世界史を創ったビジネスモデル
1,870円(税込)
発売日:2017/05/26
- 書籍
- 電子書籍あり
「世界史」に、ビジネスの新しい活路を見いだせ!
歴史上の国家を“企業”、その活動を“ビジネス”として理解すれば、新たな視点が得られる。ローマ帝国の盛衰、大航海時代の競争、さらに現代のAT&T、グーグル、人工知能についても。人類が経験してきた「成功」と「失敗」から導き出される「歴史法則」とは? 日本社会の停滞を打破する「フロンティア」がここにある。
2.ビジネスモデルの2つの基本概念
2.カエサルの錬金術
3.カエサルと角栄はどこが違うか?
4.カエサルはなぜルビコンを渡れたか?
5.カエサル暗殺、3つの驚き
2.なぜオクタビアヌスは勝ち抜いたのか?
3.ローマの指導者となる条件とは
4.戦争のないローマはありうるか?
2.「ドイツ帝国論」は現代版の帝国搾取観
3.ローマ帝国ビジネスモデルの基本
4.アメリカは意識的に古代ローマを模倣した
5.現代の企業が事業体としてのローマを継ぐ
2.奴隷制度はどのように運営されたか?
3.解放奴隷というユニークな仕組み
2.不寛容のコストは恐ろしく高い
3.寛容政策の歴史に学べないのはなぜか?
4.ローマ帝国の基本原理は、異質性の尊重
2.ローマ帝国における税負担は本当に軽かったか?
3.数百年先を見据えた税改革
2.アウグストゥスは文化を作り上げた
3.平和国家に新しい役割を見出したアグリッパ
4.ローマはなぜ壮大な植民都市を建設したのか
2.平和国家になりきれなかったローマ
3.ローマは戦争国家であり続けた?
4.フロンティア拡大の停止は衰退の原因か?
5.外敵の侵入に辛くも持ちこたえたローマ
6.史上空前の大国家が瓦解
7.不寛容と軍がローマを崩壊させた
8.偉大な皇帝が統制でローマを滅ぼす
2.EUとローマ帝国はどこが違うのか?
3.江戸幕藩体制とローマ帝国の共通点
4.形式上の中央集権と実態上の蛸壺社会
5.異質を受け入れる勇気が国を強くする
2.ポルトガルは新しい可能性には背を向けた
3.イタリア海洋都市国家の軍産複合体ビジネス
4.十字軍を手玉にとったヴェネツィア
2.エリザベス対スペイン無敵艦隊
3.「自由な海洋国家」というビジネスモデル
4.分業と交換こそが海洋国家の基礎
5.現代の海洋国家アメリカ
2.外に開いた部分が国内中枢と繋がるか
3.和辻哲郎の鎖国観をいま顧みる
4.産業革命以前のビジネスモデルへの回帰が必要だ
2.AT&T帝国を築いた男
2.ビジネスモデルで大失敗したIBM
3.お菓子屋の社長、巨象IBMを踊らす
4.マイクロソフトの巧みなビジネスモデル
2.iPhoneを支える化け物企業
3.社員90名でテレビ販売全米1
4.サーファーが作った新しい映像世界
5.垂直統合方式の大失敗
2.ヴェルサイユ宮殿を借り切って大宴会
3.成長目覚ましい中国のグローバル企業
4.時価総額でトヨタを超えたアリババ
2.発明や情報から収入を得る方法
3.所有地に金が発見されたら、あなたはどうする?
4.売れない大発明をどう収益化?
5.人類史上最高の成功広告モデル
6.グーグルの革命的広告モデル
7.誰もが広告媒体になれる時代
2.ITとビッグデータはどんな世界を創るか?
3.フロンティアは拡大し続けるか?
2.歴史法則はいかなる意味を持つか
書誌情報
読み仮名 | セカイシヲツクッタビジネスモデル |
---|---|
シリーズ名 | 新潮選書 |
装幀 | 駒井哲郎/シンボルマーク、新潮社装幀室/装幀 |
雑誌から生まれた本 | 週刊新潮から生まれた本 |
発行形態 | 書籍、電子書籍 |
判型 | 四六判変型 |
頁数 | 456ページ |
ISBN | 978-4-10-603804-4 |
C-CODE | 0333 |
ジャンル | オペレーションズ |
定価 | 1,870円 |
電子書籍 価格 | 1,496円 |
電子書籍 配信開始日 | 2017/11/10 |
インタビュー/対談/エッセイ
新たなビジネスモデルの地平を求めて
――今回の作品は『週刊新潮』で2年にわたり連載された「世界史を創ったビジネスモデル」の書籍化です。ご執筆を始められるにあたって目指されたものは何だったのでしょうか?
