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すこやかに猪突猛進! おなじみのコブシが冴える大人気エッセイ。

アンコ椿は熱血ポンちゃん

山田詠美/著

1,430円(税込)

本の仕様

発売日:2009/03/19

読み仮名 アンコツバキハネッケツポンチャン
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 四六判
頁数 223ページ
ISBN 978-4-10-366812-1
C-CODE 0095
ジャンル エッセー・随筆、文学賞受賞作家、ノンフィクション
定価 1,430円

小耳にはさんだ日本語がどうしても気になる。オリンピック中継の盛り上がりにぜんぜん乗れない……。いろいろ文句もあるけれど、うまい食い物うまい酒、愛する小説とゴキゲンな音楽、大切な人たちに彩られた愛おしい日々。さわやかな毒舌と熟練のコブシ回しで、すべての読者の心に勇気の火を灯す、人気エッセイシリーズ最新刊。

著者プロフィール

山田詠美 ヤマダ・エイミ

1959(昭和34)年、東京生れ。明治大学文学部中退。1985年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。同作品は芥川賞候補にもなり、衝撃的なデビューを飾る。1987年には『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞受賞。さらに、1989(平成元)年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、1991年『トラッシュ』で女流文学賞、1996年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、2005年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞を受賞する。他の著書に『ぼくは勉強ができない』『PAY DAY!!!』『ライ麦畑で熱血ポンちゃん』『無銭優雅』『学問』『タイニーストーリーズ』『ジェントルマン』等多数。現代を代表する人気作家である。

書評

波 2009年4月号より ヒーローの日常と、清らかな一個の魂

栗田有起

ご存じ「熱血ポンちゃん」シリーズの最新刊である。自慢ではないが、私はシリーズ(といっていいのだろうか)の最初の本『熱血ポンちゃんが行く!』から読んでいる。
山田さんのデビュー作「ベッドタイムアイズ」は当時、大きな話題となって、作者である彼女の言動はふだん本を読まないようなひとからの注目も集めていた。十代だった私はそのころ、本ばかり読んでいる子供であったが、日本の現代小説ってピンとくるものが少ないなあなどと生意気にも思っていた。そんな未熟者がはじめて山田さんの著作を読み、日本の文学界にニューヒーローが現れた、と驚嘆した。山田さんはヒロインではなく、ヒーローと呼ぶにふさわしかった。彼女の小説にはヒーローたる強さと清廉さとカリスマ性がそなわっていたのだ。そういう小説を書くひとのエッセイが刊行されたと知って早速読んでみると、これまたびっくり、ずっこけてしまったのを覚えている。期待はずれだったのではない。そうだった、ヒーローはいろんな顔を持っているものなのだと改めて認識したのだった。
山田さんことポンちゃんはエッセイのなかでヒーローならぬ「猛獣」として生を謳歌している。おいしいものを食べ、しこたま酒を飲み、仲間とおばか話で盛り上がり、そして小説を書く。彼女が小説と、小説を書くことについて語るくだりはつねに興味深い。思うがままに振舞っているらしい獣が、小説に向かうときにはそのたけだけしさは鳴りを潜める。ポンちゃんは獣ではなく、もはや人間とさえいえないのかもしれない。そこにあるのは清らかな一個の魂だ。子供のときはわからなかったが、物書きのはしくれとなった今、彼女がひたむきに小説を愛しつづけている事実を、痛いほどに感じられるようになった。
作家の書くものに、たとえエッセイでも、どこまでが創作でどこからがそうでないのか境界をつけるのは困難であるし、無意味だと思う。ポンちゃんはいまやフィクションの主人公といえそうなほどに独自の道を歩いているが、彼女が小説に向き合うときの姿は、繊細なまでに純粋で、胸をつかれるほどに正直である。
あるときポンちゃんは、ゲイの高校生から手紙を受けとる。彼は河野多惠子さんや谷崎潤一郎、三島由紀夫の愛読者だという。彼が自分の身にひきつけて読書している様子を知り、「いいねえ、文学書が、そのまま実用書となっている。これ、これ、私が目指すのは、実学としての文学なんですよ」と感じる。彼女は、文学は終った、などと口にするひとへの腹立たしさをあらわにし、「文学で、わくわくする人は、今だって山ほどいるのだ。そして、私は、そういう人たちのツールになりたい。」という。
また、江藤淳さんの『文学と私・戦後と私』という随筆集のなかで、氏が若くして随筆の本質を言い当てている文章に触れ、「私には、身辺雑記は書けても、随筆の正統は無理だなあ、と感じ入るのは、こういうものを読んだ時だ。」と書いている。彼の書いたあとがきを読み、涙したともある。
「私も、いつか、〈自分の心を慰撫する沈黙の音楽〉を聴くことが出来るようになるのだろうか。自分の心を慰撫するだけの物書きは、星の数ほどいるけれども、沈黙の音楽を聴く人は稀である。」
おそらくポンちゃんはとうに承知だろうが、ゲイの高校生のように、文学でわくわくする人間は、心ゆすぶられる文章の出どころが、小説であろうが随筆であろうが身辺雑記であろうが、かまいはしないはずだ。「沈黙の音楽」を聴く耳を持ちうる可能性のあるものは、自分の耳を快くする響きのありかを知っている。そして優れた文章は、どこに書かれたものであれ、そうした耳を楽しませ、また、審美眼ならぬ審美耳を育てもする。ポンちゃんはヒーローらしく、今日も読者を元気づけ、その耳を鍛えているのだ。

(くりた・ゆき 作家)

目次

天高く毎日はアンコ神楽
お言葉ですが、日々、流浪
すこやかに猪突猛進
早春の満九十六歳
酔わせて酔う、春うらら
卯月のうぐいす嬢たち
そこかしこで五月晴れ
初夏は、良い虫も悪い虫も
ラブリーに変哲なし
サイアクに夏本番
引きこもりの趣味はトンデモ
旅人取りが日々の旅人になり
師も走り自己にイエス!
年末年始に生命力芽吹く
春来たりなば、なれの果て
文筆フローリスト開業
雨上がりに変態的考察
テテシャン求道
思い違いも、ブーンに楽し
しめじの季節のお馬鹿さん
夏。オリンピック置いてけぼり
偽チャーリーズエンジェル、沖縄へ
いみじくも蟄居の秋
お気楽書生に愛のムチ

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