死ぬ瞬間の5つの後悔
1,980円(税込)
発売日:2012/12/18
- 書籍
明日死ぬ――死を覚悟したときに多くの人に共通する「後悔」とは?
数多くの患者を看取った女性介護人が振り返る、老若男女の「最期」の言葉。「もっとお金を儲ければよかった」という人はひとりもいない――それでは、誰もがする後悔とは? 死の床で語られた言葉は、彼女自らの人生にも影響を与えていく。なぜなら、人生はいつだって変えられるのだから。器用に生きられないあなたに贈る一冊。
目次
プロローグ 人生は転換する
日本の読者の皆さんへ
日本の読者の皆さんへ
ヘルパーになるまで
熱帯から雪の中へ/予想外の仕事/運命に身を任せる
後悔一 自分に正直な人生を生きればよかった
期待に応える人生/環境に染まる/とらわれる
後悔二 働きすぎなければよかった
バランス/人生の意義/シンプルさ
後悔三 思い切って自分の気持ちを伝えればよかった
現実を直視できない/罪悪感/本当の好意
後悔四 友人と連絡を取り続ければよかった
孤独/本当の友達/友情の大切さ
後悔五 幸せをあきらめなければよかった
幸せは選べる/いまこの瞬間の幸せ/とらえ方の問題
その後
変化のとき/暗闇と夜明け/後悔しないために
エピローグ 微笑みとともに知る
訳者あとがき
訳者あとがき
書誌情報
読み仮名 | シヌシュンカンノイツツノコウカイ |
---|---|
発行形態 | 書籍 |
判型 | 四六判変型 |
頁数 | 320ページ |
ISBN | 978-4-10-506391-7 |
C-CODE | 0098 |
ジャンル | 社会学、福祉、ノンフィクション、介護 |
定価 | 1,980円 |
書評
波 2013年1月号より 限りある人生をどう生きるか
精神科医として他人と向き合うときの立場にも通じるものがあり、興味深く読みました。著者のブロニー・ウェアさんは、介護をしている患者さんの心を開くのが上手い。ヨガのインストラクターをしていたステラという女性の患者さんに、生きている意味を問われて答えます。「あなたがまだここにいるのは、きっと私のためなんです」と冗談めかして。献身的な姿勢もあるのでしょう。ステラはすっかり打ち解けて、ヨガや瞑想を、亡くなるまで丁寧に著者に教えていきます。
自分が瞑想を習慣としているから言うわけではないですが、「自分の身体と相談する」「自分自身と対話する」ということは、気づかれていないけれどとても大事です。こう言うと哲学的に聞こえるかもしれませんが、素直に「自分の身体をどう動かすか、観察するか」なんです。野球なら、一球一球のボールにどう真摯に反応するか。瞑想とは、自分自身を少し距離を置いて考える目を養うこと、と言えるかもしれません。
ウェアさんも同じです。自分の身体を見つめなおすからこそ、彼女はいつも手を抜かずに目の前のことにしかと対する。介護の患者さんをどう動かすか、どう気持ちよくしてあげるか、それが上手い。終末期の患者との関係を「一対一」と書いていますが、だからこそ自分に還っていくのでしょう。
ただ、彼女は本書の終盤で、バーンアウトします。話の筋をバラしてしまいますが、深い鬱に陥ってしまう。介護に尽くしたがゆえに燃え尽きる。と同時に、介護で得た経験と知恵ゆえに彼女は再生していく。友達の支えもあり、立ち直りも案外とあっけないきっかけからなのですが、その経緯も面白い。この本の読みどころのひとつでしょう。
彼女はいまや作詞や作曲を手がけ、舞台にも立つそうです。彼女のように、瞑想でも自然を眺めることでも手段は何であれ、自分なりに心を整えてすっきりさせておいたら、必ずチャンスはめぐってきます。たとえば、仏教ではうまくそれが伝えられています。般若心経を朝3回唱えることを習慣にしてみてください。1ヶ月もしたら、やりたいことややるべきことが見えてきます。6割の人は確実に変わります。これは別に信仰じゃない。それくらいぼくらの心は煤でくすんでしまっているんです。目の前のことをないがしろにしてしまっている。でも、この本はそうではない。すっきりと感じることを、まずはやってみる。そこから変わっていくんです。
この本が「26カ国で翻訳される」と聞き、驚いたものの、大いに納得しました。世界中で読まれるのはわかる気がしたんです。世界は、グローバル・スタンダードやサイエンスの方向にどんどん専門化し、細分化されている。グローバル化の中で、精神的な生きる意味がないがしろにされ、限りある人生をどう生きるかの位置づけや目的は顧みられなくなってしまいました。人生を部分的に区切ってその全体を考えない。その上世界はますます流動化している。ついて行けない人が多いのは日本だけではないということです。その中でウェアさんは、長年の間に多くの患者の最期の後悔を聞き届けます。それを自分の人生に重ねて、得た知恵を活かしていくこの話は、だからこそ世界共通になるのです。
「身体からすべてに入る」ということも大きな要素でしょう。身体知の奥深さをよくわかっている。これは有史以来初めてのことではないでしょうか。身体知が人生を救うということがこれほど意識されているのは、そうないことです。
