、脳裏に浮かぶイメージは、そのときどきの心模様と呼応して、微妙に形を変えてくる。あるときは恋の成就を予感させる明るい歌、あるときは夏の終わりとともに消えた恋を懐かしむ歌、またあるときは、なまめかしい腰つきが次の行為を連想させる卑猥な歌、といった具合に、背景のストーリーはめくるめく展開をし、自在に流れてゆく。
凡庸な歌詞が、これほどの自由さ、躍動感を内包することはない。陳腐さは、ものの動きを止め、固定させてしまう。突出した言語運用能力の持ち主のみに可能な神業であろう。
以来、ぼくは桑田佳祐が作る歌におおいなる興味を抱き、可能な限り、カラオケのレパートリーに取り入れている。
うたうたび、メロディと歌詞、両方から喚起されるシーンが脳裏に踊って、実に楽しく、大きなカタルシスを得る。桑田佳祐の歌は、ぼくにとって、最高の娯楽である。
もし高校時代に桑田佳祐の歌を聴いていたら、先輩ミュージシャンと論争することもなかったに違いない。
今回、『桑田佳祐 言の葉大全集 やっぱり、ただの歌詩じゃねえか、こんなもん』のページを捲っていて、エッセイの部分はともかく、歌詞が記載されたページから、文字が織り成す独特の模様が浮き上がってきたことに驚かされた。漢字とひらがな、日本語と英語のバランス、一行一行の長さ、間の取り方、言葉の配置……、活字となって表れた構図そのものが、流れるような美しさを持っている。読む前、うたう前から、歌詞が生きていることがわかるのだ。
モーツアルトやベートーベンなど、クラシック名曲のスコア自体が、完成された絵であるのと似ている。
この本は、桑田佳祐のエッセイ集であると同時にすぐれた詩集でもある。

(すずき・こうじ 作家)

著者プロフィール

桑田佳祐

クワタ・ケイスケ

1956年2月26日生まれ。神奈川県茅ヶ崎市出身。1978年サザンオールスターズ「勝手にシンドバッド」でデビュー。デビューして以来フロントマンとして、またソロアーティストとして常に日本のミュージックシーンのトップを走り続けている。ソロ名義では、1987年リリースの「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」で活動を開始。以降ソロ活動も精力的に続けており「波乗りジョニー」「白い恋人達」「明日晴れるかな」などヒット曲多数。2011年2月、約9年振りのオリジナルソロアルバム『MUSICMAN』をリリース。9月10、11日には宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)で「宮城ライブ~明日へのマーチ!!~」を開催し、大成功。2012年7月18日には、待望の新曲を含む桑田佳祐名義の楽曲を幅広く網羅した、スペシャルアルバム『I LOVE YOU - now & forever -』をリリース。2012年9月からは5年振りとなる全国ツアー(10都市22公演)を開催。

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