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読むだけでグングン頭が良くなる下ネタ大全

堀元見/著

1,650円(税込)

発売日:2025/05/14

  • 書籍
  • 電子書籍あり

教養なき下ネタは去れ。令和に棹差す珠玉の金言集、完成。

コーンフレークは性欲を抑えるために開発された? 「正常位」の名には人類史が宿っている? アリストテレス、ガンディー、フロイト、正岡子規、医学者、性科学者……先人たちの飽くなき探究と実験により得られた性科学的知見の数々。著者ならではの考察と多角的な視点から生まれた、下ネタの〈総合知〉と称すべき賢者の書。

目次

はじめに

【第1部】医学―医は仁術
I 自らのイチモツで実験した英雄たち。アリストテレスからガンディーまで。
II 古代ローマの「義務づけられたキス」と隠された医療ドラマ。
III ルソーも認めたオナニー害悪論と、その呪いからの解放。

【第2部】秘部―秘すれば花なり
I ホモ・サピエンスの陰茎に骨がない理由。人類学者と聖書学者の視点から。
II 「くぱぁ」全史。ヘロドトスが目撃した光景はいかにして現代日本に蘇ったか。
III 恐竜の研究史は、「巨人のキンタマ」から始まった。

【第3部】聖水―奇蹟の液体
I 無限の用途がある尿。修道女の聖水から生まれた薬。
II 正岡子規も熱中した「おしっこ俳句」。深くて広い下ネタ詩歌の世界。
III 女性の潮吹きの正体を探るために、色付きの水を膀胱に入れるということ。

【第4部】房事―快楽の起源
I 正常位の呼び方には、人類史が宿っている。宣教師の体位に起きた革命。
II 性行為およびその場所の一般理論。牛車やバーチャル空間を例に。

【第5部】公民―世を治め民を救う
I クリントン大統領の不貞の言い訳は古代ローマ式。古代エジプト式ならよかったのに。
II 財としてのオナニーに関する諸考察。ギッフェン財の存在証明。

【第6部】技術―革新される性
I マッサージものAVは、タイムスリップ歴史ドラマ。「健全なマッサージ」は欺瞞ではない。
II アダルトはスマートになるが、人はスマートにならない。乖離する知性のアイロニー。
III コーンフレークは、性欲を抑えるために作られた。食事と性欲の相関を調べた栄養学者。

【第7部】交流―慇懃を通ずる
I 恋人へのプレゼントの最適解はディルド。あるいはおまる。我々はなぜ失敗プレゼントを贈るのか。
II 乳首責めの社会学。FANZAレポートが捉えた、日本人の上流階級化。
III 「寒くなりましたね」はセクハラ。うっかり言いがちなトラップ下ネタ10選。

おわりに
参考文献
謝辞
索引

書誌情報

読み仮名 ヨムダケデグングンアタマガヨクナルシモネタタイゼン
装幀 Bridgeman Images/カバー写真提供、アフロ/カバー写真提供、横山券露央(Beeworks)/ブックデザイン
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判
頁数 256ページ
ISBN 978-4-10-356291-7
C-CODE 0095
ジャンル エッセー・随筆、ノンフィクション
定価 1,650円
電子書籍 価格 1,650円
電子書籍 配信開始日 2025/05/14