5つの後悔(「自分に正直な人生を生きればよかった」「働きすぎなければよかった」「思い切って自分の気持ちを伝えればよかった」「友人と連絡を取り続ければよかった」「幸せをあきらめなければよかった」)は味わい深いですね。だれもお金のことは言わなかったというのもなるほど、と。ぼく自身は「働きすぎなければよかった」がぐさりと刺さりました。「自分に正直な人生を生きればよかった」というのも少しぐさりと。ただ、これも下手に自分を出さない方が周囲も含めて幸せかもしれません(笑)。人それぞれに後悔がある。それは一対一できちんと向き合ったからこそ、出てくる言葉なんです。
自分が瞑想を習慣としているから言うわけではないですが、「自分の身体と相談する」「自分自身と対話する」ということは、気づかれていないけれどとても大事です。こう言うと哲学的に聞こえるかもしれませんが、素直に「自分の身体をどう動かすか、観察するか」なんです。野球なら、一球一球のボールにどう真摯に反応するか。瞑想とは、自分自身を少し距離を置いて考える目を養うこと、と言えるかもしれません。
ウェアさんも同じです。自分の身体を見つめなおすからこそ、彼女はいつも手を抜かずに目の前のことにしかと対する。介護の患者さんをどう動かすか、どう気持ちよくしてあげるか、それが上手い。終末期の患者との関係を「一対一」と書いていますが、だからこそ自分に還っていくのでしょう。
ただ、彼女は本書の終盤で、バーンアウトします。話の筋をバラしてしまいますが、深い鬱に陥ってしまう。介護に尽くしたがゆえに燃え尽きる。と同時に、介護で得た経験と知恵ゆえに彼女は再生していく。友達の支えもあり、立ち直りも案外とあっけないきっかけからなのですが、その経緯も面白い。この本の読みどころのひとつでしょう。
彼女はいまや作詞や作曲を手がけ、舞台にも立つそうです。彼女のように、瞑想でも自然を眺めることでも手段は何であれ、自分なりに心を整えてすっきりさせておいたら、必ずチャンスはめぐってきます。たとえば、仏教ではうまくそれが伝えられています。般若心経を朝3回唱えることを習慣にしてみてください。1ヶ月もしたら、やりたいことややるべきことが見えてきます。6割の人は確実に変わります。これは別に信仰じゃない。それくらいぼくらの心は煤でくすんでしまっているんです。目の前のことをないがしろにしてしまっている。でも、この本はそうではない。すっきりと感じることを、まずはやってみる。そこから変わっていくんです。
この本が「26カ国で翻訳される」と聞き、驚いたものの、大いに納得しました。世界中で読まれるのはわかる気がしたんです。世界は、グローバル・スタンダードやサイエンスの方向にどんどん専門化し、細分化されている。グローバル化の中で、精神的な生きる意味がないがしろにされ、限りある人生をどう生きるかの位置づけや目的は顧みられなくなってしまいました。人生を部分的に区切ってその全体を考えない。その上世界はますます流動化している。ついて行けない人が多いのは日本だけではないということです。その中でウェアさんは、長年の間に多くの患者の最期の後悔を聞き届けます。それを自分の人生に重ねて、得た知恵を活かしていくこの話は、だからこそ世界共通になるのです。
「身体からすべてに入る」ということも大きな要素でしょう。身体知の奥深さをよくわかっている。これは有史以来初めてのことではないでしょうか。身体知が人生を救うということがこれほど意識されているのは、そうないことです。
5つの後悔(「自分に正直な人生を生きればよかった」「働きすぎなければよかった」「思い切って自分の気持ちを伝えればよかった」「友人と連絡を取り続ければよかった」「幸せをあきらめなければよかった」)は味わい深いですね。だれもお金のことは言わなかったというのもなるほど、と。ぼく自身は「働きすぎなければよかった」がぐさりと刺さりました。「自分に正直な人生を生きればよかった」というのも少しぐさりと。ただ、これも下手に自分を出さない方が周囲も含めて幸せかもしれません(笑)。人それぞれに後悔がある。それは一対一できちんと向き合ったからこそ、出てくる言葉なんです。
(なこし・やすふみ 精神科医)
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著者プロフィール
ブロニー・ウェア
Ware,Bronnie
オーストラリア生まれ。緩和ケアの介護を長年つとめ、数多くの患者を看取った。その経験を基にして書いたブログが大きな注目を集め、それをまとめた『死ぬ瞬間の5つの後悔』は26ヶ国語で翻訳され、世界中で読まれている。イギリスGuardian紙に掲載された『死ぬ瞬間の5つの後悔』に関する記事は、日本でも紹介され、大きな話題を呼んだ。作詞作曲家、作詞の講師でもある。
仁木めぐみ
ニキ・メグミ
翻訳家。訳書にテリー・マーフィー『僕は人生を巻き戻す』(文藝春秋)、マーガレット・ヘファーナン『見て見ぬふりをする社会』(河出書房新社)など。
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