
サービスの天才たち
748円(税込)
発売日:2003/11/20
- 新書
- 電子書籍あり
平凡なれど「非凡」。人のこころを虜にする、名もなき達人たちの極意とは!?
高倉健を魅了してやまないバーバーショップの心技。お客の心まで揉みほぐすゴッドハンドをもつマッサージ師。絶妙な間合いで宿泊客を安心させる温泉カメラマン。北海道を訪れる有名人御用達のタクシー運転手の接客の極意──。平凡なれど非凡。名もなき達人たちのプロフェッショナルなサービス、お客の心を虜にするサービスの真髄とは!?
目次
はじめに
高倉健を魅了するバーバーショップ
「一杯のお茶」へのこだわり
日本一のキャディを育てるゴルフ場
人を安心させる温泉カメラマンの間合い
種牛「糸福」の一生
ゴッドハンドは心まで揉みほぐす
有名人御用達タクシー、接客の極意
「一杯のお茶」へのこだわり
日本一のキャディを育てるゴルフ場
人を安心させる温泉カメラマンの間合い
種牛「糸福」の一生
ゴッドハンドは心まで揉みほぐす
有名人御用達タクシー、接客の極意
書誌情報
読み仮名 | サービスノテンサイタチ |
---|---|
シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 192ページ |
ISBN | 978-4-10-610042-0 |
C-CODE | 0236 |
整理番号 | 42 |
ジャンル | ノンフィクション、マーケティング・セールス |
定価 | 748円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2012/05/25 |
インタビュー/対談/エッセイ
波 2003年12月号より サービス業、取材の真髄 野地秩嘉『サービスの天才たち』
『サービスの天才たち』は、前作『サービスの達人たち』から二年かかって書き上げたものだ。この本は前作の好評を受けてスタートしたのだが、予想外に時間がかかってしまった。その理由は取材方法を少し変えてみたからである。
前作で取り上げたサービスの達人たちは、ロールスロイスのセールスマン、風呂屋の三助、電報配達員、興行師といった人たちで、主にインタビューを通して彼らの卓抜した技術や人生を説き明かした。それに比べて今回、登場しているのは、タクシードライバー、ゴルフのキャディ、マッサージ師、床屋さんといった業種である。
「聞き書きよりも体験取材した方が、よりリアルなものが書ける」
私は直感でそんな判断を下したのだが、それは担当編集者にとっては大きな悩みの種となったようだ。一作目がうまくいったということは、続編はなるべく早く出すのが妥当な戦略だろう。ところが、取材は遅々として進まず、原稿は一向にでき上がらない。編集者にとっては焦燥の日々だったと思われる。
実のところ、私もここまで時間がかかるとは計算していなかった。タクシードライバー、キャディ、マッサージ師を体験取材しているうちに気がついたことは、取材対象者のサービスを受けているだけでは、他との比較ができないことだった。
そこで、私はひとつのゴルフ場だけでなく、いくつものゴルフ場に出かけていった。タクシー、マッサージについても同じように、さまざまなケースを取材した。だが、そこまではまだいい。キャディもタクシーもマッサージも、取材しようと思えば毎日でも通えるからだ。
私にとって最大の誤算は、なんといっても床屋さんの取材だった。当然ながら、散髪は髪の毛が伸びていなくては体験できない。私はイライラしながら鏡を眺め、三週間ごとにさまざまな床屋を試した。
「馬鹿だなあ、散髪とインタビューを別々にやればいいじゃないか」と思われる方も多いだろう。しかし、それでは駄目なのだ。
サービス業に携わる人はなぜか、仕事中にインタビューした方が生き生きした言葉が出てくる。特に理髪師という職業は、つねに背後から人とコミュニケーションする。面と向かってインタビューしてみたら、彼は照れてしまい、しどろもどろになってしまった。今回、取材したホテルパシフィック東京の天才理髪師、佐藤英明さんはそんな可愛い人である。
しかし、今回は時間をかけただけの成果を得ることができた。私にとっては最高の本になったと思う。佐藤さんを描いた一編など、日本理髪史上に残る傑作では、と自負しているのだが(笑)。