書評

「ゆる言語学ラジオ」相方より

水野太貴

 幸運なことに、著者の堀元さんは面白い雑学を見極めるセンスと、それを適切に配列し、良質なコンテンツに変える構成能力に長けている。ところが不幸なことに、彼はその才能を余すところなく無駄遣いした。端的に言うと、『読むだけでグングン頭が良くなる下ネタ大全』はそういう本である。
 堀元さんとの付き合いは長い。YouTube、Podcast番組「ゆる言語学ラジオ」「ゆるコンピュータ科学ラジオ」をふたりで始めてもう3年以上経つ。同番組でも、その嗅覚と構成力はいかんなく発揮されている。
 僕もゆる言語学ラジオの台本を構成することがあるのだが、面白い研究や知識というのは諸刃の剣だと常々思う。それ自体が面白すぎると、構成をついサボってしまうからだ。「女性器が開くオノマトペ『くぱぁ』の原形は紀元前5世紀にあった」(第2部Section II)という事実があれば、それをまっすぐ紹介しているだけでもそれなりに面白いコンテンツになる。ところが堀元さんはサボらない。この話をあくまで導入とし、各国の文化を比較。しまいにはキリスト教の歴史と「くぱぁ」を並べてみせるのだ。バカげている。実にバカげているのだが、その飛躍が心地よい。
 各章こんな調子なので、出てくる雑学のクオリティと密度は過去の著作である『教養インテリ悪口本』(光文社)、『ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律』(徳間書店)に比べて段違いに高い。自分が感心したものをざっと並べてみると、「恐竜の大腿骨の化石は、18世紀には巨人のキンタマだと思われていた」(第2部Section III)、「コーンフレークは性欲を抑えるために開発された」(第6部Section III)、「中華料理には、思春期前の男児のおしっこで卵を煮込んだ料理がある」(第3部Section I)……。テーマがテーマなだけに、感心したというのも憚られるが、意外な事実であることは間違いない。そしてこれらが広く知られていない理由のひとつは、下ネタだからだろう。これまで語られていなかったがゆえに、堀元さんのリサーチ力とストーリーテリング力は金玉きんぎょくのように輝く。
 さらに「巨人のキンタマ」「性欲抑制コーンフレーク」「おしっこゆで卵」もまた、どれも一発ネタではない。こうした雑学はあくまで枕。どの章もそれぞれ興味深い議論が展開されており、とにかく飽きさせない工夫がちりばめられている。
 ゆる言語学ラジオにしても『下ネタ大全』にしても、堀元さんの目指す理想は変わらない。この本を読み終わって思い出したことがある。彼は何かにつけて「ふざける」というワードを使うのだ。実際、noteのプロフィールには「知識を使ってふざけることで生活しています」とあるし、ゆる言語学ラジオのコンセプトを固める上でも、かなり初期の段階で「ふざける」というワードを使っていた。正直なところ、僕は初めてこのコンセプトを聞いたとき、彼にどんな勝算があるのかイマイチわからなかった。しかし今、彼の言わんとしたことはよくわかる。世の中には思いのほか、面白い知識をユーモラスに、明るく語るコンテンツがないのだ。だいたいは知識×非ふざけ(=interestingに全振り)か、非知識×ふざけ(=funnyに全振り)のコンテンツだ。彼は4年前にその構造を看破し、ぽっかり空いていたポジションを占めた。
 その意味で、この本は作家・堀元見のひとつの完成形と言えるだろう。下ネタほど、彼のポテンシャルを引き出せる題材はないからだ。冒頭で「才能の無駄遣い」と述べたが、むしろ逆で、これほど彼の才能を引き出す素材はないと、いちファンとして思う。
 同書の中で、VRを例にして「テクノロジーが発展するきっかけは性愛だ」と主張する箇所がある。僕はもうひとつ、性愛が人類の発展に貢献した分野を知っている。それが芸術だ。例えば官能小説に、独特のレトリカルな比喩があることをご存じだろうか。『官能小説用語表現辞典』(永田守弘編、ちくま文庫)を開くと、女性器の比喩として「極楽鳥花」「安達ヶ原の黒塚」「かげろうの羽根」が実例とともに挙げられている。こうした大げさな比喩が生まれた背景は、意外にも政治的な圧力だった。戦後間もなく官憲によるエロチェックが復活し、直接的な表現をすると作家や出版社が警察から呼び出されるようになったのだ。そこで官能小説の作家たちは、検閲に引っかからない程度には間接的だが、読者には何を描写しているかわかるような表現をひねり出した。そうした背景が忘れ去られた今もなお、官能小説は独自のレトリックを進化させ続けている。
 下ネタは、使い方によっては不快感を与える。でも人類が性とともに進歩してきたことは紛れもない事実で、『下ネタ大全』はその奥行きを余すところなく活写した、堀元さんにしか書けない本なのだ。この本のタイトルを聞いて、鼻で笑った人もいるかもしれない。でも僕は思う。この本を読んで「グングン頭が良くなった」と思うかどうかは、逆説的だが、その人の教養の深さを反映しているのだと。

