万葉集であるく奈良
1,760円(税込)
発売日:2019/10/30
- 書籍
飛鳥、藤原、平城京――古都をめぐるタイムトラベルへ。
『万葉集』約四千五百首のうち、奈良を詠んだ歌は約九百首。古代ロマン溢れる飛鳥、たった十六年の都・藤原、虚空の宮跡を抱える平城(なら)。三つの古都を軸に、万葉びとが情感豊かに詠った日本のふるさとへ旅をしよう。名峰の香具山(かぐやま)、畝傍山(うねびやま)、耳成山(みみなしやま)に登る紀行「大和三山巡り」や木簡と歌から当時の生活を知るコラムなども充実。
書誌情報
読み仮名 | マンヨウシュウデアルクナラ |
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シリーズ名 | とんぼの本 |
装幀 | 筒口直弘(新潮社写真部)/カバー表撮影、小野リサ/ブックデザイン、nakaban/シンボルマーク |
雑誌から生まれた本 | 芸術新潮から生まれた本 |
発行形態 | 書籍 |
判型 | B5判変型 |
頁数 | 128ページ |
ISBN | 978-4-10-602290-6 |
C-CODE | 0326 |
ジャンル | 古典 |
定価 | 1,760円 |
インタビュー/対談/エッセイ
奈良に恋をする
現代を代表する『万葉集』研究者の上野誠さんは、本書の中で「日本の詩歌の原点は、土地を褒める、その土地に立ったときの感動を歌うというところにあるのです。それは日本という土地への恋そのもの」と語っています。
なるほど『万葉集』には日本各地の地名が登場します。なかでも、奈良の地名が登場する歌は全約四千五百首のうち約九百首におよびます。なぜなら、ちょうど『万葉集』の歌が詠まれた時代、都は大和盆地のなかを転々としており、その都を中心に文字の文化が発達し、日本の歌の文化は育まれていったからです。
本書はそんな“日本の歌のふるさと”奈良を美しい撮り下ろし写真と万葉歌でたどるものです。特に三つの古都――石像や古墳が古代ロマンを伝える飛鳥京、たった十六年の都・藤原京、虚空の宮跡を抱える平城京――を軸に案内します。
たとえば飛鳥川に三輪山。若草山に生駒山に多武峰。千三百年以上昔の人々がその心情を投影した山河は、いまも変わらずそこにあります。華やかなりし都の遺構もあちこちにのこっています。上野さんは、『万葉集』を歌で綴られた写真アルバムのようなものだといいます。万葉歌を口ずさみつつ、古代の人々が歌にスナップした土地を実際に訪れれば、「その土地に立ったときの感動」を追体験できるのではないでしょうか。それは心動かされる光景に出会い、スマホで写真を撮り、SNSで投稿する、そんな現代の私たちの感覚に通ずるものなのかもしれません。
ところで本書の元となった「芸術新潮」2010年の特集は、平城京遷都千三百年を記念して組まれたものです。前述したように、『万葉集』が詠まれた時代、特に710年の平城遷都にいたるまでの間、都は大和盆地のなかを頻繁に移動していました。なぜならば都とは天皇が
さらに上代文学に親しむ詩人の蜂飼耳さんは「春過ぎて 夏来るらし白たへの 衣干したり
奈良文化財研究所の馬場基さんは、平城京などで出土した木簡と万葉歌から、当時の人々の暮らしぶりを楽しく解説してくださいました。恋に仕事に精を出しつつ、ときにボヤキのような歌も詠む。生活実感のこもった歌の数々には思わずクスッとしてしまいます。
是非本書片手に、遥か古代の人々と心かよわす旅へお出かけください。
著者プロフィール
上野誠
ウエノ・マコト
1960年、福岡県生まれ。奈良大学文学部教授。國學院大學大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(文学)。万葉文化論を標榜し、歴史学・民俗学・考古学など周辺領域の研究を応用した『万葉集』の新しい読み方を提案している。著書に『折口信夫 魂の古代学』(第7回角川財団学芸賞受賞)、『万葉文化論』、『日本人にとって聖なるものとは何か』、『万葉集から古代を読みとく』など多数。
蜂飼耳
ハチカイ・ミミ
1974年、神奈川県生まれ。詩人・作家。早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。詩集『いまにもうるおっていく陣地』で第5回中原中也賞を受賞。詩のみならず、小説、エッセイ、絵本、書評などでも活躍する。著書に、詩集『食うものは食われる夜』(第56回芸術選奨新人賞)、『隠す葉』、『現代詩文庫・蜂飼耳詩集』、『顔をあらう水」(第7回鮎川信夫賞)、小説『紅水晶』、『転身』など。
馬場基
ババ・ハジメ
1972年、東京都生まれ。独立行政法人国立文化財機構・奈良文化財研究所都城発掘調査部史料研究室長、京都大学大学院人間・環境学研究科客員准教授。東京大学文学部卒業、同大学院博士課程中退。博士(文学)。専門は日本古代史、木簡学。発掘調査に携わるとともに、古代史の研究・出土文字資料の研究から、日本史全体の研究や東アジア史研究など、幅広いフィールドで活躍している。著書に『平城京に暮らす』、『日本古代木簡論』など。