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サービスの達人たち 日本一の秘書

野地秩嘉/著

770円(税込)

発売日:2011/03/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

彼女はどこがちがうのか? なぜ誰もが魅かれるのか? 究極のサービスの極意!

誰からも「最高の社長秘書」と言われる彼女は、いったいどこがちがうのか? 思わず心がくすぐられる、幸せな気分になる……そんな究極のサービスを提供する「サービスの達人たち」が全国にいる。四万人の顔を知る横浜の名物ドアマン、警察の偉才・似顔絵刑事、シミ抜きクリーニングの名人、まごころを運ぶ富山の薬売りなど、平凡な人による非凡なるサービス――その極意と真髄がここにある。

目次
まえがき
心をくすぐられる言葉/サービスの極意/平凡なれど非凡
1 四万人を知る名物ドアマン――一流ホテルの顔 横浜
ホテルニューグランドのクリスマス/名前と顔を覚える/名門ホテルに入る/ドアマンの仕事/配車のコツ/立ちつくすドアマン/最後の言葉
2 日本一の秘書――彼女はどこがちがうのか 名古屋
カレーチェーンの秘書/秘書という仕事/秘書への道/ベストセクレタリーへの挑戦/上司と秘書/沈黙の価値
3 似顔絵刑事――警察というサービス 千葉
千葉県警の画聖/似顔絵捜査官への道/「お前は絵がうまいな」/捜査用似顔絵の描き方/わいせつ犯と幼い目撃者/デカのたまり場/「好きな絵を描きたい」
4 超神ネイガー――子どもたちのヒーロー 秋田
園庭の誓い/秋田の町おこし/ネイガー誕生/ネイガーの正体/男鹿半島のなまはげ/がんばれ、ネイガー
5 サッパリ横丁の王様――クリーニングの天才 東京
クリーニングの始まり/お客が増える理由/シミ抜きを学ぶ/達人の技/作業の現実/サービスの真髄
6 焼き鳥は永遠に――中洲に轟く名物店 福岡
キャベツのポン酢だれ/セールスマンから屋台の主人へ/屋台の極意/「信秀」開店/人気の秘密/焼き鳥屋の魂
7 富山の売薬さんが行く――究極の訪問販売 富山
健康保険がなかった頃/売薬の始まり/行商たちの時代/売薬、その営業方法/待っていてくれる人のために
あとがき

書誌情報

読み仮名 サービスノタツジンタチニホンイチノヒショ
シリーズ名 新潮新書
雑誌から生まれた本 新潮45から生まれた本
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-610411-4
C-CODE 0236
整理番号 411
ジャンル ノンフィクション、実践経営・リーダーシップ
定価 770円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2011/09/16

インタビュー/対談/エッセイ

波 2011年4月号より できそうで、できない「最高のサービス」とは?

野地秩嘉

不況が長く続くなか、日本中の企業や商店は必死になって、接客マナーやサービスを向上させようとしている。それは、商品そのものの力に頼るだけではモノは売れないとみんなわかっているからだ。だから、みんなサービスの技術を磨き、笑顔を浮かべ、懸命に頭を下げる。そして「サービスしますよ」と商品の値段を下げてみる……。だが、そうした種類の「サービス」は本当に効果があるのだろうか。ビジネス誌やハウツー本に取り上げられるようなテクニカルな接客やもてなしは、対面する客の心をつかめるのだろうか。
気を持たせるような言い方だけれど、以上の問いへの答えは『サービスの達人たち 日本一の秘書』に詳述してある。達人たちが行っているのは技術だけを磨き上げようというものではない。
たとえば、日本一の秘書、カレーチェーンCoCo壱番屋で役員秘書を務める中村由美さんは秘書検定の講師を務めるほどのベテランだ。しかし、電話を通して耳に入る彼女の声はティーンエイジャーのように弾んでいて、聞いていて心地よくなる。そして、彼女はつねにティーンエイジャーの声を出しているのではない。仏事のような、ほがらかではいけない連絡をする場合には、大人の女性の声で慎みを伝える。「七色の声」を駆使するのが彼女だ。だが、彼女のサービスの力とはそうしたスキルだけでなく、もっと奥が深い。
横浜のホテルニューグランドのドアマン、スキンヘッドの田中良雄さんは四万人もの顧客の顔と名前を憶えている。ホテルに近い横浜スタジアムの最大収容人数よりも多い。たとえば田中さんは客が来れば、「石原さん、元気?」と声をかける。子どもにはポケットからキャンディーを出す。天真爛漫で、彼の周りにはハッピーな空間ができる。
また、警察官だって市民サービスに努める立派なサービスマンである。たとえば「千葉県警のレンブラント」と呼ばれた飯田康博さんは、犯人を逮捕するための捜査用似顔絵を描く名人だ。彼を初めとする似顔絵刑事たちの表現技術が進んだため、日本の警察ではモンタージュ写真を使わなくなった。モンタージュ写真より、人間が描いた似顔絵の方が犯人の検挙率アップにつながるからだ。
その他にも、クリーニングのシミ抜きの達人、秋田のローカルヒーロー「超神ネイガー」、「客の安全が第一」と繁華街のパトロールをする博多の焼き鳥屋の主人、長年、実直に客のもとへ配置薬を届けた富山の売薬さん……。
本書に登場する達人たちは人に優しくて、頑固で、そして、人懐こい雰囲気を持っている。だからといって、ただの善人ではない。したたかな面もちゃんと備えている。そして、彼らが持っている技術は、本書を読めば少しは真似できるかもしれない。だが、私が書きたかったのはサービスのコツではない。なぜ、彼らが独自のサービスを手中にしようと思ったか。なぜ、彼らはこれほどの努力をして、人を喜ばせたいのか。私が知りたかったのは、人が人のために尽くすことの意味だ。