(みずの・だいき 編集者)

波 2025年6月号より
単行本刊行時掲載

インタビュー/対談/エッセイ

ゆる言語学ラジオのふたり対談

水野太貴堀元見

YouTube登録者数37万人超の「ゆる言語学ラジオ」。人気のふたりがほぼ同時期に本を出した!

「言語」に興味を持つ人が最近よく聴いている人気のラジオ、「ゆる言語学ラジオ」。ラジオ、とは言ってもYouTubeやPodcastで定期的に配信中の動画/音声で、なんと毎週、すでにその数437本(現在時点)。堀元見が言語学オタクの水野太貴にツッコミを入れながらテンポよく話を聞く。
 コンビのこのふたり、5月に堀元が『読むだけでグングン頭が良くなる下ネタ大全』を、この8月には水野が『会話の0.2秒を言語学する』を共に小社より刊行。
 え、ほぼ同時期にそれぞれ力作を書いたのには、なにか企みが?

30歳になる前に本を出す

水野 やっと出せましたよ、『会話の0.2秒を言語学する』(以下『0.2秒』)。僕は誕生日が8月31日なんですけど、30歳になる前には出したくて、頑張りました。

堀元 発売日が8月27日ですか。ギリギリやないか。

水野 それでもなんとか。なんとか、だけど20代(笑)。書下ろしで、この2年間社交を断って取り組んできました。内容を読んでもらったと思うんですけど、どうでした? 実は、編集者と監修の先生以外では堀元さんが最初の読者で、他の評価をまだ聞いていない段階でのこの対談なんです。僕も編集者だからわかるんですけど(水野は出版社の編集者でもある)、編集者は褒めてくれるけれど、仕事だから信用ならないんですよ(笑)。
 で、読んでどうでした? うわ、でも、それを聞くのめっちゃ怖い。

堀元 そっか、みんなからの評価がまだ来てないのか。この『0.2秒』ね、いい本だよ、めっちゃいい本。

水野 え、「めっちゃ」が付く? 「堀元見推薦」をもらえますか?

堀元 うん。何がすごいかって、引っかかるところがない。引っ掛かりがない、じゃなくて、つまずくところがないって意味ね。普通はこのレベルの難易度の内容だと、「ここ難しくてよくわかんない」って立ち止まるけれど、この本は立ち止まるところが全然なかった。語用論や生成文法の話って言語学の中でも難しいでしょう。難易度の高い、言語学の挫折しがちなところの基本をスムーズに理解させたのはすごい。何言ってるかわかんねえなって箇所がひとつもなかった。

水野 確かに、他にも「ことばとジェスチャー、どっちが先か」がテーマの第四章、「ジェスチャー独立仮説」と「ことばが先仮説」の話とかだって、ややこしいですよね。

堀元 普通のサイエンス本だとあのレベルの内容でつまずくんだけど、それがなかったのよ。なによりも、「例」が多いのがいい。

水野 レイ?

堀元 「例」よ、「例」。我々は、わからないことを知るときに「例」が欲しいんですよ。本を読んでいても先生の話を聞いていても「どんな例がありますか」と聞きますよね。直接先生に実例を聞ける場合は良いのだけど、本を読んでいるときは相手がいない。それがいつも嫌なのよ。抽象的な話が続いて具体的な例が欲しいぞとなるんだけど、「難しくなってきたから例を挙げて説明しましょう」っていう気の利いた本が少なくて。
 例えば確かにややこしい第四章のジェスチャーと言語化の話のあたり、例と抽象の行き来の量がえげつない。ここまでやってくれてありがとうっていうくらい。

