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西洋医がすすめる漢方

新見正則/著

1,430円(税込)

発売日:2010/08/25

  • 書籍

胃痛、腰痛、肩こりから、インフルエンザ、認知症にも!

漢方なんて、アテにならないでしょ? 胡散臭いし、「科学的」じゃないし……。いえいえ、臨床の現場では、原因ではなく症状を診て対処する漢方治療は、けっこう効くんです。オックスフォード大学で博士号を取った、元「サイエンス至上主義者」の外科医が、患者と向き合う中で「発見」した漢方の魅力を語り尽くす。

目次
はじめに
第1章 漢方嫌いが漢方好きになるまで
基本は生薬/成分だけを取り出してもダメ/医学生にとって漢方は論外/家族のためには漢方医で/英国オックスフォード大学留学/セカンドオピニオン外来から見えたもの/本当に「今の医学では治らない」のか/自分自身への実験で効果を確信/新型インフルエンザ予防プロジェクト/急性病にも効くもんだ――家族の経験から/お年寄りの未病にも/体に合った漢方薬を/漢方薬が目指すのは中庸/エビデンスを求めすぎるな/成分ではなくバランスが大事/マウスで効能を実験/巧妙な足し算とバランスの産物
第2章 漢方理論を理解する
漢方薬治療と漢方治療/漢方薬はその日に処方してもらえる/虚実の判断は「麻黄」を試金石に/時間軸と陰陽/気・血・水/お腹の診察からヒントが/男にも効く更年期障害の漢方薬/「何か困ることはありますか?」
第3章 漢方との接し方
漢方外来がない病院は三流だ/明治政府に迫害された漢方/行政刷新会議の漢方保険外し/正しい答えは患者が教えてくれる/漢方薬はどこで買うのか?/漢方薬の飲み方/西洋薬剤と並行して飲んでも大丈夫/妊娠中でも飲める/いつ飲むの?/漢方信者と極端な漢方医/養生が何より大切/役割分担を明確に/本当の漢方治療とは
第4章 症例別の治療法
肥満への対処法/便秘/生理痛、更年期障害/冷え症/下痢/花粉症/認知症/「大病後のコロリ」前に/子供の常備薬/皮膚科で治らない湿疹/子供のアトピー/母子同服/下半身の衰え/悪夢/不妊症/膀胱炎/疲労感/風邪、インフルエンザ/喘息と咳/動悸、めまい/糖尿病の症状/癌の緩和/頭痛、体の痛み/こむら返り、胃痛/腰痛、下肢痛/膝の痛み/イボ痔/下肢静脈瘤/漢方薬の塗り薬/二日酔い/口内炎/不眠症/ストレス/海外出張に持っていく漢方薬
第5章 頻用漢方薬
補中益気湯/六君子湯・四君子湯/人参湯/半夏白朮天麻湯/加味帰脾湯/大防風湯/十全大補湯/八味地黄丸・牛車腎気丸/桂枝茯苓丸/当帰芍薬散/加味逍遙散/桃核承気湯/苓桂朮甘湯/桂枝湯/桂枝加竜骨牡蛎湯/半夏厚朴湯/香蘇散/五苓散/真武湯/白虎加人参湯/葛根湯/麻黄湯/麻黄附子細辛湯/越婢加朮湯/小青竜湯/麻杏甘石湯/大柴胡湯/柴胡加竜骨牡蛎湯/小柴胡湯/柴胡桂枝湯/柴胡桂枝乾姜湯/半夏瀉心湯/黄連解毒湯/安中散/桂枝加朮附湯/呉茱萸湯/当帰四逆加呉茱萸生姜湯/疎経活血湯/防已黄耆湯/猪苓湯・猪苓湯合四物湯/釣藤散/抑肝散/芍薬甘草湯/大建中湯/柴苓湯/麻子仁丸/桂枝加芍薬湯/小建中湯/麦門冬湯/桔梗湯/五積散/大承気湯/十味敗毒湯/温清飲/消風散/茵チン蒿湯
第6章 生薬解説
麻黄/柴胡/黄ゴン/桂皮・桂枝/厚朴/紫蘇葉/人参/黄耆/当帰/芍薬/川キュウ/桃仁/牡丹皮/茯苓/蒼朮・白朮/沢瀉/甘草/地黄/附子/生姜・乾姜/蜀椒/細辛/石膏/大黄/黄柏/黄連/山梔子/五味子/大棗/知母/釣藤鈎/半夏/防已/麦門冬/葛根/陳皮/麻子仁/ヨク苡仁/杏仁/桔梗/呉茱萸/車前子/薄荷/猪苓/茵チン蒿/膠飴/芒硝/蝉退/竜骨/牡蛎
おわりに
参考文献

書誌情報

読み仮名 セイヨウイガススメルカンポウ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-603665-1
C-CODE 0347
ジャンル 家庭医学・健康
定価 1,430円

