
マンガ 赤と青のガウン 第1巻
1,540円(税込)
発売日:2026/03/25
- 書籍
- 電子書籍あり
累計43万部、皇室エッセイ初のマンガ化! 大ヒット留学記×漫画界の名匠、夢のタッグ!!
「命を吹き込むとはこういうことなのかと、ぞくぞくした」(彬子女王)。女性皇族として初めて海外で博士号を取得された彬子女王殿下。一人で街を歩く心地よさと寂しさ、論文に追われた日々、支えてくれた友人たち──英国での苦しくも輝かしき青春を『ブランチライン』の池辺葵が繊細な筆致で描き出す。殿下の特別エッセイも収録。
第1話 烏羽色のはじまり
第2話 桜色の幼少期
第3話 柳色の救世主
第4話 皇宮警察の臙脂色
第5話 紺色の側衛
第6話 枯野色のシオダ
第7話 老竹色の先生
第8話 天色のカフェ
第9話 虹色の未来
第10話 黄丹色の東宮御所
第11話 茄子紺のコレッジ
第12話 鉄紺の夜
特別エッセイ
点と点が線になるキセキ 彬子女王
書誌情報
| 読み仮名 | マンガアカトアオノガウン1 |
|---|---|
| 装幀 | 池辺葵/装画、川名潤/装丁 |
| 雑誌から生まれた本 | 小説新潮から生まれた本 |
| 発行形態 | 書籍、電子書籍 |
| 判型 | A5判 |
| 頁数 | 144ページ |
| ISBN | 978-4-10-356971-8 |
| C-CODE | 0079 |
| ジャンル | コミック |
| 定価 | 1,540円 |
| 電子書籍 価格 | 1,540円 |
| 電子書籍 配信開始日 | 2026/03/25 |
書評
女王さまのコミック
これは私見であるが、皇室に生まれた方は“競う”ということを避けられる。
よってご自分と他人とを較べ、点数を争う受験勉強というものはなさらない。そのために学習院というものが幼稚園から存在しているのだ。しかし彬子女王さまは違っていた。ひたすら学ぶことがお好きで、果敢に学問の扉に向かってチャレンジなさる。こんな方は初めてであろう。
『赤と青のガウン』(PHP文庫)を読んだ時は驚いた。オックスフォードでの日々の学びがあまりにも過酷で、一時期は体調を崩されるのだ。そこまでして、
「自分の学びたいことを極める」
彬子さまの姿は多くの共感を得て、エッセイは大ベストセラーになった。その中にはオックスフォードという世界最高峰の学び舎や、皇族の方に対する好奇心もあったかもしれない。彬子さまはそれについても誠実にお答えになっている。
側衛という幼ない頃から馴じんできた護衛もつかず、彬子さまは一人で生活を始める。ページをめくるとこの一行が、私たちの心をとらえるはずだ。
「生まれて初めて一人で街を歩いたのは日本ではなくオックスフォードだった」
そんなやんごとなき方が、ご自分で料理をつくり、スーツケースをガラガラひいて学会や研究のためにヨーロッパのあちこちに飛ぶ。しかも格安航空券でだ。ロンドンのマーケットでは、しめじを見つけてもあまりの高さに買わずに帰る。そうした普通の生活に読者はびっくりするのであるが、やがてこのエッセイのハイライトともいえる章が訪れる。バッキンガム宮殿で女王陛下にお茶をご馳走になるのだ。
緊張してほとんど記憶があいまいと言いながら、彬子さまの観察眼は鋭い。エレベーターから降りると、沢山のコーギーが迎えてくれる。そしてエリザべス女王のお部屋に行くと、陛下の他に誰もいなくてお茶セットが置かれていただけ。
「はたしてこのお茶を準備するのは誰の役目なのだろう」
読んでいるこちらもドキドキするような展開である。結局は女王陛下自らが淹れてくださるのだが、こうしたエピソードはこれひとつだけ。彬子さまはあちらの上流の方々とは社交なさらない。つき合うのは研究仲間や教授たちだけだ。まさに学徒の暮らしぶりなのだ。ひたすら研究と論文書き。大英博物館の倉庫で調査に明け暮れ、貴重な法隆寺壁画の写しを見つけるという大発見をなさる。
展覧会の手伝いに行ったものの、オープニング直前なのに何も揃っておらず、それこそ「ミッション:インポッシブル」のような働きをする。開会日当日、オープニングの挨拶が始まったその瞬間、最後のキャプションが入り、彬子さまは疲労のあまり立っているのもやっとというくだりは、まさに研究者の苦労と醍醐味であろう。