水野 え、そんなに? 「swing」と「ひもを使ってビルからビルへ飛び移る」の話を実験の例として挙げたあたりですね。イラストを描いてくださった竹田嘉文さんにも、ここはご苦労をおかけした難所でした。

堀元 実験の紹介という「例」でディテールまでわかって読みやすい。はーなるほど、「swing」っていう語彙があるかないかでこんな違いがあるのだな、って。同じことを表現するのに日本語は説明的になってしまう。その後に抽象的な話がきて、仮説には3つ目の「相互配慮仮説」がありますよ、と話が深まっていく。

水野 抽象的な言語学の話は、わかりにくいから、伝える順番が大事です。

堀元 その例までの距離の近さが、読んでいて、読者と著者の水野さんとでシンクロするんですよ。完全に正しいタイミングで全て必要な場所に例を入れてくれて、これまでにない読書体験でした(堀元による詳しい書評はこちら)。

堀元見

水野は「言語学の例オタク」である

水野 で、褒められている?(笑)

堀元 褒めてる褒めてる。あのね、例抽象例抽象例抽象レイチューショーレイチューショーレイチューショー、この繰り返しでこそ読者には入ってくるんですよ。水野さんは、言語学オタクである以前に「言語学の例オタク」であるのかもしれない。

水野 そうなのか! これまでにも本は出していますが、この難易度で単行本一冊分の文章量を書くのは初めて。年明けくらいに書き上げて、そのあと内容の順番を入れ替えたんですよ。年明け段階では、大まかに現状の章でいうと、「二章 統語論→三章 意味論→一章 語用論」だったんです。二章については、編集者から「わかっていないかも、ごめんなさい」と難度を指摘されたくらい。その構成が現状の順番に固まったのがこの3月でした。伝えたいことの難易度と書き口の難易度をいかに離していくか、これにはかなり配慮しました。それがレイチューショーと堀元さんが呼ぶ実態かも。

堀元 そうだったんだ。結果としては易しく書いてあると思ったけどな。 日銀総裁の発言と円急騰の関係に話が及んだ例では、現実世界の面白さに関連していくから、読者が自分の暮らしにつなげやすくなっているよね。各章の冒頭に例があるのもよかった。

水野 やっぱりレイチューショーなのか。でもそこは確かに意識して書きました。『言語を生みだす本能』のスティーブン・ピンカーの書き方も参考にして。例えば、ってまた例を出していくわけだけど(笑)、

堀元 いいよいいよ(笑)。水野さんの「例」のストック量がすごいことは知ってる。日々気づいたら、メモっているよね。いい意味で下世話なのよ。

水野 それ、堀元さんでしょ。でさ、例えばなんだけど(笑)、まえがきについてはウサイン・ボルトの速さ世界一に、会話のターンテイキング(相手が返事をして話者が交替すること)の速さの奇跡を重ねました。
 第一章についていえば、イギリスで起きた強盗殺人事件の裁判で問題になった「Let him have it, Chris!」の例をいれました。「let him have it」は「(人)をぶちのめす」の意味なのですが、警官が撃たれたときに、ふたりの泥棒仲間のうち、ひとりが相方に叫んだ。素直に読むと「警官を撃て」という殺人教唆になるのですが、「let」を「させてやる」、「him」を「警官」、「it」を「銃」だとすると「銃を警官に渡せ」となる。結果として前者の「ぶちのめせ」だと解釈され、発言したほうは絞首刑、実際に撃ったほうは未成年だったこともあり少年院送りになっただけ、という例なんです。

