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今月の表紙の筆蹟は、尾崎世界観さん。

波 2021年2月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2021/01/27

発売日 2021/01/27
JANコード 4910068230218
定価 100円(税込)
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【筒井康隆掌篇小説館】
筒井康隆/白蛇姫
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第41回
【尾崎世界観『母影』刊行記念特集】
[インタビュー]尾崎世界観/存在感の濃い極太の偽物でいたい
町田 康/此の世をもうひとつの眼で見るための子供
宮城谷昌光『公孫龍 巻一 青龍篇』
吉川晃司/宮城谷作品に感じるロマン

佐藤 優『新世紀「コロナ後」を生き抜く』
古市憲寿/最強の先達・佐藤優と読む「コロナ」

イアン・マキューアン、村松 潔 訳『恋するアダム』(新潮クレスト・ブックス)
茂木健一郎/奇妙な存在を信頼するための文学の冒険

パトリック・バーカム、倉光星燈 訳『アナグマ国へ』
養老孟司/アナグマを追っていくと

百田尚樹『百田尚樹の新・相対性理論―人生を変える時間論―』
百田尚樹/人生の砂時計を見つめ直す

佐江衆一『野望の屍』
保阪正康/遺作の重み、そして敬意

読売新聞政治部『喧嘩の流儀 菅義偉、知られざる履歴書』
川田晴一/「政治は人。政治は言葉」第一級のコロナ戦記

最果タヒ『夜景座生まれ』
峰 なゆか/こっちを広辞苑に載せてくれ

岩崎政利、関戸 勇『あの懐かしい味の野菜を自分でつくる』
さとうち藍/未来に命をつなぐ野菜づくり

荻堂 顕『擬傷の鳥はつかまらない』
荻堂 顕/嫌いこそものの上手なれ

パトリック・スヴェンソン、大沢章子 訳『ウナギが故郷に帰るとき』
竹内 薫/科学的で、あまりにも哲学的なウナギの本

山本芳久『世界は善に満ちている―トマス・アクィナス哲学講義―』(新潮選書)
國分功一郎/温かい真理

川添 愛『ふだん使いの言語学―「ことばの基礎力」を鍛えるヒント―』(新潮選書)
古田徹也/言葉の“型崩れ”への処方箋
【特別エッセイ】
朝井リョウ/『正欲』執筆日記(1)
【山本幸久『神様には負けられない』刊行記念】
[対談]山本幸久×乙武洋匡/「僕には向かない職業」が教えてくれること

【渡部恒雄『2021年以後の世界秩序―国際情勢を読む20のアングル―』(新潮新書)刊行記念】
[対談]渡部恒雄×藤井彰夫/バイデンで尖閣は守れるか?

石川直樹『地上に星座をつくる』
[対談]石川直樹×柴崎友香/誰かにとって特別なことで、この世界はできている
【短期集中連載】
南陀楼綾繁/新潮文庫の三島由紀夫を全部読む 後編
【私の好きな新潮文庫】
美村里江/文庫はモバイルバッテリー
 山口恵以子『毒母ですが、なにか
 杉浦日向子『一日江戸人
 谷川俊太郎『ひとり暮らし
【今月の新潮文庫】
浅原ナオト『今夜、もし僕が死ななければ』(新潮文庫nex)
浅原ナオト/だって、人は死ぬのだ。
【コラム】
[とんぼの本]
とんぼの本編集室だより

竹内一郎『あなたはなぜ誤解されるのか―「私」を演出する技術―』(新潮新書)
竹内一郎/コロナは社会の誤解を増やしている

三枝昂之・小澤 實/掌のうた
【連載】
ジェーン・スー/マイ・フェア・ダディ! 介護未満の父に娘ができること 第5回
永田和宏/あなたと出会って、それから…… 第14回
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 第14回
内田 樹/カミュ論 第5回
小松 貴/にっぽん怪虫記 第14回
川本三郎/荷風の昭和 第33回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、尾崎世界観さん。

斎藤茂吉の「Munchenミュンヘンにわが居りしときよるふけてほとしらを切りて棄てにき」は〈孤独な異国暮しの男が己れに初老の徴を見つけた〉歌でしょうが、吉行淳之介は「これは老婆のあいかたの陰毛を切ったんだ。当時、売れっ子の若い娼婦が東洋人の留学生なぞ相手にする訳がないよ」(大意)と解釈しました。確か阿川弘之さんの随筆にあった話。
和泉式部「黒髪のみだれもしらず打伏せばまづかきやりし人ぞ恋しき」は、〈乱れているこの髪を昔はかきあげてくれた男がいた〉と追慕する歌――には留まらぬ、と言うのは丸谷才一『新々百人一首』。「女は男ほしさに悶々とするあまり、髪の乱れるのもかまはずに身を伏せる。と、そのとき、かつて激しい性交ののち、ちようどこのやうに身を伏せたとき、乱れ髪をかきやつてくれた男が恋しくなる」、「まつたく同じ二つの動作が、一方は欲情の充足ののちの姿、他方は男恋しさの発作」となり、「最後の『人ぞ恋しき』であざやかに重ね合せられる」。俵万智さんも賛同した刺激的な解釈。
◎そんなことを思い出したのは、『カミーユ』(傑作歌集!)の歌人大森静佳さんの新刊『この世の息 歌人・河野裕子論』に、河野さんの最後の歌「手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が」をめぐる今野寿美さんの新解釈が引用されていたから。これには吃驚しました。
◎あの絶唱、最初のあなた=夫、次のあなた=子供と思ってきましたが、今野さんは、「あなた」と声に出しつつあなたに触れたいのだ、と読む。成程、その方が下句「息が足りない」はより迫ってきますね。大森さんのこの本、深い洞察も河野さんの歌も満載、永田和宏さんの本誌連載を愛読の方はぜひ。
▽次号の刊行は二月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。