醍醐味といえば、伊藤若冲のコレクターであるプライス夫妻が当時はご健在で、夫人が日本人ということも、私はこのエッセイで初めて知った。彬子さまはこの二人ととても親しく一緒にディズニーランドにも出かけている……。
などと『赤と青のガウン』の感想をだらだらと書いたが、本当に面白い本である。物書きの一人としてエラそうに言わせていただくと、文章力のうまさと共に自己の描き方がすごい。皇族である自分の立ち位置を充分におわかりになりながら、そこに時々ツッコミを入れる。これまた私見であるが、高貴な方というのはおしなべてユーモアのセンスがおありになる。深い教養と頭脳がなければ出来ない社交術であるが、彬子さまはエッセイにもこれをふんだんにちりばめられた。
さてこの『赤と青のガウン』のコミック化は、かなりむずかしい作業であろう。日本の天皇皇后ご夫妻も、エリザベス女王も登場される。それよりも彬子さまをどう描くかだ。池辺葵さんはこれをうまく解決した。
コミックの中の彬子さまは、とても可愛らしく聡明であるが、どこかオタクっぽい。そう、オタクでなくて、どうしてあんな研究が出来るだろうか。ひたむきでちょっとおっちょこちょいなキャラクターは、彬子さまに相当に近いと思われるのだ。
たぶんこのコミックを読んだ人は、
「彬子さまは気さくで面白そう。お友だちになりたいな」
と思うだろうが、それは間違いだと私は断言しよう。
時々おめにかかってご挨拶するが、たいてい公的なところだ。式典で祝辞をのべられることが多い。先日は京都の某大学でのお茶席であった。お正客の彬子さまは「茶碗拝見」の時に専門家ならではの素晴らしい感想を口にされた。その姿も歩くご様子も、圧倒的な気品に溢れいつも圧倒される。だから私やあなたは、狎れ狎れしく出来ない。せめてこのコミックで繫がりたいものである。
(はやし・まりこ 作家)
波 2026年4月号より
単行本刊行時掲載
インタビュー/対談/エッセイ

彬子女王殿下新潮社ご訪問記
過日、皇族である彬子女王殿下が新潮社をご訪問。メディア各社の取材を受けられながら社内各所をご見学された模様を、担当編集者Iがリポートします!
ご来社
某日。彬子女王殿下(以下、彬子さまとお呼びさせていただきます)が、はじめて新潮社へご訪問されました。『マンガ 赤と青のガウン 第1巻』の原作者として、複数のメディア取材の対応のためにお出ましになられたわけです。
当日は朝の9時40分に新潮社へご到着。これから一日、複数のメディアの取材を受けられるのですが、お出迎えした担当編集者Iに開口一番「Iさん、机の周りはきれいにしてないでしょうね?」と笑いながら念押し。後述しますが、机の上が大惨事になってると評判のマンガ編集のご視察のためでした。ちなみに「天性の晴れ女」をご自称されるだけあってさすがの晴天! でありました。
当日の彬子さまは、ガウンを模したようなジャケットにフレアスカートという出で立ち。胸元を飾るのが赤と青の模様のガラス細工。元々は帯留めだったものをブローチとしてつけられたとのことで、インタビューのお部屋にも赤と青をあしらった花が飾られていました。
「パタパタ」と鮭シラス重
メディア取材は某テレビからスタートしました。インタビューの流れでアナウンサーと共に弊社の“世界一”とも称される校閲部を社内ご視察第1弾でご訪問に。資料である多数の辞書や時刻表の山に強く関心を示され熱心にご質問されたあと、校閲部独特の修正前と修正後の紙を重ね合わせ、パタパタと素早くめくって確認する、あおり校正=通称「パタパタ」をご見学。案内の部長の「おやりになってみますか?」とのお誘いに、彬子さまも「パタパタ」をご経験されることに! 「わたし、こういうの好きなんです」としっかり間違いを発見し、さすが研究者・学者としての本領発揮、と一同感心しきりでした。
つづいて某通信社の取材のあとお食事となるのですが、今回は弊社の社員食堂へご案内させていただきました。NHKの「サラメシ」でも特集された自慢の食堂です。
一日一メニューではありますが、専任の社員がひとつひとつ丁寧に手作り。定番の人気メニューも多数存在し、当日は、社員人気ナンバーワンの「鮭シラス重」なのでした。
