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無敵の経営者はなぜ宇宙を目指すのか? インターネット後の覇権を賭けた闘い。

宇宙の覇者 ベゾスvsマスク

クリスチャン・ダベンポート/著 、黒輪篤嗣/訳

2,530円(税込)

本の仕様

発売日:2018/12/18

読み仮名 ウチュウノハシャベゾスヴァーサスマスク
装幀 Getty Images/カバー・写真、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 398ページ
ISBN 978-4-10-507081-6
C-CODE 0030
ジャンル ビジネス人物伝、ビジネス人物伝
定価 2,530円
電子書籍 価格 2,530円
電子書籍 配信開始日 2018/12/21

テクノロジーの力で世界を変革してきた二人の傑物、アマゾンのジェフ・ベゾスとテスラのイーロン・マスク。彼らが人生を賭けた挑戦の舞台に選んだのは、冷戦終結後に目標を見失い停滞する宇宙産業だった。人類最後のフロンティアに挑む二人の熾烈な競争と、彼らの参入で新たな黄金時代を迎える宇宙開発の最先端を描き出す。

著者プロフィール

クリスチャン・ダベンポート Davenport,Christian

2000年よりワシントン・ポスト紙の記者を務め、近年は金融デスクとして宇宙・防衛産業を担当。外傷性脳損傷の退役軍人を扱った作品で放送界のピュリッツァー賞といわれるピーボディ賞を受賞しているほか、所属する取材チームはピュリッツァー賞の最終候補に3度選ばれている。著書に“As You Were: To War and Back with the Black Hawk Battalion of the Virginia National Guard”がある。2018年12月現在は妻と3人の子どもとともにワシントンDCに住む。

黒輪篤嗣 クロワ・アツシ

翻訳家。上智大学文学部哲学科卒。ノンフィクション、ビジネス書の翻訳を幅広く手がける。おもな訳書に『ハイパーインフレの悪夢』、『アリババ』(ともに新潮社)、『レゴはなぜ世界で愛され続けているのか』(日本経済新聞出版社)、『ドーナツ経済学が世界を救う』(河出書房新社)などがある。