堀元 面白い例だよね。本全体にあるのはこの例の密度のすばらしさだね。「ゆる言語学ラジオ」のなじんだテンポなんだなとも思う。

水野 大絶賛やん。この後、推薦謝礼とか請求されるのかな(笑)。

堀元 もちろんお金をくれるならウェルカムですよ(笑)。

水野 「ゆる言語学ラジオ」の運営も全部やってくれている堀元さんには頭が上がりません。

水野太貴

チョコの詰まったトッポのような本

堀元 本の中で、未知の言語の発音は別の言語話者からは違う音に聞こえるという例で、日本人が英語で発音区別しにくいRとLも挙げていたね。「選挙(election)」と「勃起(erection)」を日本人が発音するとアメリカ人はびっくりする。

水野 あえて深掘りはしていないんですが、「ゆる言語学ラジオ」で話したから書いておきました(笑)。こういう下ネタに近づくなら、『読むだけでグングン頭が良くなる下ネタ大全』(以下『下ネタ大全』)について話をしたいところですね。

堀元 さっき水野さんを下世話だといいましたけど、「下世話」とは身近なことに興味を持っているという意味なんです。抽象的なことばかり語って目の前の現実を考えなくてもいいと思っている人が多い中で、水野さんも俺もそれは嫌だと思ってる。具体的なことをもっと俺は伝えたい。

水野 確かに堀元さんは、ニュースを見聞きするたびに、「これで関連するあの株が上がらないかな」って話してる気がする。さっきのランチでもそうだった(笑)。

堀元 そんな話してないです(笑)。

水野 『下ネタ大全』は、ニュースをどこか遠い国の話で終わらせずに、なにか身近なところで適応させたいという堀元さんの姿勢がぜんぶ出ている本だと思う。だから下ネタで終わる本ではない。書評ではこう書いたんです。
「幸運なことに、著者の堀元さんは面白い雑学を見極めるセンスと、それを適切に配列し、良質なコンテンツに変える構成能力に長けている」(「波」2025年6月号掲載。新潮社HPの『下ネタ大全』書籍ページで無料で読めます)。
 もう、その通りの意味です。

堀元 ありがとうございます。

水野 高尚に言うと、この世界って、面白いところだと僕は思うんです。でも、多くの人はその面白がり方を知らなくて損をしている。それなら、僕が感じた面白さだけでも伝えておきたい。そんな世界観で、「下ネタだって、料理をしたらこんなに面白くなるよ」と示したのが『下ネタ大全』なんじゃないかって。だから、下ネタでもなんでも、どんなテーマでも堀元さんは書ける。そこに置いてあるガムテープのことだって、堀元さんは調べ抜いてそれなりの読み物を一冊書けると思う。

堀元 確かに書けるな。「紀元前には」って粘着剤の歴史を追うところからはじめられそう。

水野 「その時代のガムテープ」の存在を無理やりにでも言い張るようなレトリックを駆使してね。『下ネタ大全』も同じで、とある具材を料理する堀元流の手法を提示してくれたのだと思う。
 とはいえ、現時点では下ネタこそ、その手法をいかんなく発揮できるテーマではあったってことかなと(笑)。

堀元 書評で触れてくれていたけれど、「女性器が開くオノマトペ『くぱぁ』の原形は紀元前5世紀にあった」って紀元前の話を、そういえば『下ネタ大全』の中で書いている。ちなみに「くぱぁ」はエロ漫画由来でここ30年で広がった、女性器を指で開くときのオノマトペですけどね。

水野 そこから古今東西の文化比較に入って、「女性器を見せつけることは魔除けであり、英雄的であり、誇り高き行為であった」と結んでいく。現代を生きる我々の価値観の偏狭ぶりさえ指摘しているんだからすごい。下ネタの本なのに、その後も続いて最後にはこちらの教養が問われていく。
 だからぜんぜんいやらしくない。って、周りの女性が何人かそう言ってましたよ、全員が編集者だけど(笑)。
『下ネタ大全』を読んで、YOASOBIの「アイドル」とか、Mrs. GREEN APPLEの「ライラック」みたいな本だとも思ったんです。手数が多くて転調もするし、リズムも変わる。飽きさせないようにできていますよね。だから、この本は一気読みするのではなくて、じっくりと読むべき本だなって。

