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陰謀史観

秦郁彦/著

814円(税込)

発売日:2012/04/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

東京裁判、コミンテルン、CIA、フリーメーソン……疑心が疑心を呼ぶ! 第一人者が現代史に潜む魔性に迫る。

誰が史実を曲解し、歴史を歪めるのか? そのトリックは? 動機は? 明治維新から日露戦争、田中義一上奏文、張作霖爆殺、第二次世界大戦、東京裁判や占領政策、9・11テロまで、あらゆる場面で顔を出す「陰謀史観」を徹底検証。またナチス、コミンテルン、CIAの諜報や、ユダヤなどの秘密結社、フリーメーソンと日本の関係も解明する。日本史に潜む「からくり」の謎に、現代史研究の第一人者が迫る渾身の論考。

目次

第一章 陰謀史観の誕生――戦前期日本の膨張主義――
「陰謀史観」とは/前景/彷徨する田中上奏文/「八紘一宇」と「大東亜共栄圏」/綾川武治の人種戦争論/石原莞爾の世界最終戦論/「大東亜共栄圏」の拡大/バーガミーニの亡霊/「良書」を駆逐したビックス本/近衛上奏文の妄想
第二章 日米対立の史的構図(上)
日米対立の史的構図/アメリカのハワイ併合/ハワイの「浪速」艦/日露戦争から帝国国防方針へ/第一次日米危機とオレンジ計画/日米未来戦記の勝敗/肥大した日本ナショナリズム/日本膨張の「百年計画」/ルーズベルトと松方乙彦/日米戦争は不可避だったのか
第三章 日米対立の史的構図(下)
食わせてもらった負い目/占領体制のアメとムチ/「アメリカ化」の貸借対照/国内消費用の東京裁判史観/ウオー・ギルトと「甘えの構造」
第四章 コミンテルン陰謀説と田母神史観――張作霖爆殺からハル・ノートまで――
田母神史観の検討/張作霖を殺したのはソ連工作員?/河本の犯行を示す八つの確証/満州事変から日中戦争へ/ルーズベルト陰謀説とは/トーランドとネイヴ/スティネットと幻の日本爆撃/ホワイトとハル・ノート
第五章 陰謀史観の決算
コミンテルン/ヒトラーとナチ党/CIA・MI6対KGB/ユダヤと反シオニズム/戦後期のユダヤ禍論/フリーメーソン/オカルトへの誘い/仕掛人対「トリック破り」/因果関係の単純明快すぎる説明/飛躍するトリック/結果から逆行して原因を引きだす/挙証責任の転換/無節操と無責任
あとがき

書誌情報

読み仮名 インボウシカン
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 256ページ
ISBN 978-4-10-610465-7
C-CODE 0221
整理番号 465
ジャンル 歴史学、日本史
定価 814円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/10/19

蘊蓄倉庫

世界の秘密組織

「陰謀史観」を引き起こす秘密組織を、著者は「I型」「II型」という2つのタイプに分類して、解き明かしています。
「I型」は、コミンテルン、ナチ党、CIA、MI6、モサド(イスラエル)など情報や謀略を担任する国家機関ないし準国家組織です。かつての日本の特務機関、中国国民党、北朝鮮、韓国、最近では中国共産党の類似組織なども含まれます。機構、目的、活動歴が多く公開され、ある程度の検証が可能な組織です。
「II型」として、ユダヤ、フリーメーソン、国際金融資本、各種のカルト教団のような秘密結社と呼ばれる国境横断的な非国家組織です。指令塔の所在や構成が不分明で、陰謀の目的や目標を示す綱領や方針を記した確実な文書証拠は見つかっていないので、陰謀と成果との因果関係が判然としない組織です。
 誰でも一度は聞いたことがあり、興味が湧き立つ秘密組織があるはずです。
 こうした組織の概略は、本書の第五章で述べられています。
掲載:2012年4月25日

担当編集者のひとこと

「陰謀史観」という魔性

 身の周りに不可解な出来事や不思議な事件が起きると、「何かあるにちがいない」という思いに囚われます。そして、この思いは次第に増幅され、「陰謀」や「裏工作」が囁かれていくことがよくあります。
 特に、歴史ともなれば、この「陰謀」という魔性に満ちています。
 明治維新から、日清・日露戦争、張作霖爆殺事件、真珠湾爆撃、第二次世界大戦の終戦工作、東京裁判、占領政策、ケネディ暗殺、9.11テロまで、歴史的場面や大転機に必ず現れる「陰謀論」が、なぜ誕生し、どのように機能して、事実をいかに歪めてきたのでしょうか。
 本書は、そのトリックを徹底検証しています。一例ですが、日本を膨張させる「百年計画」、日本に対するアメリカの戦略「オレンジ計画」など、知られざる「陰謀」もその真相を検証しています。
 また、「陰謀」を生む秘密組織について機構や諜報活動の概略も明らかにされ、例えば、フリーメーソンと日本の関係にも言及されています(「薀蓄倉庫」参照)。
 現代史研究の第一人者で、『慰安婦と戦場の性』(新潮選書)、『昭和史の謎を追う』(文藝春秋)など著作も多い、秦郁彦氏と、本書の企画を進めてから約3年半。
 このたび、現代史の「陰謀論」と「秘密組織」の謎を解き明かした、本格的な論考がついにできあがりました。ぜひご一読ください。

2012/04/25

著者プロフィール

秦郁彦

ハタ・イクヒコ

1932(昭和7)年山口県生まれ。現代史家。第二次大戦を中心とする日本軍事史が専門。東京大学法学部卒。防衛大学校、プリンストン大学、拓殖大学、千葉大学、日本大学などで教鞭をとる。『陰謀史観』『慰安婦と戦場の性』『明と暗のノモンハン戦史』など著書多数。

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