ホーム > 書籍詳細:大江戸曲者列伝―太平の巻―

大名、お妾、儒者、遊女、金銭、愛欲、出世欲。奇人変人百花繚乱。歴史はゴシップに満ちている。

大江戸曲者列伝―太平の巻―

野口武彦/著

792円(税込)

本の仕様

発売日:2006/01/20

読み仮名 オオエドクセモノレツデンタイヘイノマキ
シリーズ名 新潮新書
雑誌から生まれた本 週刊新潮から生まれた本
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 255ページ
ISBN 978-4-10-610152-6
C-CODE 0221
整理番号 152
ジャンル ノンフィクション、日本史
定価 792円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2011/12/28

出世になりふり構わなかった学者、イヌを食えといった町奉行、文化のパトロンになった汚職官僚、江戸城内のイジメ、ぶらぶら遊び暮らす幕末のパラサイト、災害速報で売り出した男……など四十五人。太平の世にもリスクはある。当人たちが大まじめに生きる姿は、傍目にはコミカルで、かつ物悲しい。歴史の素顔はゴシップに宿る。江戸時代二百五十年を《陰の声》で綴った無類に面白い人物誌。

著者プロフィール

野口武彦 ノグチ・タケヒコ

1937(昭和12)年東京生まれ。文芸評論家。早稲田大学文学部卒業。東京大学大学院博士課程中退。神戸大学文学部教授を退官後、著述に専念する。日本文学・日本思想史専攻。著書に『大江戸曲者列伝』『幕末バトル・ロワイヤル』『幕末気分』『幕府歩兵隊』など。

目次

はじめに
第一章 黎 明
大学教授の元祖―――――――林羅山
島原に死す―――――――――板倉重昌
将軍機関説―――――――――酒井忠清
恋は焼きつくす―――――――八百屋お七
内匠頭を抱きとめた男――――梶川与惣兵衛
大食の大目付――――――――庄田安利
学者の政界デビュー―――――荻生徂徠
元禄のエロス――――――――正親町町子
マイナーの誇り―――――――都の錦
御生母押し込め―――――――本寿院
ずばぬけた知性がなぜ――――新井白石とシドッチ
大奥愛欲絵図――――――――江島生島
世界は音楽だ――――――――太宰春台
太陽はアマテラスか―――――上田秋成と本居宣長
第二章 爛 漫
世直し大明神――――――――佐野政言
老中直属情報網―――――――松平定信
スカトロ宴会――――――――水上美濃守
イヌを食えといった町奉行――曲淵甲斐守
打首になった財務官僚――――土山宗次郎
がんばれ戯作者―――――――朋誠堂喜三二と恋川春町
生涯実直――――――――――森山孝盛
偉くなった家出息子―――――頼山陽
老害アカデミー―――――――佐藤一斎
さすらいの公卿娘――――――風鈴お姫
くじら屋敷―――――――――松平康英
「愛人」の始まり――――――江馬細香
幽界を見た少年―――――――仙童寅吉
幕末のパラサイト――――――滝亭鯉丈
旗本のイジメ殺人――――――松平外記
高頬のホクロ――――――――河内山宗春
父ありき――――――――――勝小吉
第三章 風 雲
いつも万葉気分―――――――平賀元義
江戸のリベラリスト―――――松崎慊堂
入墨判官――――――――――遠山金四郎
艶福政治家―――――――――阿部正弘
顔を灼く――――――――――高野長英
奥様と雪隠―――――――――井関隆子
ふところ小刀――――――――本庄茂平次
女犯仏罰――――――――――良源院隆穏
江戸の災害出動―――――――佐久間長敬
官製美談――――――――――遊女黛
江戸の災害ルポ―――――――仮名垣魯文
王朝今は昔―――――――――三条実万
幕末のタカ派――――――――徳川斉昭
攘夷のコスト――――――――川路聖謨
年表

インタビュー/対談/エッセイ

波 2006年2月号より 歴史はゴシップだ  野口武彦『大江戸曲者列伝―太平の巻―』

野口武彦

 このたび新潮新書として刊行する『大江戸曲者列伝』の原形は、『週刊新潮』に二○○三年六月から二○○五年八月まで『OH! EDO物語』というタイトルで百八回にわたって連載した歴史読物シリーズである。
 ちょうど人間煩悩の数だけ書いたわけだが、新書化するにあたってスペースの関係で八十三話にしぼりこんだ。連載中はわざとアットランダムに時期を散らばらせていたが、本書の編集では事件が起きた順序で「太平の巻」「幕末の巻」と配列しなおした。そうすると、当初はバラバラだった人間群像がおのずと歴史の文目を描いてくるから不思議である。
 一回が四百字詰め原稿用紙で七枚半弱という分量は、《ゴシップ》のジャンルにぴったりである。すぐにペースをつかんだ。
 昔まだ若かった頃は、シュテファン・ツヴァイクの『人類の星の時間』を読んで感動し、いつかこんな風に歴史の決定的な瞬間を描いてみたいと思っていた。コンスタンチノープルの陥落とか、ナポレオンが敗れるワーテルローの戦場とか、レーニンの封印列車とか。
 年を取ってからは好みが変わった。もちろん、そういう壮大な場面を書くのは自分のガラでないと悟ったこともある。生まれつき美談向きにできていない。しかしそれ以上に、だんだん理解してきたのは、歴史の決定的な場面がそれにふさわしい荘厳さで立ち現れることなど滅多にないという《法則》である。歴史のドラマはドラマティックにあらず。天の一角から光はさしてこないし、フルオーケストラのBGMは鳴り響かない。
 人間は誰でも一生のうちに一度ぐらいは、それと知らずに《歴史の現場》に立ち会っているものだ。たいがいは自覚症状もなく発生しては自然治癒してゆく脳梗塞のように、気が付かないうちにやり過ごしているだけである。また逆に、いつでも今が一世一代の舞台とカンチガイし、緊張しまくってしくじる場合もある。
 自分から輝こうとする人間にはまずロクなことは起きないが、ひとりでムダに発光している姿をはたから眺めるのも、それはそれでまた無類に面白い。
 日本には昔から豊かなゴシップ文学の伝統がある。平安の『今昔物語』などはその集大成だし、江戸随筆は噂話とワルクチ(悪口ではない)の尽きせぬ宝庫だ。人間はやっぱり微妙な悪意に晒されないと本当の顔が見えてこない。
 ここにお届けする八十三人の曲者は、決して歴史上の有名人ばかりではない。その代わり、それぞれにユニークな個性で読者を楽しませてくれることを祈りたい。

(のぐち・たけひこ 文芸評論家)

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江戸時代の少年法

 TV時代劇で、殺人犯が「市中引廻しの上、獄門」と言い渡されるお白洲シーンがありますが、「獄門」はさらし首のことで、昔獄舎の門に首を懸けたところに由来するそうです。江戸時代の刑罰といえば、磔、火罪などの残酷な死刑が行われていましたが、一方で現代の少年法のような決まりもありました。
 恋する男に会いたい一心で放火した八百屋お七は、十五歳だったので火あぶり(火罪)になりましたが、もし十四歳だったら、十五歳になるまで親類へ預けられた後に遠島でした。未成年の場合には罪一等減じられたのです。
掲載:2006年1月25日

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