堀元 確かに、エゴサしていると「1部ずつ読んでいます」(全体で「医学」「秘部」「聖水」「房事」「公民」「技術」「交流」の7部構成となっている)とか「トイレに置いています」っていう感想が多かったかも。

水野 トイレ本って、うれしいよね。原稿自体は「小説新潮」で毎月連載で書いていたんですよね。

堀元 そう、だから一話完結で、その密度と面白さの強度をまとめていきました。目指すはチョコの詰まった「トッポ」、あのお菓子ね。だから、ミステリー小説なんかだと「一気読みできる!」っていうことが仰々しく帯にあるけれど、この本は「一気読みできない」のが良し。
 でも、「うるさい本だ」っていう感想もあって、「本って無音だけどな」と思ったこともあったな。

水野 それ、要らない(笑)。

堀元 ボケをしっかり入れてM‒1グランプリ(漫才頂上決戦)にも出られるような造りにしたかったから、結果は出せたってことかな。現代漫才に影響を受けた本なんだな。

水野 そっちか! M‒1ではボケ数を上げたほうが点が高くなる。ハイテンションな単独ライブみたいなもので、結果としては、リサーチ力とレトリックが駆使された堀元スタイルの決定版になっている、っていうことかな。雑学情報が満載なんだけど、ChatGPTには絶対に書けない構成であることは確かです。

堀元 3行だけでも、読んだら笑ってほしいんだよね。でもその路線を追求していくと、ロールモデルは高田純次さんしかいなくなる。

水野 ハラスメントにならないあのギリギリ感、同じくらいの年のおじさんが無防備にまねすると大変なことになる。すごい人だよね。

堀元 俺もさ、だんだん毒を抜いてキャラを変えていって、58歳くらいでやっと高田純次になっていくことがこれからの道なのかもしれない。

水野 たださ、堀元さんの人生は後で考えるとして、『下ネタ大全』に話を戻すと、「官能小説辞典を読んだら、官能小説みたいな声が出た【官能小説の表現】#130」を思い出すんですよ。
 エロ表現について警察が検閲チェックをするようになって、むしろ小説家のほうは、猥褻だと判定されない比喩表現を求めて切磋琢磨、いつしか、結果としてジャンル全体が発展していた、っていう話です。その表現の多様性は、文化の持つ底力を体感させるために有用なのだ、という点で、『下ネタ大全』の構成と同じだと思います。

堀元 検閲、されていないけどね(笑)。

(ほりもと・けん 作家とYouTuberのハイブリッド)
(みずの・だいき 編集者)

【担当編集者が選ぶおすすめ回】
「ゆる言語学ラジオ」は初めて、という方はYouTube公式から、以下のタイトルで検索してみてください。
その1:単語はすごい【リメイク1】#212 まったく初めて見る人はこちらからがお勧め。何気なく使っている単語のすごさがわかります。
その2:赤ちゃんの言語習得が無理ゲーすぎる【赤ちゃんの言語習得】#107 赤ちゃんの言語習得を語った人気シリーズ。言語習得はノーベル賞級の功績だ、という言葉はなるほど。
その3:絵で物事を考える「視覚思考者」にはどんな世界が見えるのか?【ビジュアルシンカー1】#322 感想がいまだ多い回なのだとか。違う世界が見えてきます。

【ゆる言語学ラジオはどんなふう?】
「ゆるく楽しく言語の話をするラジオ」としてはじまって5年目、ふたりがコンビで重ねてきた動画本数は437本。他にもチャンネルは増えていき、いまや9つに及ぶとか。どんなジャンルでも、「springはなぜ春もバネも意味するの?」といった身近な疑問からスタートするのが常だ。
 2023年6月には、池袋に「ゆる学徒カフェ」を開業。土日ともなると満席で、早押しクイズイベントや原稿執筆会など、行けばその日に行われている収録を垣間見ながら楽しめる、リアルな場所となっている。

波 2025年9月号より
単行本刊行時掲載

『読むだけでグングン頭が良くなる下ネタ大全』 ゾクゾク重版記念知的下ネタ投稿キャンペーン 結果発表!!