書評

二人の「変人」が宇宙と地球のあり方を変える

藤吉雅春

 本書『宇宙の覇者 ベゾスvsマスク』を読み始めてすぐに頭に浮かんだのは、昔、教科書で見た「人類の進化図」だった。猿が二本足で立ち、猿人が原人になり、ホモ・サピエンスになっていく。子供の頃はこう思ったものだ。空腹に耐えられない猿が危険を承知で木を降りて、大地を歩き、移動を始めたのではないか、と。
 しかし、イーロン・マスクとジェフ・ベゾスの二人を軸に描かれるこの本を読むと、空腹が進化に繋がったのではなく、木を降りた猿は「群れることができない者たち」だったのではないかと思えてくる。なぜなら、この本がインターネット登場後の「社会の進化図」を描いているように読めたからだ。
 インターネットについて、イーロン・マスクは「人類に神経系を与えるようなもの」と言い、「人間の本質を根底から変えるもの」と述べている。言うまでもなく、ウェブは「時間」「距離」といった制約から人間を解放し、技術の進歩を加速度的に高速化させている。
 だからこそ、ウェブ事業で巨万の富を得た者たちにとって信じがたい事実が、宇宙計画の現状だった。アポロの月面着陸と国際宇宙ステーションの実現以降、遅々として進化をしていない。ウェブの進化を体現して旧来の産業を破壊した者たちにとって、「驚愕」の遅さである。その原因は、宇宙を国家の独占領域にしているからだと彼らは考えた。民間の参入により低コスト化を実現させ、インターネットのように起業家を爆発的に増やしたい。そんな信念から彼らは21世紀に入ると宇宙事業を開始した。その宇宙を巡る、予想外の泥臭いドラマがこの本の題材である。
 引き合いに出されるのが、「リンドバーグの大西洋横断」だ。この本に書かれていないことを少し補足すると、大西洋横断に成功した者には賞金を出すと言ったのは、ニューヨークのホテル業界だった。移動手段に革命が起きれば、観光産業は規模が大化けする。そして、挑戦に名乗りをあげたリンドバーグは、今でこそ歴史的英雄だが、偉業を達成する前は「大言壮語の頭のおかしな男」と見られていた。世紀を超えて、宇宙事業を始めたこの本の登場人物たちもまた、変人揃いである。ただそれは、群れの中で生きようとする私たちから見ると「変人」だが、「進化」という長い視点で考えると、必要な「変人」ではないかという気にさせられる。
 オンライン決済システムで成功を収め、31歳で純資産1億8000万ドルの億万長者になったマスクは、子供の頃、いじめられっ子だった。マスクと犬猿の仲で、宇宙ロケット企業「ブルーオリジン」を起ち上げたアマゾンのジェフ・ベゾスは「寡黙な秘密主義者」だ。そして、マイクロソフトの共同創業者、ポール・アレンが出資する宇宙船「スペースシップワン」の事業を引き継いだのが、英ヴァージン・グループのリチャード・ブランソンである。彼も落ち着きのない派手好みのクレイジーとして有名だ。
 この本を映画のように面白くしているのが、マスクとベゾスのライバルのドラマである。何度もロケットの爆発事故を起こして失敗を繰り返すマスクは、イソップ童話の「兎と亀」の兎に例えられている。マスクの「スペースX」は、「突き進め。限界を打ち破れ」を合言葉にしており、NASAと契約する大手企業を「一部の企業が独占するな」と訴える。敵は巨大企業群だけではない。ライバルのベゾスをツイッターで口撃し、事故の際には「何者かが狙撃したのではないか」と、背景に陰謀があると疑う。宇宙業界から「きゃんきゃん鳴く小犬」と見られていたマスクだが、失敗しても挑戦を繰り返す姿に多くの人が共感していく。
 ベゾスはマスクと好対照だ。2003年、テキサス州でベゾスを乗せたヘリが墜落する。なぜベゾスはヘリに乗り、辺鄙な土地にやって来たのか? その謎解きから物語は始まる。目立つのを好むマスクとは逆に、密かに宇宙事業を始めていたベゾスは、「ゆっくりはスムーズ、スムーズは速い」という格言を好む。ドラマチックだったのは、ベゾスの生い立ちだ。少年時代に祖父母の牧場で過ごした話は有名だが、その祖父の正体がドラマのなかで明かされていく。寡黙な少年にとって、祖父の存在は大きかっただろう。
 想定外の展開を見せるエピソードとともに、読者を歴史の目撃者にさせてくれる。そして、日本にもこんなドラマがあればいいのにと切に思わせる本である。

(ふじよし・まさはる Forbes JAPAN編集長代理)
波 2019年1月号より
単行本刊行時掲載

目次

序章 「着陸」 Touchdown
|第1部 できるはずがない|
第1章 「ばかな死に方」 A Silly Way to Die
第2章 ギャンブル The Gamble
第3章 「小犬」 Ankle Biter
第4章 「まったく別の場所」 Somewhere Else Entirely
第5章 「スペースシップワン、政治ゼロ」 SpaceShipOne,GovernmentZero
|第2部 できそうにない|
第6章 「ばかになって、やってみよう」 Screw It, Let's Do It
第7章 リスク The Risk
第8章 四つ葉のクローバー A Four-Leaf Clover
第9章 「信頼できる奴か、いかれた奴か」 Dependable or a Little Nuts?
第10章 「フレームダクトで踊るユニコーン」 Unicorns Dancing in the Flame Duct
|第3部 できないはずはない|
第11章 魔法の彫刻庭園 Magic Sculpture Garden
第12章 「宇宙はむずかしい」 Space Is Hard
第13章 「イーグル、着陸完了」 The Eagle Has Landed
第14章 火星 Mars
第15章 「大転換」 The Great Inversion
エピローグ ふたたび、月へ Again,the Moon
謝辞
原注

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