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大人のための名作パズル

吉田敬一/著

748円(税込)

発売日:2009/03/16

  • 新書
  • 電子書籍あり

脳がめざめる、厳選74問。Q.日中4m登り、夜中に3mずりおちるカタツムリがいます。高さ9mの木のてっぺんまで登るには、何日かかりますか? →解答はp78

趣味が高じて大学でパズルを教えるようになった筆者が、古今東西の傑作に自らの新作を加えた厳選の74問。「ひらめき」「論理」「数字」「へりくつ(パラドックス)」「計算」と系統ごとに解き進めば、脳がめざめる快感が――。ゆったりじっくり何度でも楽しめる問題に、うんちくや新旧パズル関連書籍のガイドも盛り込んだ、読んでよし解いてよしのパズル本!

目次
はじめに
I 「ひらめき」を生む16問
問題1~16
解答1~16
II 「論理」を鍛える13問
問題17~29
解答17~29
III 「数字」に強くなる13問
問題30~42
解答30~42
IV 「へりくつ」に負けない9問
問題43~51
解答43~51
V 「計算」が楽しくなる15問
問題52~66
解答52~66
VI これができれば祝・卒業! の厳選8問
問題67~74
解答67~74
付録――古今東西の名作パズル本
あとがき

書誌情報

読み仮名 オトナノタメノメイサクパズル
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610305-6
C-CODE 0276
整理番号 305
ジャンル パズル・ゲーム
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/04/27

インタビュー/対談/エッセイ

「思い込み」を遊ぶ

吉田敬一

 むかし、まだ学生の頃、ある人から「泊る」と「晒す」は、意味が逆ではないかと問われたことがある。その人が言うには、サンズイは水をあらわすから「水で白くしたら、サラス」で、「日が西に行ったら、トマル」ではないかというのだ。なるほど、理にかなっていると感心した。その人は大学どころか、小学校しか出ていない。
 後年、気になって、辞書で調べたら、まったく違っていた。小難しいことが書いてあったが、とにかく、その人が言ったことはまったく間違っていた。しかし、専門書よりもこの人の理に惹かれた。わかりやすかったばかりではない。その人が私の父だったからである。
 じつは、パズルにも似たところがある。一見、正しいと思える答えが、じつは間違っている場合がある。私はいま、ある新聞に月一回、パズルを連載しているが、あるとき「連休を利用して親戚の家までドライブしました。行きは時速30キロ、帰りは50キロで走りました。平均時速は何キロですか?」という問題を読者に仕掛けた。たいていの人は(30+50)÷2で、40キロという答を出して、何の疑問も持たない。「つまらん問題を出して……」という顔つきをしている。「ちがってるよ」というと、一瞬、驚きの顔つきに変る。一見、簡単な小学校レベルの問題と思えるものが解けなかったことに対する漠然とした不安かもしれない。30キロと50キロの平均が40キロで何がおかしい、と食いついてくる。
 ここで、私はニヤニヤしながら種明かしをする。いま、親戚までの距離を仮に150キロとする。この距離を時速30キロで走ると、行きは5時間かかる。帰りは50キロだから、3時間かかったことになる。走った距離は往復で300キロ、これに8時間かかったわけだから、平均時速は300÷8で、37・5キロ。
 しかし、相手はしばらく唖然とした顔つきである。ここで追い討ちをかける。「君の言うように時速40キロで8時間走ったら、320キロ走ることになるよ。しかし時速37・5キロなら、8時間走ると、きっかり300キロになる」というと、やっと納得してくれる。親戚までの距離を何キロとしても同じことだ。これに正解できた人たちも、あらかじめパズルだと断りがあったから用心したので、解けたと白状している。もし突然訊かれたら、間違いなく40キロと答えただろうといっている。
 パズルには「数独」のように時間をかけて地道に解くタイプのものと、前述の平均時速のように落とし穴を仕掛けたタイプがある。後者は、人間の持つ錯覚や思い込みを利用している。パズルは思い込みの善用だが、悪用すれば「振り込め詐欺」になる。善用を一冊の本に仕上げたのが『大人のための名作パズル』である。新しい脳トレのつもりで読むと、意外と楽しめると思う。

(よしだ・けいいち 工学博士、情報科学者)
波 2009年4月号より

蘊蓄倉庫

理工書きってのベスト&ロングセラー

 江戸時代のベストセラー『塵劫記』は、中国・明時代末期の数学書を参考に書かれた大衆向けの数学書です。数学書といっても、いまの感覚でいえばパズルに近い問題が多く取り上げられていて、現代のパズルのネタ本にもなっています。ちなみに本書でも、「継子立て」「百五減算」「盗人算」ほか数問を取り上げました。
 その人気のほどは、大正までの約280年間に301種類の異本・類本が刊行されるほど。日本には『源氏物語』という千年の歴史をほこる小説もありますが、あちらはある意味で、人間にとって普遍的な問題を扱った文学。日々進化を遂げる理系分野でこれほどのロングセラーとなった書籍は、稀ではないでしょうか。

掲載:2009年03月25日

担当編集者のひとこと

頭がだいぶやわらかくなりました

 編集者は最初の読者である、ということがよく言われます。本書でもそれはしかりですが、今回はむしろ「最初の挑戦者」であったというべきかもしれません。第1稿から1年近くの歳月を経て、最終的に掲載されたのは、選り抜きの5系統74問です。しかし、そこまでの過程で著者から出題された(すなわち原稿に書かれた)問題は、100近くあったかもしれません。
 それをひとつずつ解いていくのですから、原稿を読むといっても普段の何倍もの時間がかかります。真剣勝負とは、まさにこういうことを言うのでしょう。著者から終始、試され続けるということは、なかなかしんどいものでした。
 これまでパズルにはほとんどご縁がなく、一時は「この本が完成したら、しばらくパズルはいい」と思うほどでしたが……。いざ終わってみると、腕試しがしたいような気もします。頭もやわらかくなったと自負していますが、効果のほどはぜひ皆様もお試しあれ。

2009/03/25

著者プロフィール

吉田敬一

ヨシダ・ケイイチ

1938(昭和13)年北海道増毛町生まれ。法政大学工学部卒、工学博士(慶應義塾大学)。NECを経て、静岡大学、日本大学、北京外国語大学(客員)、浜松学院大学などで教授を歴任。専門は情報科学。『教養・コンピュータ』『「Cの壁」を破る!』など訳書、著書多数。

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