手塚治虫 原画の秘密
2,145円(税込)
発売日:2006/09/22
- 書籍
初公開! 「漫画の神様」の苦闘の歴史は、すべて「原画」に刻まれていた!
切り貼り、描き直し、ボツ……。名作は、一朝一夕に誕生したわけではなかった。悩み、考え、のたうち回った。ホワイトで消し、紙を貼って修正し、リライトにリライトを重ねて、やっと小さなワンカットが生み出されていた。七百作以上、総計十五万枚から選ばれた、門外不出の原画・下描き類がいま語る、手塚漫画の秘密とは?
罪と罰/三つ目がとおる
三つ目がとおる/MW(ムウ)/アポロの歌/
火の鳥・望郷編/燈台鬼/火の鳥・乱世編/原人イシの物語
原色甲蟲図譜/昆虫標本画/ユニコ/お常(新・聊斎志異)/
人間昆虫記/虹のプレリュード/ふしぎなメルモ/
フィルムは生きている/ジャングル大帝/ドライブラー
ブラック・ジャック/ブッダ/火の鳥・乱世編/
鉄腕アトム/ふしぎな少年/アドルフに告ぐ/三つ目がとおる/
リボンの騎士/ぼくの孫悟空/ジャングル大帝
バンパイヤ/ふしぎな少年/どろろ/アドルフに告ぐ
シュマリ/どろろ/アドルフに告ぐ/アトム大使/
W3(ワンダースリー)/スーパー太平記/ジャングル大帝
どろろ/ドライブラー/フースケ風雲録/燈台鬼
作品解説
書誌情報
読み仮名 | テヅカオサムゲンガノヒミツ |
---|---|
シリーズ名 | とんぼの本 |
発行形態 | 書籍 |
判型 | A5判 |
頁数 | 128ページ |
ISBN | 978-4-10-602147-3 |
C-CODE | 0370 |
ジャンル | アート・エンターテインメント、サブカルチャー |
定価 | 2,145円 |
書評
波 2013年6月号より グローバルなひと。
ワダと同じく戦前の関西の豊かな経済的・文化的土壌の中でのびのびと育ち、やがてその爆発的な創造性を開花させた「マンガの神様」の原画を紐解き、その執筆の詳細にフォーカスした『手塚治虫 原画の秘密』から伝わるのは、こちらも鬼気迫る勢いで画用紙に向かい、ひたすら執拗に「描き直し」を続ける「マンガの鬼」とも言うべきアーティストの姿である。過度の肉体的酷使により1989年、齢60にして病に倒れた手塚がもしその後も長く生き続けていれば、国外において現在よりもっともっと高く評価される「世界のテヅカ」になっていたのだろうか? 21世紀に入ってなお旺盛な活躍を続けるワダエミの姿に、そんな妄想もまた掻き立てられてしまう。
『ブラック・ジャック』第1話「医者はどこだ!」原画より
『ブラック・ジャック』第1話「医者はどこだ!」原画より
【初出】「週刊少年チャンピオン」1973年11月19日号
記念すべき、BJ初登場シーン。その目の部分をよく見ると、上から紙を貼って、あとから修正したあとが分る(上)。この部分を裏返して透過光撮影すると、最初に描かれた目が、はっきりと透けて見える(下)。実はBJの目は、当初はもっと大きかったのだ。
担当編集者のひとこと
手塚治虫 原画の秘密
手塚治虫は、よく「雑誌連載は“原作”である」と言っていました。つまり、漫画の雑誌連載はあくまでおおもとの“素材”であって、単行本が完成品だ、というわけです。そのため手塚作品は、単行本化にあたって必ず大幅な修正が加えられました。判型や版元を変えて出しなおす際も同様でした。その結果、同一作品で絵柄やストーリーが違ういくつものヴァージョンが存在することになりました。
本書は、その一端を「原画」で検証するものです。
たとえば名作『ブラック・ジャック』。第1話「医者はどこだ!」で、BJが初めて読者の前に顔を見せる記念すべきシーン。ところが原画でBJの「目」の部分をよく見ると、上から紙を貼って修正されているのが分ります。透過光撮影すると、下が透けて見えました。何とBJの目は、最初はもっと大きかったのです。キャラクターの生命である「目」に、ギリギリまでこだわっていた手塚治虫の姿勢がよく分ります。
また、驚くべきは『ジャングル大帝』です。昭和25~29年に雑誌「漫画少年」に連載後、幾度となく雑誌再録や単行本化がされてきましたが、そのたびにすべて描きなおしているのです。判型が変わる場合はコマを切り貼りしてまで、新しい版型に合うサイズに原画を作り直していました。そして最終確定版となったのはほぼ25年後! ひとつの作品を四半世紀かけて修正しつづけ、完成させていったのです。その姿勢は執念を表していると同時に、自作に対する絶対の愛情と自信を感じさせます。
本書では、手塚プロダクションの全面協力により、門外不出の原画や下描きが大量に登場します。中には、下描きだけで未発表に終わった幻の作品『ドライブラー』や『燈台鬼』も公開されます。
“漫画の神様”は、生涯に約700作品、枚数にして15万枚を描いたと言われています。しかし、それらが、いかなる苦労の末に誕生していたか。原画には、その苦闘の痕跡がすべて残っていたのです。
2016/06/09
著者プロフィール
手塚プロダクション
テヅカプロダクション
●手塚治虫 1928年(昭和3年)11月3日、大阪・豊中で生まれる。1945年、大阪大学付属医学専門部に入学(1951年卒業、1953年医師免許取得、1961年医学博士号取得)。1946年、『マアチャンの日記帳』(少国民新聞)で漫画家デビュー。以後、『ジャングル大帝』『鉄腕アトム』『ブラック・ジャック』『火の鳥』『アドルフに告ぐ』など、幼年向きから大人向きまで、あらゆるジャンルの漫画を描き続け、「漫画の神様」とも称される。生涯に描いた作品数は700以上、約15万枚と言われている。そのほとんどは、『手塚治虫漫画全集』(全400巻、講談社)にまとめられている。1989年2月9日、逝去。行年60。兵庫・宝塚に「宝塚市立手塚治虫記念館」がある。