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アフター・ビットコイン2 仮想通貨vs.中央銀行―「デジタル通貨」の次なる覇者―

中島真志/著

1,760円(税込)

発売日:2020/06/23

書誌情報

読み仮名 アフタービットコイン02カソウツウカヴァーサスチュウオウギンコウデジタルツウカノツギナルハシャ
装幀 新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判
頁数 284ページ
ISBN 978-4-10-351282-0
C-CODE 0030
定価 1,760円
電子書籍 価格 1,760円
電子書籍 配信開始日 2020/06/23

迷走する「リブラ」。先行する「デジタル人民元」。動き始めた「デジタル円」――。

フェイスブック「リブラ」はなぜ迷走したのか? 「デジタル人民元」の実用化を急ぐ中国と、それを猛追する各国の中央銀行の思惑とは? 香港発の「疑惑のステーブルコイン」とは? 独自開発に動き出した大手米銀の狙いとは? 「デジタル通貨」の覇権をめぐるIT企業・民間銀行・中銀の三つ巴の争いを、第一人者が鮮やかに描く。

目次
はじめに
第I部 リブラの野望―挫折を乗り越えられるか
第1章 リブラとは何か
1.ホワイトペーパーの公表に世界が騒然
2.ビットコインとリブラの違い
3.リブラの真の発行目的は何か?
【BOX1】リブラの名前は古代ローマから
第2章 巧みにデザインされたリブラの仕組み
1.中央銀行のビジネスモデルから学んだリブラ
2.リブラの衝撃の大きさ
3.最大の被害国は米国か?
4.当局は何を懸念しているのか?
【BOX2】リブラは100%の裏付け資産を維持できるのか?
5.規制の行方
6.リブラの方針転換――「リブラ2・0」へ
第II部 群雄割拠の仮想通貨―アルトコインからデジタル通貨へ
第3章 混乱続く仮想通貨業界
1.仮想通貨取引所からの流出が相次ぐ
2.51%攻撃の発生
3.ビットコインの違法取引への利用
第4章 仮想通貨の発展
1.ビットコインからアルトコインへ
2.ステーブルコインとは何か
3.テザーによる価格操作疑惑
第5章 デジタル通貨への流れ
1.ステーブルコインからデジタル通貨へ
2.銀行グループによるデジタル通貨発行の動き
3.個別銀行によるデジタル通貨発行の動き
第III部 中央銀行の参戦―「大本命」に死角はあるか
第6章 中央銀行によるデジタル通貨
1.中銀デジタル通貨(CBDC)の発行に向かう中央銀行
2.中銀デジタル通貨(CBDC)の必要性と種類
3.大口決済用CBDCとは
4.大口決済用CBDCに向けた実証実験の動き
第7章 現金のデジタル化
1.小口決済用CBDCとは
2.小口決済用CBDCに向けて動く中央銀行
3.小口決済用CBDCの留意すべき点
4.中銀デジタル通貨は新たな政策ツールになるのか?
5.今後のCBDCの展開
おわりに
参考文献

