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国家・企業・通貨―グローバリズムの不都合な未来―

岩村充/著

1,540円(税込)

発売日:2020/02/19

書誌情報

読み仮名 コッカキギョウツウカグローバリズムノフツゴウナミライ
シリーズ名 新潮選書
装幀 駒井哲郎/シンボルマーク、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 318ページ
ISBN 978-4-10-603852-5
C-CODE 0333
ジャンル 経済学・経済事情
定価 1,540円
電子書籍 価格 1,540円
電子書籍 配信開始日 2020/02/19

中間層が喰われる! 世界で進む「戦慄のシナリオ」とは――。

19世紀に誕生した国民国家・株式会社・中央銀行の3点セット。しかし、資本移動を伴うグローバリズムと、AIやブロックチェーンなどのテクノロジーが、3者のバランスを突き崩し、中間層を蝕み始めた。超低金利、株主優遇、財政赤字、タックスヘイブン、GAFA、リブラ、MMT……悪循環に陥った資本主義を再生する道を探る。

目次
はじめに
第一章 それらは一九世紀に出そろった
一 近代へのプロローグ
東と西が出会ったころ/豊かさの萌芽
二 国民国家の形成
一七世紀の全般的危機/国家への関心と無関心/国民国家の時代へ/日本という国について
三 株式会社の起こり
有限責任という発明/株式会社法までの長い道のり/日本における株式会社黎明期
四 中央銀行の始まり
詐欺師とされた経済学者/イングランド銀行の物語/明治日本の悪戦苦闘
パネル1:鄭和の艦隊/パネル2:羊が人間を喰い殺す/パネル3:凍り付いたテームズ川/パネル4:ケベック州のナンバープレート/パネル5:フランス革命における2人のヒロイン/6:朝日か西日か/パネル7:特許会社たちのその後/パネル8:ニューヨークセントラル鉄道/パネル9:明治の株式ブーム/パネル10:米国に売却されたルイジアナ/パネル11:ピール銀行条例の裏話
第二章 グローバリズムと分岐した世界
一 分岐した世界
なぜ世界は分岐したのか/一九世紀から第一次大戦後の世界まで/大不況と二度目の大戦
二 グローバリズムの波の中で
ブレトンウッズの世界/資本移動の自由がもたらしたもの/デジタライゼーションとグローバリズムの相乗/罠に嵌る中央銀行たち/もう一つの分岐の予感
パネル12:バージニアのタバコとカリブ海の砂糖/パネル13:南満州鉄道/パネル14:スペイン内戦/パネル15:アルゼンチンの物語/パネル16:英語の罠あるいはフィリピンというクイズ/パネル17:ノーモア映画どろぼう/パネル18:科学は終わるのだろうか
第三章 競争の海に落ちる国家たち
一 底辺への競争
法人税引き下げ競争の連鎖/消費税という見えにくい労働課税/フラット化する個人所得税/のしかかる重荷とすり抜けるテクニック
二 国家はどこに行くのか
フィクションが作り出した現実/リバタリアニズムの浸透が意味するもの/福祉国家の実像/夜警国家の逆襲/国家とグローバル企業たち
パネル19:タックスヘイブン/パネル20:金融サービスと付加価値税そしてシャウプ勧告/パネル21:富者たちの逃亡/パネル22:企業エリートたちと国家との切り離せない関係/パネル23:誰がアトラスなのだろう/パネル24:星条旗への誓い/パネル25:体制維持コストとしての御救と施行/パネル26:夜間飛行
第四章 人々の心に入り込む企業たち
一 関心という新たなフロンティア
なぜ彼らは巨大化するのか/時間の希少性と関心の欠乏/国家のようになる企業たち
二 優しいビッグブラザーの誘惑
彼らは貴方を知ってしまう/プライバシーとは何か、何だったのか/空洞化する自己情報コントロール権
三 企業はどこに行くのか
閉じこもる私たちとはね返るエコー/ICOとSTO/新しい企業デザインは可能か
パネル27:独占禁止法と産業資本家たちの物語/パネル28:江戸の瓦版売りと情報のお値段/パネル29:一国二制度の行方/パネル30:貴方はどこまで知られてしまうか/パネル31:『宴のあと』事件/パネル32:顔認証と体内埋め込みチップ/パネル33:増幅するエコーと気候行動サミット/パネル34:ICOは詐欺か
第五章 漂流する通貨たち
一 r>gという不都合な現実
ピケティが発見したこと/格差の演出者/次なるブラックスワンという予感
二 MMTの風景
金融緩和で得する人と損する人/MMTとは何か、それで何が起こるか/MMTはなぜ危ういのか/財政と金融そして物価のやや面倒な関係/出口問題またはヘリマネあれこれ
三 リブラからミダスへ
リブラという名の茶番劇/リブラも円もドルもミダスなのだ/次のミダスはそこまで来ている
パネル35:リセットのメカニズム/パネル36:流動性の罠は見えざる手の摂理か/パネル37:ブラックスワン/パネル38:不都合に耐える力/パネル39:法貨とは何か/パネル40:ハイパーインフレはなぜ起こるか/パネル41:新円切り替えと預金封鎖/パネル42:金融包摂とは何か/パネル43:すべてがオカネになったら
第六章 地獄への道は善意で敷き詰められている
株式会社は変わるのだろうか/移民とAIそして日本という国/技術は誰のものか/グローバリズムが呼び寄せる不都合な未来に
パネル44:コースの定理と水俣の海/パネル45:私たちはあるがままでありたい/パネル46:監視鳥の恐怖