この作品では、ビジネスモデルの新しい探索方法を提案しようと試みました。
通常、ビジネスモデルの探索にあたっては、ケースメソッドといって、企業の具体的事業の成功や失敗事例を分析し、そこから新たなビジネスモデルを確立するという方法が用いられます。しかし、対象となるのは最近の事例が中心ですから、どうしても結論が同じようなものになってしまう。そこで、これをもっと拡張できないかと考えたのです。つまり、「時間の拡大」と「対象の拡大」です。
時間というのは言うまでもなく歴史であり、古い事例にまでさかのぼってみるということです。また対象について言えば、企業に限定せず、国の活動にまで視点を広げることです。こうした立場から歴史上の国家を“企業”、その活動を“ビジネス”として見ようというのが、本書が提唱するアプローチです。
――国を企業として捉えるというのは斬新な試みですね。
考えてみれば、国も、企業と同じく組織です。リーダーがいて、それに従う人々がいる。費用を徴収し、どのような事業を行うか、収益をいかなる形で実現させるか――ですから、そのまま企業に置き換えることができるのです。実際、ある時代まで、国と企業の区分ははっきりしていませんでした。
――作品には国のリーダーだけではなく企業経営者も登場します。ビジネスモデルというと、松下幸之助や本田宗一郎、カーネギーといった名前が浮かんで来ますが、彼らはほとんど登場しません。理由があるのでしょうか?
たしかに、ビジネスモデルというと、彼らが起こした事業に言及されることが多いですね。しかし、彼らの行ったことが現在でも求められているものかというと、そんなことはありません。今、必要とされるのは、むしろ、そこからの脱却です。
なぜなら彼らのビジネスモデルは産業革命以降の時代において、製造業が大規模化してゆく中で求められたものです。情報化が進展しつつある現代において求められるものとは、異質なものなのです。
――一方で冒頭から大部分を割いて「ローマ帝国」について考察されています。
何より、ローマ時代の歴史は面白いということがあります。ただ、それだけではありません。ローマ帝国は東ローマ帝国まで含めれば実に1500年近く続いた国家ですし、その最大版図はブリテン島から中近東にまで及んでいます。このような国家は歴史の中でも例がなく、人類史上最も成功したビジネスモデルと言えるでしょう。
また本書ではローマに続いて大航海時代の海洋国家についても論じていますが、これらの国家においては、市場経済、多様性、分権性が重要な役割を果たしています。製造業の拡大を目指した社会では重視されなかったビジネスモデルです。しかし、今日の情報化社会では、こうした過去の国家のビジネスモデルを考え直すことが重要になっているのです。
――そこで作品中盤のキーワードが「海洋国家」になってきます。日本は「海洋国家」ではないと明確に指摘されますが、日本こそ、その代表のようにも思えます。
日本は四方を海に囲まれているために「海洋国家」と思われがちです。しかし、そうではありません。日本は「海洋国家」ではなく、「島国」なのです。「海洋国家」と「島国」は両極端のビジネスモデルとして理解しなければなりません。
海に向かって新しい可能性を求めて拡大してゆくのが「海洋国家」であるのに対して、「島国」は海に守られて島に閉じこもり、外との交流を断つモデルです。日本は歴史の一時期を除けば基本的に「島国」だったのです。「海洋国家」のモデルとして、大航海時代のポルトガルやオランダ、イギリスが挙げられますが、同じく海に面した国でありながら、日本とは何が違うのかを、本書は明らかにしようとしています。
――この作品では、歴史上の国家だけでなく、グーグルやアップル、GoProやビジオといった、新たな世界企業についても考察されています。インターネットが普及しはじめて約20年。私たちの生活、考え方も変わったように思います。ビジネスモデルも大きく変わったのですね。
インターネットの登場は従来のビジネスモデルを一変させました。理由は2つあります。第一は従来のモノやサービスとは異なる性質を持つ「情報」が経済活動の中で非常に重要な意味を持つようになったことです。第2は「情報」を事業のなかにいかに取り込み、収益化するかが、重要な課題になったことです。「情報」という特殊な性質を持つものを売るというのは、非常に厄介なことですが、そのヒントが歴史の中に埋もれているのです。
(のぐち・ゆきお 一橋大学名誉教授)
波 2017年6月号より
イベント/書店情報
著者プロフィール
野口悠紀雄
ノグチ・ユキオ
一橋大学名誉教授。1940年東京生まれ。1963年東京大学工学部卒業、1964年大蔵省入省、1972年イェール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学ファイナンス研究科教授などを歴任。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書『情報の経済理論』(東洋経済新報社、日経・経済図書文化賞)、『財政危機の構造』(東洋経済新報社、サントリー学芸賞)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社、吉野作造賞)、『「超」整理法』(中公新書)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞出版社、大川出版賞)、『戦後経済史』(日経ビジネス人文庫)など多数。近著に『リープフロッグ』(文春新書)、『「超」英語独学法』(NHK出版新書)、『「超」メモ革命』(中公新書ラクレ)、『良いデジタル化悪いデジタル化』(日本経済新聞出版)、『人生を変える「超」独学勉強法』(プレジデントムック)、『データエコノミー入門』(PHP新書)など。