書評

奇っ怪なマネーの世界

finalvent

「デジタル通貨」の何が今、問題なのか。本書を読んで、ようやくその問題の所在に気づかされた。
 もっとのんきに考えていた。近未来に自然にデジタル通貨というものが世界中で普及する日が来るだろう。だから今のうちに最先端の関連知識を学ぶのに本書は便利な書物だろう。そう思ったまま読み始めたのである。もちろん本書は啓蒙的な側面から読まれてもいい。技術解説書として読まれてもいい。十分に適切な書籍である。
 嫌な予感はあったのだ。2019年6月18日、米フェイスブックが自社のデジタル通貨「リブラ」の計画を公開すると、即座に世界の金融当局(特に欧州)や米国議会が過剰とも思える反応を示した。あのとき、もしかしたらこれはかなり重要な問題なのではないかと薄々疑問には思っていた。だが、リブラも所詮、日本でのSNS大手のライン(LINE)の決済サービスや、ソフトバンクを背景とするペイペイ(PayPay)のようなものだろうとも思っていた。あの違和感の正体が読後わかった。呆然とした。
 そのリブラの重要性は、第Ⅰ部で詳細に示される。この認識こそがまず、本書から得られる最初のメリットだろう。あえて一言で言えば、通貨主権の危機である。あのままリブラ計画が実施されていれば、国家あるいは国家連合の中央銀行が従来独占的に発行してきた通貨というものが、一民間企業に凌駕されるという事態が起きたかもしれない。リブラの計画は、既存のあらゆるデジタル通貨よりも優れたものであった。
 その後、リブラの計画はどうなったか。短期間で変更を余儀なくされた。通貨主権を脅かしかねない牙は早々に抜かれたわけである。それでも各国の中央銀行は、急速に目を覚ますことになった。本書の言葉を借りれば、「中銀デジタル通貨の実用化」が「秒読み段階」に入ったのである。具体的にどのようになるのか。それが本書の第III部のテーマである。
 リブラ・ショックとでもいうべき衝撃を受け、先進国の中央銀行とBIS(国際決済銀行)が一丸となり、CBDC(中銀デジタル通貨)の研究会を立ち上げた。なかでもBISの危機感は強い。次なる課題には「デジタル人民元」がある。
 中華人民共和国は今年の5月から深セン、蘇州、成都、および北京南西の副都心「雄安新区」の4都市でテスト運用を開始。さらに、2022年の北京冬季五輪に向けて、会場付近での実証実験も追加された。西側諸国が手をこまねいていれば、通信技術における5Gと同様、デジタル通貨分野でも中国に主導権が握られる。本書のその説明は詳しい。背景から、そもそもCBDCとはなにかという原点まで遡っていく。展望も冷静である。
 CBDCに至るまでの混乱状況は、第II部「群雄割拠の仮想通貨―アルトコインからデジタル通貨へ」で扱われる。混乱は、大きく技術問題と社会問題の二面から検討されている。技術問題の面で興味深いのは「51%攻撃」である。堅牢と見られていた「ブロックチェーン」の安全性はすでに破られている。「誰でも承認作業に参加可能」な仮想通貨では現状対処できないようだ。
 社会面で驚かされたのは、まず北朝鮮の関与だ。そして、現状におけるビットコインの新しい存在意義である。私は、ビットコイン・バブルが終わり、保有者は塩漬け株のように持っているだけとばかり思っていた。そうではないらしい。すでに2019年末の時点でビットコインの市場占有率は70%まで回復している。
 ビットコインは仮想通貨と呼ばれているものの、実質的には投機の対象であり、決済性は低い。他方、決済手段ということであれば、価格が安定した別種の仮想通貨が好ましい。そこでドルなどと連動する「ステーブルコイン」が活用されるはずだが、実際には決済に使われているふうはない。いったい何が起きているのか。本書が描き出すのは、ビットコインの投機などで得た利益がステーブルコインに移されている実態だ。なかでも、「テザー」の薄暗い背景には驚かされた。魑魅魍魎、百鬼夜行という古臭い言葉が思い浮かぶ。
 つくづくマネーの世界は奇っ怪だ。デジタル通貨はCBDCの普及で終わることはないだろう。今後もビットコインやテザーのような民間通貨も連動し、一種のディストピア(暗黒郷)にもなりうる。本書の知見は、マネーに対する現代市民の危機意識にも呼応するものなのだ。

(ファイナルベント ブロガー)
波 2020年8月号より
単行本刊行時掲載

著者プロフィール

中島真志

ナカジマ・マサシ

1958年生まれ。1981年ー橋大学法学部卒業。同年日本銀行入行。金融研究所、国際局、国際決済銀行(BIS)などを経て、麗澤大学経済学部教授。早稲田大学非常勤講師。博士(経済学)。単著に『アフター・ビットコイン仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者』『外為決済とCLS銀行』、『SWIFTのすべて』、『入門 企業金融論』、共著に『決済システムのすべて』、『証券決済システムのすべて』など。決済分野を代表する有識者として、金融庁や全銀ネットの審議会等にも数多く参加。

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