前作で取り上げたサービスの達人たちは、ロールスロイスのセールスマン、風呂屋の三助、電報配達員、興行師といった人たちで、主にインタビューを通して彼らの卓抜した技術や人生を説き明かした。それに比べて今回、登場しているのは、タクシードライバー、ゴルフのキャディ、マッサージ師、床屋さんといった業種である。
「聞き書きよりも体験取材した方が、よりリアルなものが書ける」
私は直感でそんな判断を下したのだが、それは担当編集者にとっては大きな悩みの種となったようだ。一作目がうまくいったということは、続編はなるべく早く出すのが妥当な戦略だろう。ところが、取材は遅々として進まず、原稿は一向にでき上がらない。編集者にとっては焦燥の日々だったと思われる。
実のところ、私もここまで時間がかかるとは計算していなかった。タクシードライバー、キャディ、マッサージ師を体験取材しているうちに気がついたことは、取材対象者のサービスを受けているだけでは、他との比較ができないことだった。
そこで、私はひとつのゴルフ場だけでなく、いくつものゴルフ場に出かけていった。タクシー、マッサージについても同じように、さまざまなケースを取材した。だが、そこまではまだいい。キャディもタクシーもマッサージも、取材しようと思えば毎日でも通えるからだ。
私にとって最大の誤算は、なんといっても床屋さんの取材だった。当然ながら、散髪は髪の毛が伸びていなくては体験できない。私はイライラしながら鏡を眺め、三週間ごとにさまざまな床屋を試した。
「馬鹿だなあ、散髪とインタビューを別々にやればいいじゃないか」と思われる方も多いだろう。しかし、それでは駄目なのだ。
サービス業に携わる人はなぜか、仕事中にインタビューした方が生き生きした言葉が出てくる。特に理髪師という職業は、つねに背後から人とコミュニケーションする。面と向かってインタビューしてみたら、彼は照れてしまい、しどろもどろになってしまった。今回、取材したホテルパシフィック東京の天才理髪師、佐藤英明さんはそんな可愛い人である。
しかし、今回は時間をかけただけの成果を得ることができた。私にとっては最高の本になったと思う。佐藤さんを描いた一編など、日本理髪史上に残る傑作では、と自負しているのだが(笑)。
(のじ・つねよし ルポライター)
蘊蓄倉庫
あの「憧れの老人ホーム」は?
「どうか、私を入居させて下さい。それが無理なら、ご飯だけでも食べさせて下さい」と、今回の取材で著者である野地さんを虜にしたのが「サンシティ」という施設です。
本文中「『一杯のお茶』へのこだわり」という章で紹介されている「サンシティ」は、昔ならば老人ホームと俗称されていた施設で、今風の言い方をすると高齢者用集合住宅。
ここでは、よくあるカフェテリア方式の冷めた食事とは無縁です。熱々の食事を天使のように純真なウェイトレスが運んでくれ、しかも値段は、入居者なら三食で1950円。建物はハワイのリゾートホテルと錯覚するほどだそうです。
夢のようなこの施設、実は現在TBSで放送中の「エ・アロール」(原作・渡辺淳一さん)のロケで使われたのです。とすると、東京・銀座に立つという設定の、憧れの老人ホーム「ヴィラ・エ・アロール」の正体は、「サンシティ」ということになるんでしょうか?
「どうか、私を入居させて下さい。それが無理なら、ご飯だけでも食べさせて下さい」と、今回の取材で著者である野地さんを虜にしたのが「サンシティ」という施設です。
本文中「『一杯のお茶』へのこだわり」という章で紹介されている「サンシティ」は、昔ならば老人ホームと俗称されていた施設で、今風の言い方をすると高齢者用集合住宅。
ここでは、よくあるカフェテリア方式の冷めた食事とは無縁です。熱々の食事を天使のように純真なウェイトレスが運んでくれ、しかも値段は、入居者なら三食で1950円。建物はハワイのリゾートホテルと錯覚するほどだそうです。
夢のようなこの施設、実は現在TBSで放送中の「エ・アロール」(原作・渡辺淳一さん)のロケで使われたのです。とすると、東京・銀座に立つという設定の、憧れの老人ホーム「ヴィラ・エ・アロール」の正体は、「サンシティ」ということになるんでしょうか?
掲載:2003年11月25日
著者プロフィール
野地秩嘉
ノジ・ツネヨシ
1957年東京都生まれ。ノンフィクション作家。著書に『サービスの達人たち』『サービスの天才たち』『トヨタ 現場の「オヤジ」たち』『高倉健インタヴューズ』『ユーザーファースト 穐田誉輝とくふうカンパニー──食べログ、クックパッドを育てた男』など多数。
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