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あの懐かしい味の野菜を自分でつくる

岩崎政利/著 、関戸勇/著

2,310円(税込)

発売日:2021/01/27

書誌情報

読み仮名 アノナツカシイアジノヤサイヲジブンデツクル
シリーズ名 とんぼの本
装幀 関戸勇/撮影、中村静香/ブックデザイン、nakaban/シンボルマーク
発行形態 書籍
判型 B5判変型
頁数 127ページ
ISBN 978-4-10-602297-5
C-CODE 0361
ジャンル 趣味・実用、ガーデニング
定価 2,310円

家で育てるツボと醍醐味。

茎の根元が赤いホウレンソウ、青くさい濃い味のトマトやキュウリ……子どもの頃食べた“本物”の野菜134品種が登場。おうちで栽培、収穫する楽しみを美しい写真とともにやさしく伝授。畑がなくてもベランダ、窓辺でもOK。料理のコツやおすすめ簡単レシピも紹介。今こそ必携、『つくる、たべる、昔野菜』リニューアル決定版!

目次
あの懐かしい味の“昔野菜”をつくろう
地方野菜の魅力
つくりやすい野菜とは?
家庭菜園では安全が第一!
春から夏の昔野菜
〈香りを楽しむ〉ミツバ/シソ
〈葉や茎を食べる〉葉ゴボウ/イタリアン・ダンデライオン/バイアム/オカノリ/ニラ/夏ネギ/エンサイ/ツルムラサキ/モロヘイヤ/野菜エゴマ
〈豆を食べる〉エンドウ/インゲン/エダマメ
〈実を食べる〉ピーマン/トウガラシ/ナス/トマト/オクラ/スイカ/キュウリ/ウリ/ニガウリ/カボチャ/ズッキーニ
〈イモを食べる〉ジャガイモ/サトイモ/ツクネイモ/サツマイモ
ベランダで昔野菜を育てる!
春から夏の楽しみ方/秋から冬の楽しみ方/ベランダ栽培のツボと醍醐味
秋から冬の昔野菜
〈冬の根菜〉ダイコン/カブ/ニンジン
〈冬の菜っぱ〉松ヶ崎浮菜カブ/水菜・壬生菜/大和真菜/早池峰菜/福立菜/杓子菜/アートグリーン/雲仙こぶ高菜/かつお菜/チンゲンサイ/タアサイ/ハクサイ/リアスからし菜/シュンギク/ホウレンソウ/レタス/キャベツ/ブロッコリー・カリフラワー
〈香りの冬野菜〉冬ネギ/タマネギ
昔野菜のおすすめ料理  調理・黒川陽子
赤いダイコンを使って/赤カブを使って/ニンジンを使って/菜っぱを使って/花蕾を使って/ツクネイモを使って
押さえておきたい 昔野菜づくりの基本
畑づくりのこと/土と肥料のこと/道具の話
ちょっとレベルアップ
自分でタネを採ろう
タネを採る、という魅力/豆と芋のタネ採り/葉もののタネ採り/実もののタネ採り/タネの保存のしかた
昔野菜のタネが買える店
つくる野菜の組み合わせ方
トウモロコシの話など
野菜いろいろ、タネもいろいろ
この本に登場する昔野菜リスト