食堂では、一般の社員と同じように並んで食券を出し、「大中小」の「小を!」と元気にお願いされる彬子さま。食堂の壁面には、弊社カメラマンが雑誌協会賞を受賞した愛子さまのお写真が飾られていたので、こちらもご覧いただき、少人数の関係者とともに、席に着いていただきました。一口食べて「うわ、卵がふわふわ!」とお気に召されたご様子で、昼食後は自家製コーヒーの味もご堪能。食堂の担当者たちも大喜びでした。
マンガの編集部へ
昼食後、某テレビメディアの取材のあと、社内ご視察の第2弾として、コミック事業本部へお越しいただきました。
マンガは毎日読み、コロナ前には漫画喫茶にも立ち寄られていたという彬子さま。今は、タブレットにマンガをダウンロードし、気に入ったものは紙の単行本を買われるようにしている、とのことで、編集部では「あ、あれも読んでる」「これも読んでる」と弊社発のマンガ作品を多数読んでいらっしゃることが判明。作品名をあげられるたびに、編集部から、おお、おお、と声があがりました。
編集部をぐるりと周られ、前々から聞いていた担当編集Iの机の惨状をご覧になって「あーなるほど」と笑われていた彬子さまでしたが、こちらでも「マンガ編集体験」をしていただきました。「赤と青のガウン」の新しい連載原稿の「写植指定」をしていただくわけです。

緊張してしどろもどろになるIの説明に「んんん? 校閲体験のときより、説明がわかりにくい?」と戸惑われながらも意を汲んでいただいたのか、しっかり「写植指定」を赤ペンで記入されます。当初、数ページのはずだったのが「あと1ページやります」とのめり込まれる彬子さま。さすが、です。
マンガ編集部ご視察のあと、少し時間があったので弊社の資料室もご案内。研究者としてのご興味からか、歴代の資料をご覧になったうえで、その日一番の声が出たのが、大正時代の「文庫」原型のレプリカをご覧いただいたとき。紙の質から印刷まで、活版の再現度に「え? おーー!」と歓声をあげて驚かれていたのが印象的でした。
その後、最後の社の取材が終わると、もう日はとっぷり暮れた時間。彬子さまは、少しお疲れのご様子でしたが、「著者として本は出してきましたが、こうして本作りの数々の現場を体験・視察できて大変嬉しく思いました。それぞれ本作りに関係する皆さんの熱意とお仕事を感じられて本当によかったです」と今日一日のご感想をいただき、一同すっかりますますのファンになったのでした。
波 2026年4月号より
単行本刊行時掲載
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著者プロフィール
彬子女王
アキコジョオウ
1981年、故寛仁親王殿下の第一女子として生まれる。学習院大学在学中及び卒業後に、英国オックスフォード大学マートン・コレッジに留学し、女性皇族として初めて博士号を取得(専攻は日本美術)。京都産業大学日本文化研究所特別教授、一般社団法人心游舎総裁などを務める。著書に『赤と青のガウン オックスフォード留学記』『飼い犬に腹を噛まれる』(PHP研究所)、『京都 ものがたりの道』(毎日新聞出版)、『日本美のこころ イノリノカタチ』(小学館)、『日本文化、寄り道の旅』(扶桑社)などがある。
池辺葵
イケベ・アオイ
2009年デビュー。同年より、『繕い裁つ人』(講談社)の連載を開始(のちに映画化)。2014年、『どぶがわ』(秋田書店)で第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞。この年、『プリンセスメゾン』(小学館)も連載開始。2018年、『ねぇ、ママ』(秋田書店)で第21回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞。ほかの代表作に『かごめかごめ』(秋田書店)、『雑草たちよ 大志を抱け』(祥伝社)などがある。2026年3月現在、「FEEL YOUNG」で『ブランチライン』を連載中、2024年12月より「小説新潮」で、2025年1月よりWEBマンガサイト「くらげバンチ」で『赤と青のガウン』の漫画版連載中。


