(のじ・つねよし ノンフィクション作家)

蘊蓄倉庫

待っていてくれる人のために――富山の売薬さん

 本書に登場する「サービスの達人たち」に、「富山の売薬さん」がいます。
 日本で、国民皆保険制度が確立したのは1961(昭和36)年です。しかし、そのかなり以前から彼らは全国を回って、置き薬を届けていました。当時は医者に診てもらうと言っても、診療代は高額なために、特に農村ではその常備薬が命綱のようなものでした。
 そもそもは江戸時代に富山藩が商人に示唆した「先用後利」という売り方を採りました。
 お客を信頼し、薬を預け、使用した分の代金を後から請求する画期的な販売システムでした。
 今でこそ通信販売が普及し、各地にドラッグストアがあり、往時は1万3000人もいた「売薬さん」は10分の1以下になっていますが、まだまだ彼らを心待ちにしている人びとが多いそうです。「売薬さん」が届けるのは、薬の他にもいろいろとあるからです……。
 詳細は本書でぜひご覧ください。
掲載:2011年3月25日

担当編集者のひとこと

心がくすぐられ、幸せな気分になる一冊

 本書は、『サービスの達人たち』(新潮文庫)、『サービスの天才たち』(新潮新書)に続く、「サービス」をテーマにした最新作です。シリーズですが、本書から読んでいただいても、充分楽しめる、ヒューマン・ノンフィクションになっています。
 各分野で「達人」と呼ばれる人を探し出すのはなかなかたいへんで、時間も手間もかかります。野地さんは、時間をかけて、さまざまな職種を調査して、最上級のサービスを行う方々を発掘され、綿密に取材されました。
 本書には、表題作の「日本一の秘書」をはじめ、横浜の名物ドアマン、富山の売薬の才人(「薀蓄倉庫」参照)、シミ抜きの達人、中洲を守る焼き鳥屋、秋田を勇気づけるローカル・ヒーロー、さらに、市民を守る「サービス」から、警察の似顔絵捜査官も登場します。
 それぞれの達人たちは有名ではありませんが、そのサービスには多くの人びとが一目おいているのです。
 達人たちはどんな技術をもっているのか、なぜお客の心がつかめるのか、どのように人の心を惹きつけるのか……本書にはその答えが書かれています。読んでいただければ、筆者のやさしい筆致に、読者の心も思わずくすぐられ、ほのぼのとした気分になるでしょう。またビジネスに役立つヒントも多数見つかるはずです。
 最上級のホスピタリティが本書に詳しく紹介されています。

2011/03/25

著者プロフィール

野地秩嘉

ノジ・ツネヨシ

1957(昭和32)年、東京生れ。早稲田大学商学部卒。美術展のプロデューサーなどを経て、ノンフィクション作家に。著書に『サービスの達人たち』『サービスの天才たち』『トヨタ物語』『キャンティ物語』『ビートルズを呼んだ男』『芸能ビジネスを創った男』『TOKYOオリンピック物語』『京味物語』などがある。

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