Xでの投稿キャンペーンにご応募いただいたみなさま、ありがとうございました! 期間中、予想を超える数の知的下ネタが毎日投稿され、審査にお時間を頂きましたが、この度、各賞が決定いたしました。
応募投稿に目を通した堀元見さんが受賞対象となる全ポストを選びましたので、以下発表致します。

当選者

A賞 オリジナルかけ替えカバー 20名

イラストレーター・畠山モグ氏による描き下ろしイラスト(ウィトルウィウス的ホリモトケン図)を使用し、デザインも通常版とは異なるオリジナルカバーです。 裏面にそれぞれ1から20までのシリアルナンバーを入れた限定品になります。

1. 女性の膣オーガズムの履歴は歩き方からわかる
自我(不名誉)さん
https://x.com/Illust_0301_sb/status/1938831321503277103

2. 家畜の排泄物を溜めておくための構造改革特区
九州人🐓 さん
https://x.com/kyuusyuuzinn/status/1938805567868567771

3. 間接キスの始まり
ノサダ さん
https://x.com/nosadaMC/status/1938793959960227910

4. エロ本のテープ留めの影響
ReDie さん
https://x.com/GATACA9/status/1938471028130484621
※「この冬女を踏みにじるべき男の靴」(https://x.com/GATACA9/status/1938471334394401105)と合わせ技で一本

5. 上裸で育った人たちも普通におっぱいに興奮する
津島 結武@公認心理師・性愛学・読書 さん
https://x.com/t_musubu_coffee/status/1938353961553301804

6. 屁の罪をかぶるプロ「屁負比丘尼」
みずの@ゆる言語学ラジオ さん
https://x.com/yuru_mizuno/status/1938889704243662890

7. 「ちんこ虫(ペニスワーム)」と言われる虫と、ペニスっぽいギボシムシは系統が異なるが、収斂進化で「穴に入りやすい」形状になるのだと思われる
Daichi G. Suzuki さん
https://x.com/suz_dg/status/1938914108784681426

8. インポテンツの切手検査はイギリスでは不敬なので禁止
大麦おじさん a.k.a DJDLSITE さん
https://x.com/0mugi_ojisan/status/1938931851248443729

9. 裕福な家の糞尿は栄養価が高いので高く取引された
シャア専用ズゴック🤍💗 さん
https://x.com/madness933/status/1939162333701431780

10. pluckは「(花を)摘む」という意味だが、pluck a roseで「用を足す」という意味もある。
さらに、「(処女を)奪う」という意味もある。

プロクルステスの寝台列車🚂 さん
https://x.com/MatsuoBashou516/status/1939171085850980432

11. 良寛和尚は下痢が酷すぎて下痢の歌を作っている
もこ さん
https://x.com/mu_yu_pan/status/1939272674070741039

12. 現存する最古のコンドームはツタンカーメンの副葬品
タコノマクラ さん
https://x.com/2obNXey9C7YKxBv/status/1940208358033957146
※「うんこのUnicode」(https://x.com/2obNXey9C7YKxBv/status/1940793230750371953)等と合わせ技で一本。

13. おしっこは麻薬
未決定 さん
https://x.com/wakaranai100per/status/1941034319767916564

14. コーラの避妊効果を調べた論文
ゆき さん
https://x.com/NDIcacMuzPv8Xla/status/1941341972817735695

15. 去勢した牛のキンタマを消費するために考案されたレシピがある
ひらば さん
https://x.com/Cabernet1201/status/1941405224431911017

16. アクメ自転車は実在する
サンドライト さん
https://x.com/sandlight3/status/1941674603207852066

17. バイアグラは性的興奮時にのみ作用するので、心臓病の薬と併用すると「興奮すると死ぬデスゲーム」ができる
AkirA さん
https://x.com/akira_nanigashi/status/1942222911525576973

