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アフター・ビットコイン―仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者―

中島真志/著

1,760円(税込)

発売日:2017/10/27

  • 書籍
  • 電子書籍あり

ビットコインは「もう終わった」。
ブロックチェーンは「これからが本番」。

日銀出身の決済システムの第一人者が、未来の通貨として注目されるビットコインの崩壊を、その設計と運用の両面からいち早く予測。さらに仮想通貨の中核技術「ブロックチェーン」が、ゴールドマン・サックスや三菱東京UFJ銀行、そして各国の中央銀行を巻き込みながら、金融界に大革命を起こしつつある状況を鮮やかに描く。

目次
はじめに
序章 生き残る次世代通貨は何か
1. 過大評価されている仮想通貨?
2. 期待が高まるブロックチェーン
3. 中央銀行によるデジタル通貨発行への取組み
4. ブロックチェーンがつくる新たな未来
第1章 謎だらけの仮想通貨
1. すべての始まりはビットコイン
2. ビットコインはどうやって使うのか
3. ビットコインを支える不思議なメカニズム
4. ビットコインの新規発行「マイニング」の仕組み
5. 1000種類以上もあるビットコイン類似の仮想通貨:アルトコイン
6. ビットコインは果たして通貨か?
第2章 仮想通貨に未来はあるのか
1. ビットコインのダーティなイメージにつながった3つの事件
2. 一握りの人のためのビットコイン?
3. ビットコインの仕組みに問題はないのか?
4. ブロックサイズ問題がもたらしたビットコインの分裂騒動
5. 政府の介入によってビットコインは終わる?
6. 健全なコミュニティはできているのか?
7. ビットコインはバブルか?
第3章 ブロックチェーンこそ次世代のコア技術
1. これは本物の技術だ!
2. ブロックチェーンの類型
3. 代表的なブロックチェーン
4. 金融分野におけるブロックチェーンの実証実験の動き
5. ブロックチェーン導入時に決めるべきこと
第4章 通貨の電子化は歴史の必然
1. 貨幣の変遷は技術進歩と共に
2. 15年前から始まっていた通貨の電子化
3. 実証実験に動き出す世界の中央銀行
第5章 中央銀行がデジタル通貨を発行する日
1. 2種類の中央銀行マネー
2. 銀行券を電子化する「現金型デジタル通貨」
3. 銀行経由で発行する「ハイブリッド型デジタル通貨」
4. 当座預金の機能を目指す「決済コイン型デジタル通貨」
5. デジタル通貨は新たな政策ツールとなるか?
第6章 ブロックチェーンによる国際送金革命
1. 高くて遅い「国際送金」の現状
2. 安くて早い国際送金を目指す「リップル・プロジェクト」
【BOX1】リップルを使った国際送金の例
3. 国内におけるリップル・プロジェクトの展開
第7章 有望視される証券決済へのブロックチェーンの応用
1. 中央集権型で複雑な現行の証券決済
2. 相次ぐ実証実験プロジェクト
3. 証券決済への適用時に考慮すべき点
おわりに
参考文献

書誌情報

読み仮名 アフタービットコインカソウツウカトブロックチェーンノツギナルハシャ
装幀 新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判
頁数 288ページ
ISBN 978-4-10-351281-3
C-CODE 0030
ジャンル ビジネス・経済
定価 1,760円
電子書籍 価格 1,760円
電子書籍 配信開始日 2017/11/10