書評

シビレるMMT(現代通貨理論)批判

北村行伸

 本書は岩村充氏の新潮選書の第3作目にあたるもので、多くの岩村ファン待望の一冊である。新潮選書の前2作『貨幣進化論―「成長なき時代」の通貨システム―』(2010)と『中央銀行が終わる日―ビットコインと通貨の未来―』(2016)では、貨幣の歴史、金本位制、中央銀行の機能と歴史、仮想通貨の誕生と競争、そして金融政策の有効性など、金融史や金融制度、中央銀行論を軸にしたトピックが扱われていた。
 今回のテーマは、通貨に縛られずに、近代社会が誕生するための制度基盤として、国民国家、株式会社、中央銀行の3つを取り上げて、それらがどのように相互依存しながら進化し、あるいは変貌してきたかを論じることにある。岩村氏によれば、前2作では通貨をメインにしてきたが、国家や企業の動向を無視して説得的な議論はできないことを痛感し、本書を執筆したということである。
 本書ではイングランド銀行に先駆けて史上初めて現代的な金融政策を実施した18世紀初頭のフランスにおけるジョン・ローのエピソードを紹介したかと思えば、昨今話題になった仮想通貨リブラをどう見るか、はたまた、トマ・ピケティが『21世紀の資本』で提起したr>g(資本収益率が経済成長率を継続的に上回っている)の解釈にも及んでいる。
 岩村氏が取り上げたテーマのうちでとりわけ私にとって面白かったのは、アメリカで話題になったMMT(現代通貨理論)に対する岩村氏の厳しいコメントである。インフレが起こらない限り、そして国債が国内で吸収される限り、積極的に財政拡張して構わないというMMTの支持者たちの議論に対して、岩村氏は、一通り政府が儲からないプロジェクトを選択して、インフレと増税を繰り返すような悪循環に陥るリスクを説いた後、では政府が儲かるプロジェクトを推進したらどうなるだろうと問いかけている。曰く「東京湾を埋め立てて刑法の賭博罪が適用されない大カジノセンターを作るとか、このごろ流行り始めた『情報銀行』を作って個人情報を独占管理し、小売業者や金融機関に利用を強制するなどというのは、国のプロジェクトとして運営すれば大儲けできて国の借金が減る可能性だってあります。そうすると物価は下がりますから減税ということになります。カジノも情報銀行も大成功となってしまいます。でも、そんなサイクルを回し始めたら、わが日本はカジノ国家にしてビッグブラザー国家への道を猛進することになりかねません」。
 岩村氏がMMT論者たちに問いかけているのは、インフレが起こらなければ財政赤字を出しても問題ないという単純なルールを、中央銀行よりはるかに万能な国家に適用することの恐ろしさである。それはMMTの下ではハイパーインフレになるという凡庸な反論よりはるかに説得力があり、その毒舌ぶりには岩村ファンに限らず、シビレさせられるのではないだろうか。

(きたむら・ゆきのぶ 経済学者)
波 2020年3月号より

著者プロフィール

岩村充

イワムラ・ミツル

1950年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。日本銀行企画局兼信用機構局参事を経て、1998年より早稲田大学教授(現職は早稲田大学大学院経営管理研究科教授)。著書に『貨幣進化論 「成長なき時代」の通貨システム』『中央銀行が終わる日 ビットコインと通貨の未来』(いずれも新潮選書)、『金融政策に未来はあるか』(岩波新書)など。

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