18. 千葉では鯨の睾丸を販売している業者があるが、『珍宝』という名前で売っている。玉なのに。
カサハ。 さん
https://x.com/kasaha321/status/1942959580826485058

19. 「くぱぁ彫刻」がスタバのロゴに受け継がれた
骨しゃぶり さん
https://x.com/honeshabri/status/1943640017819078848

20. 武田信玄が屋敷の水洗便所を「山」と呼んでいたわけ
稲要くしろ▶︎ログアウト→拠点🦋 さん
https://x.com/s_kushiro/status/1944192888566681758

B賞 本書のサイン本 10名
※こちらは通常版のカバーになります

1. アイスランドのペニス博物館
シミズシュン さん
https://x.com/sekainodendou4/status/1938957870344876330

2. ゾウは潜在精巣でも大丈夫
Krebarty さん
https://x.com/Kisaragi4059/status/1938962165962309650

3. クジラやイルカはキンタマを水冷方式で冷やしている
おにぎりの申し子 さん
https://x.com/onigirimoushigo/status/1938960241317798186

4. ドイツ南部のシュヴァーベンで使用されている「Muggaseggele」は直訳すると「ハエのペニス」
しすい さん
https://x.com/shisui_kyo/status/1942404978494300537

5. ハリウッドには義ペニス職人がいる
mogera さん
https://x.com/mogera_gera/status/1942905793772495246

6. 絵踏み(踏み絵)は禁教時代にキリシタンを見分けるものだったが、形骸化してくると遊女の生脚を拝めるちょっとした風物詩になっていた。
あまねき さん
https://x.com/amaneki0178/status/1942568857014812676

7. おちんちんは「息子」の場合と「友達」の場合がある
段ボールの何らか さん
https://x.com/Himade4tama/status/1939491211460694266

8. ナポレオンの陰茎
FROGGER さん
https://x.com/oppih401/status/1938446930935439578

9. 朝勃ちのことを英語で「morning wood」という
zZZ(草履)🍡 さん
https://x.com/DokusyoHonnou/status/1939266564764876808

10. ショウジョウバエを使った研究をしていると処女が必要になる。研究室で普通に「そろそろ処女がほしいな」という。
いきなり寝子ばあば さん
https://x.com/69de74no64/status/1941544047379956164

C賞 本書の参考文献5冊セット 3名

本書の参考文献として使用された本の中からランダムで選ばれた5冊セットです。内容確認のため編集部で使用したため若干の使用感がありますが、新品に近い物です。

1. 19世紀アヘン戦争で中国は「英国の大砲があんなに当たるのは妖術を使っているから」として、婦人用便器を徴発し、筏に浮かべて河に浮かべ、解呪を試みていた。
稲要くしろ▶︎ログアウト→拠点🦋 さん
https://x.com/s_kushiro/status/1944192530704478662

2. 首絞めセックスの古い事例はドン・キホーテの翻訳家。首絞めて殺しちゃったけど事故だと認定された。
ReDie さん
https://x.com/GATACA9/status/1939378754834571541

3. 大カトーはキャベツを食べた人の尿に入浴させれば病気が治るといった。
アキラ さん
https://x.com/akirainblackhat/status/1938790990489493661

賞品の発送について

下ネタ大全公式Xアカウントより当選者の方へ順次DM(ダイレクトメッセージ)を送付させて頂き、発送についてのご案内をさせて頂きます。

注記

なお、当選された投稿に対しての堀元さんのコメントを、何かしらの形で今後発表させて頂く予定です。
たくさんのご応募を頂き、誠にありがとうございました!

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著者プロフィール

堀元見

ホリモト・ケン

1992年生まれ。北海道出身。慶應義塾大学理工学部卒。専攻は情報工学。作家とYouTuberのハイブリッドで、知的ふざけコンテンツを作り散らかしている。YouTubeチャンネル「ゆる言語学ラジオ」で聞き手を務める。著書に『教養悪口本』(光文社)、『言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ言語沼』(バリューブックス)など。

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