書評

波 2010年9月号より 西洋医学は直球、漢方は変化球

草野仁

私たち日本人の多くは体調を崩したりしたときは病院に行き医師の診察を受け、薬を処方してもらって治そうとするのが常だと思います。そのほとんどのケースにおいて元気を取り戻すことができ、医師の存在をありがたいと感じ、基本的に西洋医学に強い信頼を置いています。かく言う私自身もそのような日本人の一人でした。
ところが昔、酷い腰痛を起こして複数の外科医を回って治療をお願いしたところ、誰一人として全く対処できず、しばらくの間市販の痛み止め薬を服用するしかなかったことがあります。その辛いとき、知人がプロ野球チームやバレーボール全日本チームのトレーナーだった方を紹介してくれました。その先生は、私をベッドに寝かせて体の様子を見ただけで「あぁ、これは簡単。第4第5腰椎間の軽度のヘルニアです。すぐ治ります」と言い、痛む患部には全く触れることもなく40分ほどの治療を施し、元の完璧な状態に戻してくれました。西洋医学にも意外に非力な分野があるものだなと感じたものでした。そして、西洋医学と漢方などの東洋医学が上手く融合することで、患者に対してより効果的な治療ができるようになるのではと漠然と思ったりしたものです。 
本書は、テレビ東京の番組「主治医が見つかる診療所」で一緒に仕事をさせて頂いている新見正則先生による新著です。新見先生は、オックスフォード大学で博士号を取得した、西洋医学の最高レベルのエリートコースを歩いてきた人ですから、元々、漢方に目を向けたことなどなかったそうです。しかし、帰国してセカンドオピニオン外来を開設したときに、訪れる患者の90%以上が正しい西洋医学的治療を受けていながらその治療に満足していないという厳然たる事実に直面して、西洋医学にも限界があると知らされたのだと言います。何か新しい引き出しが絶対に必要だと感じて漢方に目を向けたということでした。
そして素晴らしい漢方の先生との出会いもあって、新見先生の研究は漢方専門医にも負けないくらい漢方の真理深奥を目指して進んで行きました。自分や家族の体調管理にも積極的に漢方を使い、漢方の効果を語るときには常にデータをもって実証的に示すという姿勢を貫いていらっしゃいます。それ故、さまざまなケースでなぜ漢方が力を発揮するのかという新見先生の解説が強い説得力を持つのだと感じました。
先生が言われるように、西洋医学は直球、漢方は変化球。医師もこの二つを上手に組み合わせて患者さんへの治療を施していけば、現代医学で考えられる最高の手当てが可能になるのだと思います。自分の患者に対してはいつも自分の家族の一員と思って対応するという新見先生の手当ては、患者が最も望んでいる医術なのだと、読み終えて爽やかな気分になりました。

(くさの・ひとし TVキャスター)

担当編集者のひとこと

西洋医がすすめる漢方

現役の外科医が書きました。 著者は現在も手術を手掛ける現役の外科医です。本職は末梢血管外科。元々は、英オックスフォード大学で移植免疫学の博士号を取得した「サイエンス至上主義者」でした。そんな西洋医が、なぜ漢方なのでしょうか?
 実は、著者は日本で初めて保険診療によるセカンドオピニオン外来を始めた「セカンドオピニオンのパイオニア」でもあります。セカンドオピニオン外来を手掛けている時に、病気は治っているのに不調を訴える患者たちの声を多く聞き、原因の究明ではなく症状の緩和を図る漢方を、おそるおそる試してみた。すると、臨床の現場では、結構効く。それで、漢方に「はまった」そうです。
 著者の基本的なスタンスは、まず西洋医学で治せるものは治す。それでもダメなら漢方を試してみよう、というものです。西洋医学の考え方は「原因を究明し、その原因にピンポイントで手術ないしは投薬」というものなので、「病気は治ったのに身体は不調になる」例がどうしても出てきてしまう。それに対し漢方は、身体全体を診て、「生薬の調合とバランスによって身体全体を中庸にもっていく」という思想に則っているので、複数の病気を同時に治したり、病気以前の「未病」の状態でも体調を改善したりすることが出来ます。つまり、「西洋医学とは全く異なる発想だから有効」なのです。
 本書の記述は、自身や家族への漢方投与、豊富な臨床経験に裏打ちされており、説得力があります。身体の不調を感じたら、市販薬を飲む前に本書をどうぞ。

2016/04/27

著者プロフィール

新見正則

ニイミ・マサノリ

1959年京都府生まれ。1985年、慶應義塾大学医学部卒業後、英国オックスフォード大学で移植免疫学を学ぶ。専門は血管外科・消化器外科。セカンドオピニオンのパイオニアでもある。また漢方医としても研鑽を積む。認知症の母の介護経験もあり、帝京大学附属病院、愛誠病院で患者を診療している。2013年、イグノーベル賞医学賞を受賞。著書に、『西洋医がすすめる漢方』『仕事に効く! モダン・カンポウ』『患者必読 医者の僕がやっとわかったこと』『イグノーベル的バランス思考 極・健康力』など多数。

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