思わぬ出会いに心ときめく パリの小さな美術館
1,760円(税込)
発売日:2019/01/31
- 書籍
ここには、とっておきのパリ時間があります。
ルーヴルもオルセーも大好き。ポンピドゥも行きました。そんなあなたにお薦めする個性派ミュゼをたっぷり紹介。街中にひっそりたたずむ歴史ある邸宅や元修道院。ちょっと足を延ばして郊外の現代アート系や古城美術館へ。二度目三度目のパリでは、住人たちがこよなく愛する“ふだん着の美術館”で、かけがえのない時間を過ごしてください。
シャペル・サン=ブレーズ=デ=サンプル Chapelle Saint-Blaise-des-Simples
書誌情報
読み仮名 | オモワヌデアイニココロトキメクパリノチイサナビジュツカン |
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シリーズ名 | とんぼの本 |
装幀 | パリ3区のカルナヴァレ美術館にて(撮影・筒口直弘)/カバー表、中村香織/ブックデザイン、nakaban/シンボルマーク |
雑誌から生まれた本 | 芸術新潮から生まれた本 |
発行形態 | 書籍 |
判型 | B5判変型 |
頁数 | 128ページ |
ISBN | 978-4-10-602286-9 |
C-CODE | 0371 |
定価 | 1,760円 |
インタビュー/対談/エッセイ
居心地良い場所へ
ふらんすへ行きたしと思へども/ふらんすはあまりに遠し。こう朔太郎がしたためた時代ははるか昔。今はほぼ半日でパリまでひとっとび。あの展覧会を観にちょっとグラン・パレへ、なんていうのもけっして不可能ではなく、フランスは近くなりました。そして何度でも行きたくなるのがパリという街。旅するたびに、自分だけのパリの楽しみ方を発見しては、次の機会を心待ちにしている「パリ通」たちも多いでしょう。
その「発見」のためのヒントになれば、と願ってお届けするのが本書。最初のパリでルーヴルやオルセーにも行きました、二度目以降の訪問では、一味違うパリを覗いてみたい、というひとに提案したい美術館を集めたものです。
パリには小さなところもあわせると、全部で150ものミュゼが存在するとか。画家の邸宅やアトリエを公開している個人美術館や、個性的なコレクションを楽しめる博物館、郊外の古城美術館など、あまり知られていないけれど、住人たちが気軽に訪れるような「普段着」のミュゼが、パリにはたくさんあります。
美術品はもちろんだけど、空間や景観など、展示以外の楽しみがあるのもいいところ。団体客や観光客が来ない、併設のカフェがいい感じ、ミュージアムグッズが素敵、眺めに感動、インスタ映えする、などなど、思わぬ発見が期待できます。
実際に取材した芸術新潮編集部のIさんに、なかでも「とっておき」を紹介してもらいました。
まずは伝説のリトグラフ工房「イデム・パリ」。ピカソやシャガールが使った石版が今も使われていて、デヴィッド・リンチもよくここで作業しているのだとか。印刷工さんたちの仕事を眺めているだけで時間が過ぎていきます。出来上がったものだけじゃなくて、製作過程が見られるのが何より魅力なのだそうです。
次は、パリを訪れたら必ず行くという「建築文化財博物館」。フランス中の歴史的建造物のレプリカ(とはいえレプリカ自体が百年以上前の製作物)を鑑賞しているうちに、フランスを一周した気分になれるそう。窓からセーヌ河越しに見えるエッフェル塔が美しく、カフェはカジュアルでヘルシー。どっしりした外食続きの胃袋にありがたい存在だそうで、憶えておくと良いですね!
それから「チェルヌスキ美術館*」。昨年は俵屋宗達の「風神雷神」がこの美術館にやって来ました。強烈な個性をもった東洋美術通のチェルヌスキさんが集めたコレクションは、ギメ東洋美術館より粒ぞろいであると秘かに言われているそうです。来日したこともあるチェルヌスキさん、もっと日本人にも知られてほしいですね。隣接するモンソー公園も静かで、ほのかにブルジョワジーな香りのする素敵な場所です。
以上、ぜひ参考にして、居心地の良い場所を探していただければ嬉しいです。美術館データは最新バージョンを掲載したつもりですが、変わることがたびたびあります。ぜひ事前にHPなどをチェックしてから訪問してください。
*2019年4月から数ヵ月間、リニューアルのため閉館。2020年初めに再オープン予定。
著者プロフィール
原田マハ
ハラダ・マハ
1962(昭和37)年、東京都生まれ。作家。関西学院大学文学部日本文学科および早稲田大学第二文学部美術史科卒業。馬里邑美術館、伊藤忠商事を経て、森ビル森美術館設立準備室在籍中の2000(平成12)年、ニューヨーク近代美術館に半年間派遣。その後2005年『カフーを待ちわびて』で日本ラブストーリー大賞を受賞し、翌年デビュー。2012年に発表したアートミステリ『楽園のカンヴァス』は山本周五郎賞、R-40本屋さん大賞、TBS系「王様のブランチ」BOOKアワードなどを受賞、ベストセラーに。2016年『暗幕のゲルニカ』がR-40本屋さん大賞、2017年『リーチ先生』が新田次郎文学賞を受賞。その他の作品に『本日は、お日柄もよく』『ジヴェルニーの食卓』『デトロイト美術館の奇跡』『常設展示室』『風神雷神』『リボルバー』などがある。
川内倫子
カワウチ・リンコ
1972年、滋賀県生れ。写真家。2002年、『うたたね』『花火』(共にリトルモア)で第27回木村伊兵衛写真賞受賞。2009年には第25回ICPインフィニティ・アワード芸術部門を受賞するなど、国際的にも高い評価を受け、国内外で数多くの展覧会を行なう。写真絵本『はじまりのひ』(求龍堂)、『Halo』(HeHe)など作品集多数。
都築響一
ツヅキ・キョウイチ
1956年、東京都生れ。作家、編集者、写真家。上智大学在学中から現代美術などの分野でライター活動を開始。「POPEYE」「BRUTUS」誌などで雑誌編集者として活動。1998年、『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』(筑摩書房)で第23回木村伊兵衛写真賞を受賞。2012年から会員制メールマガジン「ROADSIDERS' weekly」(www.roadsiders.com)を配信中。『TOKYO STYLE』(ちくま文庫)、『ヒップホップの詩人たち』(新潮社)など著書多数。
鹿島茂
カシマ・シゲル
1949年、神奈川県生れ。フランス文学者、評論家、作家。明治大学教授。1991年に『馬車が買いたい!』(白水社)でサントリー学芸賞、2000年『職業別パリ風俗』(白水社)で第51回読売文学賞など受賞歴多数。2017年、書評アーカイブサイトALL REVIEWS(https://allreviews.jp)を開設。近刊に「失われたパリの復元ーバルザックの時代の街を歩くー』(新潮社)など。
隈研吾
クマ・ケンゴ
1954(昭和29)年、横浜生れ。建築家。1979年東京大学大学院建築学科修了。コロンビア大学客員研究員、慶應義塾大学教授を経て、2009(平成21)年より東京大学教授。主な作品は「森舞台/登米町伝統芸能伝承館」「サントリー美術館」「根津美術館」「la kagu」など国内外に多数。『10宅論』『負ける建築』『ひとの住処 1964-2020』など著書多数。