字がうまくなる―「字配り」のすすめ―
748円(税込)
発売日:2007/01/20
- 新書
- 電子書籍あり
悪筆が一変! 読むだけで効く! 書いてみて驚く!! 最短距離の文字上達術。
「どうせ悪筆は直らない」と諦めるのはまだ早い。読むだけで効く、書いてみて驚く、最短距離の文字上達術。大人の文字は、いまさらペン習字やなぞり書きでは上達しません。でも8つのルールをおぼえるだけで、字は見違えるほどうまく見えるようになるのです。手紙から伝票、履歴書、宛名書きまで、仕事や暮らしの場面ですぐに使える実例集つき。「字配り」こそ気配り、その極意と効果をお試しください――。
思いを伝え、相手の心を動かすその効用は変わらない。
間違いだらけだった。楷書と行書の成り立ちと実際。
挫折してしまうのか。芸術ではない実用志向で最短距離を。
ーションという字の根本的機能に立ち返る、字配りという気配り。
しまったH氏、自他ともにみとめる悪筆への処方箋。
個性的に美しく。H氏、今度は縦書きで行書に挑戦。
届出に申込み、増える横書き楷書の大原則。
生活の中の場面、書式や形態に応じた字配りのコツ。
硬直した字形
空に字を書く
書誌情報
読み仮名 | ジガウマクナルジクバリノススメ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 192ページ |
ISBN | 978-4-10-610200-4 |
C-CODE | 0281 |
整理番号 | 200 |
ジャンル | アート・建築・デザイン、ペン字 |
定価 | 748円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2012/02/24 |
インタビュー/対談/エッセイ
波 2007年2月号より 手書きの効用 猪塚恵美子 『字がうまくなる―「字配り」のすすめ―』
今、世の中は空前のなぞり書きブームではありますが、この本と一般的なペン字教本との大きな違いは、「なぞり書きをしないこと」と「個性を潰さないこと」。ペン字の練習といえば、定番はなぞり書き。なぞり書きは書家になるための練習方法のひとつで、お手本とそっくりの字を書くための練習です。
しかし、ちょっと待ってください。私たちはペン字のプロを目指しているんですか? 日常生活で恥ずかしい思いをしない程度の、うまい字を書きたいだけですよね? いわば、車は運転できるけど、よりうまく、安全に運転したいというようなもの。法規に従った安全運転を身につけたいと言っている人に、プロレーサーになるための、サーキットを走行する高等テクニックを身につける練習をさせるのがいかに的はずれであるか、お分かりでしょう。
私たちがうまく字を書きたいと思うとき、「うまい字に見える」ことが大事なので、お手本とそっくりかどうかはどうでもいいことです。私たちはすでに何十年も自分だけの手や腕の筋肉を使って字を書いてきています。だから人それぞれ異なる字が出来上がるのは当然。癖字なのではなく個性です。その字がヘタに見えてしまうのは、字そのものよりも、まずはその配置の仕方、字配りが問題である場合が多いのです。運転の仕方に個性があっても、ある一定のルールを守れば、誰でも安全運転ができるように、字だって、字配りの数少ないルールに従えば、字そのものは変えずに個性を保ったまま、うまく字が書けるのです。
この本では、実際に、ある中年男性がいくつかのルールに従って個性を保ったまま、字がうまく書けるようになっていく様子を追いながら、字配りのコツを皆さんに伝授していきます。一通り読むだけで、字は劇的に変わるはずです。きっと来年の賀状を書くのが待ち遠しくなるでしょう。興味を持ったら、ホームページも覗いてみてください(http://daigotorena.moo.jp/)。字配りのルールを実際に適用した、さまざまな作品を見ることができます。
蘊蓄倉庫
手書き文字の効用は、相手の印象を左右するにとどまりません。コミュニケーションが脳を活性化させることはよく知られていますが、字を書くことはコミュニケーションの大切な一部です。便箋やハガキを目の前にして、どのぐらいの大きさ、文字数で、伝えたいことを過不足なく、なるべくきれいに書けるか――。一文字ずつ自分の手で書くという行為は、キーボードを打つ作業よりも、かなり多くの神経を使います。作家でも、パソコンで大まかに書いて原稿用紙に清書する、あるいはその逆、徹頭徹尾手書きにこだわるなど、さまざまなスタイルがあります。英語などの表音文字で構成される言語に比べて、表意文字(漢字)と表音文字(かな)を駆使して作られる日本語は、手書きとは切り離せないもののようです。
担当編集者のひとこと
手書きが効く
私が入社した90年頃は、編集記者として書かされる原稿もほとんどが原稿用紙にエンピツ書きでした。やがてワープロが配布され、90年代も半ばになると全社員の机にパソコンが配置されます。仕事をするための道具である電話やファックスが、携帯や電子メールに、紙とエンピツと消しゴムは、キーボードとモニターに取って代わりました(机の上の紙の量は、一向に減りませんが……)。 それでも、この本の中でもふれているように、「ここぞ」というとき、時間をかけて手紙を書く光景(というより職業意識)は今も変わりません。考えながら、頭で整理して文章化していく緊張感とともに、手間のかかったぶん、気持ちが伝わるのではないかという期待も確かにあるのです。
この本は、そうした手書きの効用とともに、何かと忙しい現代人のために、ペン字教本やなぞり書き、書道といったどうしても時間のかかる(しばしば面倒くさい)方法ではなく、どうすれば「うまく見えるか」を軸として書かれています。覚えてほしい「8つのルール」以前に、丁寧に、ゆっくり書くことが「大原則」として置かれていますが、これは相手に対する礼儀でもあります。
字はオリジナル、手で書く以上は、人間と同じように全く同じ文字は存在しません。人間が文字を考え出してから約4500年、日本でワープロ1号機が誕生してから、まだほんの30年――急激なデジタル化が進んでいますが、だからこそ手書きの価値は逆に増していくもののようです。
2007/01/25
著者プロフィール
猪塚恵美子
イノヅカ・エミコ
1964(昭和39)年東京都生まれ。文学博士(言語学)。上智大学大学院、同国際言語情報研究所助手を経て、上智大学、武蔵野音楽大学講師。専門は音声学、言語学、ドイツ語。著書に『人生がガラリ変わる! 美しい文字を書く技術』。共著に『日本語の音声入門』など。