書評

中央銀行がデジタル通貨を発行する日

神田潤一

「ビットコイン」あるいは「仮想通貨」という言葉が一般紙にまで躍るようになったのは、高々この1~2年の話である。仮想通貨とは、円やドルのような法定通貨の裏付けを持たず、インターネットを通じてやり取りされる価値であり、ビットコインやイーサリアムといった代表的な仮想通貨の価値が世界的に大きく上昇し、最近ではその人気に着目したICO(新規仮想通貨公開)という仕組みが注目されるなど、現代の金融、とくに最新の技術と結びついた新分野である「フィンテック」において最もホットなテーマといえる。
「アフター・ビットコイン」とは、その「ビットコイン」が過去の遺物であると言わんばかりの挑戦的なタイトルである。そのタイトル通り、筆者はこの仮想通貨の歴史やその複雑で特徴的なメカニズムを丁寧に解き明かし、上位1%未満が全体の9割のビットコインを所有している取引の実態や、新たに発行されるビットコインの7割を中国企業が握っている寡占状態といった「影の部分」を指摘したうえで、ビットコインの将来性を「厳しめにみておいた方がよい」と一刀両断にしている。
 これに対して、仮想通貨を支える基幹技術である「ブロックチェーン」については、技術面の基礎的な説明と、①取引データの改ざん防止、②システム障害の発生防止、③構築コストの削減、などの特徴に言及したうえで、「次世代のコア技術」、「金融の仕組みを根底から覆すかもしれない」として、最大限に評価している。
 このような、言わば「大上段」に構えた解説と評価が下せるのは、筆者が、我が国における決済や金融インフラに関する第一人者であるからである。筆者は、日本銀行や国際決済銀行(BIS)での勤務を経て、現在麗澤大学で教鞭をとられているが、これまでに著した『決済システムのすべて』や『証券決済システムのすべて』は、我が国における決済・金融インフラに関する「バイブル」として、多くの金融関係者の必読の書となっている。またその豊富な経験と深い知見から、金融庁や全銀ネットの審議会等の主要メンバーとして、数々の鋭い提言を行っている。実は筆者は、私が日本銀行に勤務していた時代の上司であったのだが、その当時の緻密なリサーチと卓越した洞察力に更に磨きがかかっており、近年、私が金融庁に出向し「フィンテック」に関する制度整備と決済・金融インフラの高度化に向けた政策策定を担当していた際にも、様々な有益な助言を頂いていた。
 このような実績と知見を持つ筆者は、本書の後半で、ブロックチェーンを活用した「通貨の電子化」は「歴史の必然」であり、将来的には各国の中央銀行がデジタル通貨を発行し、それによって金融政策のスキームさえ変わるという大胆な予測をしている。実際に、英国、カナダ、シンガポール、スウェーデンをはじめとする様々な国の中央銀行が、ブロックチェーン技術を活用したデジタル通貨の実現に向けて研究や実証実験に取り組み始めているが、本書ではこうした動きだけでなく、1990年代当時極秘とされていた日本銀行における「電子現金プロジェクト」にも言及し、こうした予測が大いに実現可能性の高いものであることを指摘している。
 更に、本書の最後では、ブロックチェーンの民間分野における活用の代表的な事例として、国際送金と証券決済における取り組みを紹介し、ブロックチェーン技術が、決済・金融インフラ全体に大きな変革をもたらしつつある現実を浮き彫りにしている。
 本書では、こうした金融の最先端の取り組みやその衝撃的な実態を具に描きつつも、その視点は常に、通貨とは何か、中央銀行とは何か、決済・金融インフラに求められる機能とは何かという、これまでの筆者の冷静な洞察に裏付けられている。本書を貫くこうした公的・学術的な姿勢は、筆者の過去の著作物から踏襲されており、それゆえに金融関係者の伝統的な価値観にも共通し、決済・金融インフラの構築や運営に携わってきた多くの人々の共感を呼ぶものであろう。そういう意味で、本書は、最近続々と発行されている「仮想通貨」、「ビットコイン」、「ブロックチェーン」に関する著作物とは明らかに一線を画している。本書は、フィンテック、金融・決済インフラや、金融機関のシステムの構築・運用を担うすべての関係者に向けた「預言の書」であり、新たな「バイブル」である。

(かんだ・じゅんいち 株式会社マネーフォワード 渉外・事業開発責任者)
波 2017年11月号より
単行本刊行時掲載

イベント/書店情報

どういう本?

タイトロジー(タイトルを読む)

ビットコインは、なぜ仮想通貨として「終わり」なのか?
①脆弱性 コイン自体は堅牢だが、保管や流通の管理システムが脆弱。
②偏在性 たった1%のユーザーが、ビットコインの9割を保有。
③非通貨 通貨として使っているのは、全ユーザーのたった2%。
④投機性 価格変動があまりに激しく、通貨として使うには不適当。
⑤集中性 全取引の94%が中国元で、ドル・ユーロ・円はごく僅か。
⑥崩壊性 リワード半減・分裂騒動・政府介入が招く「ラストデイ」。

著者プロフィール

中島真志

ナカジマ・マサシ

1958年生まれ。1981年ー橋大学法学部卒業。同年日本銀行入行。金融研究所、国際局、国際決済銀行(BIS)などを経て、麗澤大学経済学部教授。早稲田大学非常勤講師。博士(経済学)。単著に『アフター・ビットコイン仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者』『外為決済とCLS銀行』、『SWIFTのすべて』、『入門 企業金融論』、共著に『決済システムのすべて』、『証券決済システムのすべて』など。決済分野を代表する有識者として、金融庁や全銀ネットの審議会等にも数多く参加。

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