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授業の復権

森口朗/著

748円(税込)

発売日:2004/03/19

  • 新書
  • 電子書籍あり

学校再生の切り札。学力向上にかけた達人たちの工夫と情熱。

授業時間と学習量を減らしても、「落ちこぼれ」も「不登校」もなくならなかった。なぜか。それは、教育改革が制度論に終始し、学校は勉強するところであり、授業こそが学校の「魂」であることを忘れているからにほかならない。一方、不毛な改革論議に左右されることなく、ひたすら子供たちの学力向上を願い、授業技術の開発と熟練に挑んできた教師たちがいる。彼らの授業に学校を再生させるカギが隠されている。

目次
序 章 授業こそ学校の魂
第一章 「仮説、推理、検証」で学ぶ科学の心
──仮説実験授業 板倉聖宣──
第二章 「目に見える」算数への革命的転換
──水道方式 遠山啓──
第三章 「書く」「読む」「話す・聞く」で本物の国語力
──鍛える国語 野口芳宏──
第四章 教科書を教科書通り教えよう
──教育技術法則化運動 向山洋一──
第五章 類型化、そして反復が起こした奇跡
──百ます計算 陰山英男──
第六章 「一個のハンバーガーから世界が見える」
──「よのなか」科 藤原和博──
終 章 教育論争の忘れ物
参考文献

書誌情報

読み仮名 ジュギョウノフッケン
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610057-4
C-CODE 0237
整理番号 57
ジャンル 教育学
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/01/27

インタビュー/対談/エッセイ

波 2004年4月号より 教育過誤  森口 朗『授業の復権』

森口朗

 山崎豊子がサンデー毎日の連載小説『白い巨塔』で医学部の閉鎖性を暴いたのは、一九六三年のことだった。あれから四十数年、今では医療過誤が訴訟で明らかになるのは日常茶飯事である。それどころか、病院の医療水準や医師の評判・医療方針に至るまで、豊富で多面的な情報がメディアに流れ、多くの人々がその情報に基づいて病院を選んでいる。医師と患者の関係も大きく変わり、インフォームド・コンセントに基づいて治療方針が決定されるのが通例となった。
ところが、教育機関である学校に関する情報は、四十年前とほとんど変わっていない。高校や私立中学については(進学実績や入学偏差値に偏っているとはいえ)ある程度の情報が存在するが、公立の小中学校の内部でどのような教育が行われているのかを知る人は、ほんの一握りにすぎない。
近年明らかになりつつある「学力低下」は、特定の世代に対して大規模に行われた「教育過誤」の結果である。
学力低下論争が登場するまで、いったいどれほどの人が、九九も満足にいえない中学生や分数・小数の計算があやしい大学生が多数存在する現実を知っていただろう。
「最近の子どもは勉強、勉強でかわいそうだ。詰め込み教育、管理教育、偏差値教育はやめにして、子どもにゆとりを取り戻そう」
という現実を無視した主張がなされていたのは、わずか数年前である。
世界に冠たる日本の教育が、どれほどボロボロになっているかが、やっと明らかになったのだ。
次は、その原因と対策を考える番である。
「医療過誤」は治療行為によって生じる。それと同様に「学力低下」は授業によって生じた。
だから、これを解決するには文部科学省が推進する授業のどこに問題があるかを明らかにし、どういう授業ならば学力が向上するのかを探る必要がある。こういう場合、主義主張・思想信条にとらわれることなく、戦後の黎明期から現在に至るまで「評判の授業」を調査・分析するのが大切だ。
『白い巨塔』が連載された当時、医師以外の者が医療を語るのはタブーであった。同様に、未だ教師以外の者が(少なくとも学校の)授業を語るのはタブーである。だが、このタブーを破らない限り「学力低下」は収まらない。
正直に告白すると、二年前に「授業の復権」という題で新書を書かないか、という話をいただいた時、一瞬たじろいだ。教師でないものが、教育制度論を語るのはたやすい。学力低下を叫ぶのも今では容易なことだ。しかし、本当に必要とされる言葉は、勇気無くして語れないのである。

(もりぐち・あきら 教育評論家)

蘊蓄倉庫

授業を覚えていますか?

 小学校や中学校の楽しかった思い出を聞かれて、「授業」と答えられる人はどれくらいいるでしょうか? 先生との思い出も、教え方ではなく、いたずらをして怒られたことやクラブ活動ばかり……。授業はつまらなかった思い出の筆頭ではないでしょうか?
 本書には、6人の先生が登場します。こんな授業を受けていれば、自分の人生も少しは変わっていたかも、と思わずにいられない、戦後教育史に輝く授業の達人たちです。
 さて、ここに出てくる先生たちの多くが、名授業といわれる授業方法を学んだ場所があります。それは日教組(日本教職員組合)の教育研究集会などです。日教組というと、「日本の教育を駄目にした」などと批判されることもありますが、実は、多くの名授業を生み出し、次世代の先生たちに受け継いでいく役割を果たしていたのです。なぜ、日教組が名授業を生み出す背景となったのか? 詳しくは本書をご覧ください。
掲載:2004年3月25日

著者プロフィール

森口朗

モリグチ・アキラ

1960(昭和35)年大阪府生まれ。教育評論家。中央大学法学部卒業。佛教大学修士課程(通信)教育学研究科修了。東京都職員として勤務中の1995〜2005年、都内公立学校に出向。2016年早期退職。著書に『戦後教育で失われたもの』『いじめの構造』『日教組』など。

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