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地獄の日本兵―ニューギニア戦線の真相―

飯田進/著

748円(税込)

発売日:2008/07/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

米軍より恐ろしかったのは餓死だった。85歳の元兵士が暴く戦争の『醜いはらわた』。

敵と撃ち合って死ぬ兵士より、飢え死にした兵士の方が遥かに多かった――。昭和十七年十一月、日本軍が駐留するニューギニア島に連合軍の侵攻が開始される。西へ退却する兵士たちを待っていたのは、魔境と呼ばれる熱帯雨林だった。幾度となく発症するマラリア、友軍の死体が折り重なる山道、クモまで口にする飢餓、先住民の恨みと襲撃、そしてさらなる転進命令……。「見捨てられた戦線」の真実をいま描き出す。

目次
はじめに
第1章 大調査隊をニューギニアへ
「時勢を何と思っちょるか」/興亜青年の志/ニューギニア民政府へ志願/「謎の魔界」調査の目的/人食い人種の住む山へ/標高三千メートルのサイクロープ山山頂で
第2章 餓死の序幕
ガダルカナル島の「生命判断」/熱帯雨林の真実/救出されても他戦線に「転進」/ポートモレスビーを攻略せよ/食糧は最大二十日分/ガ島へ戦力投入、補給絶たれる/西へ撤退の始まり/柳沢軍医の涙
第3章 命を吸いとる山を越えて
本国から五千キロ離れた軍の弱み/サラワケット山越えを選ぶ/ひたすらに山頂を目指して/二千二百名の落命/軍司令部も西へ/眼前に広がる「原始の墓場」/自分だけでも食糧を
第4章 底なしの大湿地帯を行く
棘のある熱帯マングローブ/未知の湿地帯を歩く/浮かんできた母の顔/装具のない死体/病兵が強盗に狙われる/蛙、蝶々、蜘蛛まで口にして/失われた軍人勅諭
第5章 幻と消えた「あ号作戦」
置き去りにされた第十八軍/口べらしの総攻撃/密林で先住民と生きる/「逃亡兵に気をつけろよ」/大尉の独白/一%以下の生還者に奥崎謙三/頼みの綱の友軍陣地に向かって/トル河に築かれた死体の山/腹は裂かれ、肉は削ぎとられ
第6章 ビアク島の玉砕戦
「連合艦隊がきたぞう!」/返ってきた先住民の恨み/西洞窟の最期/西と東へ分かれて転進/イドレへの八十八日間/「七%の生存率」/壊滅した師団司令部
第7章 私の犯した「戦争犯罪」
亜丁丸、轟沈の瞬間/だまし討ちされた高級将校たち/「北岸作戦」始動/奇妙な再会と最初の戦果/「釈放すれば通報される」/前面の敵、前へ、前へ、突け!/巡警の逃亡としぼむ戦意/もし、補給があったなら/軍用犬も遂に消える/米軍よ、攻めてこい
第8章 敗戦と収監、そして日本へ
海面に撃ち続けた銃弾/密かな決意/科せられた戦犯容疑は/様変わりしたホランディア/かつての捕虜が警備兵に/運命を分けた軍事法廷/「重労働二十年」の刑に服す/護送トラックから見た日本の街/「海ゆかば」で送った死刑囚/警察予備隊創設、に揺れたスガモ
おわりに
主要参考文献及び出典一覧

書誌情報

読み仮名 ジゴクノニホンヘイニューギニアセンセンノシンソウ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610273-8
C-CODE 0221
整理番号 273
ジャンル ノンフィクション、日本史
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2011/11/25

蘊蓄倉庫

初めは非戦闘員として、そして戦犯として

 著者の飯田進さんは、昭和18年2月に海軍民政府の資源調査隊員としてニューギニア島に上陸しました。資源調査というくらいですから、非戦闘員だったのです。半年ほどは3千メートルの高山に登るなどの調査に励む日々でしたが、戦況が厳しくなって陸軍に配属になり、作戦に参加しました。戦後、飯田さんは作戦中の行為でBC級戦犯容疑に問われ、重労働20年という刑を受けています。昭和31年、33歳でスガモ・プリズンを出るまでの長い戦後のなかで、様々な階級の将校に話を聞いたり、警察予備隊創設に抗議をする運動や『私は貝になりたい』『壁あつき部屋 巣鴨BC級戦犯の人生記』などの手記を刊行したりする動きに関わったといいます。戦争を様々な立場から経験したことが、いま本書を世に問うことに繋がりました。
掲載:2008年07月25日

担当編集者のひとこと

自分では聞けなかったこと

「スマトラでは、後から来る兵隊のために、一日中ジャングルを切り開いて道を作っていた。食べものも沢山あって、日本にいるより良かった」
 私事になりますが、亡くなった祖父がこう言っていたことを覚えています。その後で決まって、私に向かって「きっとそんな易しいことじゃなかったよね」という母の言葉もセットです。本当はどうだったの、と祖父に聞くことができないまま、思いだけが胸に残るままになっていました。
 ある会で著者の飯田進さんの講演が行われた際に、他の参加者からも同じような声が挙がりました。肉親が経験した戦争の話を、聞いたことのない人は意外なほど多かったのです。
 飯田さんも、戦後すぐから戦争について語ってきたわけではありません。むしろ、家族にこそ簡単に話せなかったのだと言います。たった六十数年前の話が子どもや孫に伝わらないまま忘れ去られようとしているのはなぜでしょうか。その理由の一端が、本書の最後に書いてあります。

2008/07/25

著者プロフィール

飯田進

イイダ・ススム

1923(大正12)年京都府生まれ。昭和18年2月、海軍民政府職員としてニューギニア島へ上陸。終戦後、BC級戦犯として重労働二十年の刑を受ける。昭和25年スガモ・プリズンに送還。現在(2008年7月)、社会福祉法人「新生会」と同「青い鳥」の理事長。著書に『魂鎮への道』など。

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