書評

未来に命をつなぐ野菜づくり

さとうち藍

 未知のウイルス感染には、世界中が足元を揺さぶられた。不安な日々が続くなかで、衣食住の安定こそが暮らしの原点であると、私たちは痛いほど思い知らされた。小さくとも心地よい住空間、身に合った服。そして、食べ物。食については、買わざるを得ないと思いがちだが、じつは食の一部、野菜は自分でもつくることができる。そのよき手引きとなる本が、今回ご紹介する本である。
 タネをまき、育て、収穫し、さらに一部を残して花を咲かせてタネを採る。この循環が非常に大切であり、キーワードは、「タネ」。野菜の一生につき合うことは、同じ大地に生きる他の命との触れ合いを意味し、計り知れない豊かさを実感することになる。植物の成長に接する時間が、人の心をどれほど穏やかにしてくれるか。これは、私自身の体験でもある。この本の野菜作りの指南役は、40年近く自家採種を続けてきた岩崎政利さん。
 本の中で岩崎さんは「私は初めの頃は、野菜の収穫時がいちばん美しいと思っていた。次に野菜の花を見たときにその美しさに驚いた。そして今は、花のあとにタネができて枯れてくる頃がいちばん美しく見える」と語っている。化学肥料や農薬をまったく使わない有機農業。病気にも虫にも強い品種を探す中で、昔ながらの品種に行き着いた。岩崎さんの農業は、安全第一の家庭菜園の延長線上にあるからこそ、読者にとってはわかりやすくて身近だ。
 題名にある「懐かしい味の野菜」とは、1970年代より前によく食べられていた野菜を指す。つまり、通称F 1(エフワン)と呼ばれる一代交配種の野菜が続々登場したのが70年代で、野菜が大きく変わるエポックだった。
 当時は青菜をみても、ホウレンソウ、コマツナだけでなく、地域ごとにいろんな菜っ葉があった。ダイコンだって、同じ。多様性があり、そんな姿もこの本の美しい写真で見ることができる。タネを採りながら育ててきた、固定種や在来種と呼ばれる昔ながらの野菜。世代的に当時を知らない方にも、ぜひこれらのタネを入手して、育ててほしいと願う。味の冒険は、わくわくする。
 そして、めんどうと思わずにぜひタネ採りも実行してほしい。私は何度か岩崎さんの畑を訪れたことがあるのだが、季節の野菜の生育だけでなく、春や秋には花が、さらには熟していくタネも見られ、まるで自由学校のような伸びやかさを感じた。岩崎さんの言葉で心に残っているのは、「タネ採りを続けると、その野菜が自分の土地に合ってくるので、病気にも強くなるし、栽培がだんだん楽になる」というものだった。
 タネについては、じつは国内では厳しい状況にある。農家にとって自由を奪われる法律の改悪が進んでいるからだ。2017年に農業競争力強化支援法制定、2018年に種子法の廃止、そして2020年には種苗法改正。種苗法改正案は、数多くの地方自治体の反対にもかかわらず、審議を尽くさないまま、昨年12月に強行可決となった。
 要は、「タネは誰のもの?」という問題なのである。各都道府県の農業試験場で行われてきた品種改良は、農家に提供され、公的にも保護されてきた。この「育種知見」は各都道府県にゆだねられてきた歴史がある。しかし、新たな法律改正によって多国籍企業が「育種知見」のデータを入手しやすくなった。さらに品種改良後は、企業が知的所有権を主張することになると危惧される。農家がこれまでのように自家増殖ができなくなったり、種苗の入手に多額の費用がかかったりなどの不安。タネと農家をどう守っていくか。「育種知見」をもつ都道府県では、独自の条例をつくるなど、現在その検討が始まっている。
 岩崎さんは、家庭菜園こそタネの守り手になるのではないか、といっている。特に女性はタネについて大きな関心を寄せるそうで、「やはり命を産み出す存在として、その大切さをわかってくれるのだろうか」と語っておられた。
「あの懐かしい味の野菜を自分でつくる」ために、最初のタネはどこで買えばいいのだろうか? その種苗店リストは、本の巻末にある。これも宝だ。F 1のタネが席巻する農業全体から見たら、非常にマイナーな固定種や在来種。が、それを手放さないで生きている種苗関係者は、根性があるというか、ただ者ではない魅力にあふれている。タネ購入でのやりとりも、大切な情報になると思う。最近は、このリスト以外にも、若者たちが始めた固定種のタネ屋さんができており、心強い。
 未来に命をつないでいくタネ。そのタネで野菜をつくりながら、私たちも共に手をとり合い、この大地で健やかに生きていこう。そんなメッセージが、岩崎政利さんの文章と関戸勇さんの写真から強く伝わってくる。

(さとうち・あい ライター・編集者)
波 2021年2月号より

著者プロフィール

岩崎政利

イワサキ・マサトシ

1950年、長崎県雲仙市生まれ。長崎県雲仙市吾妻町で農業に従事。40年ほど前から有機農業に切り替え、野菜の自家採種を始める。2021年1月現在約80種の野菜を生産し、毎年50種以上のタネを採っている。NPO法人・日本有機農業研究会の幹事を務め、種苗部会を担当。雲仙市有機農業推進ネットワーク、雲仙市伝統野菜を守り育む会、スローフード長崎の代表。著書に『岩崎さんちの種子採り家庭菜園』(2004年、家の光協会)、『つくる、たべる、昔野菜』(共著、2007年、新潮社)。

関戸勇

セキド・イサム

1946年、福岡県北九州市生まれ。写真家。日本大学芸術学部写真学科卒。岩波映画製作所を経てフリーに。自然や植物、庭などをテーマに撮影を続ける。著書に『みんなで実験 楽しく科学あそび』全10巻(共著、2006年、偕成社)、『武市の夢の庭』(共著、2007年、小学館)、『写真集 鎌倉の森 台峯』(2009年、岩波書店)、『雲の写真集 もくもく東京湾』(2011年、岩波書店)、『盆栽をそだてる』(共著、2018年、福音館書店・月刊「たくさんのふしぎ」)など。

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