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財務省

榊原英資/著

748円(税込)

発売日:2012/06/15

書誌情報

読み仮名 ザイムショウ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 191ページ
ISBN 978-4-10-610475-6
C-CODE 0231
整理番号 475
ジャンル 政治
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/12/14

「日本を牛耳る悪い奴ら」か、「日本最良のエリート集団」か。「財務省支配」の実態、消費税論議のポイント、職員たちの私生活まで「ミスター円」が大公開!

「省庁のなかの省庁」として、霞が関に君臨する財務省。歴代の政権をコントロールしてきたとも言われる彼らは、「日本を牛耳る巨悪」なのか、はたまた「日本の最後の砦」なのか。「ミスター円」と呼ばれた元大蔵官僚が、豊富なエピソードも交えて古巣の姿を詳述。「財務省支配」の実態、消費税増税論議のポイント、永田町との関係、職員たちの私生活まで、これ一冊で財務省のすべてが分かる!

目次
まえがき
第一章 省庁のなかの省庁
霞が関の頂点に君臨した大蔵省/明治時代にさかのぼる「エリート選抜」の仕組み/戦後の一時期、権力が揺らぐ/予算編成は政治そのもの/事務次官から政治家に/財務省と金融庁の分離/「エリート教育」か「バカ殿教育」か/日本の法律は役人がつくる/国家公務員は事実上「政治家」である/先進国の財務大臣はナンバーツー/フランスのエリート教育/「政治任命」がないと偉くなれないアメリカ/政治的に「中立」を保とうとする日本の官僚
第二章 財務省の組織
大臣官房/予算編成を担う主計局/予算の時期には混み合う「ホテル大蔵」/予算編成権の内閣移管の試み/税制を企画する主税局/関税局/国の財産を管理する理財局/「国際派」の牙城・国際局/財務省と金融庁
第三章 財務官僚とはどんな人達か
キャリアとノンキャリア/財務官僚の昇進パターン/「遊び」で採用された筆者/「四冠王」も入省/「人より牛が多い町」出身の事務次官/生活は中流そのもの/あちこちで開かれる勉強会/「多少の接待は当然」という傲り/「榊原逮捕」で肝を冷やす/「高度経済成長」を支えた宏池会の大蔵出身者たち/大蔵省が幸福だった時代/スキャンダルによる転落と、その後の復活
第四章 「大物次官」達の肖像
名前に「石」が付いた三人の次官/銀行に直接乗り込んだ石野信一/四人の事務次官経験者が政界に進出/竹内道雄、大倉真隆、長岡実/「山口組」のドン山口光秀/斎藤「デン助」次郎/「同期のワル」が去って残った「クリーン」武藤敏郎/小渕恵三の秘書官を二度つとめた細川興一/勝栄二郎は勝海舟の末裔?
第五章 財務省は悪役でいい
ニコッと笑ってぶった切る/無頼派マルサと呑んだ夜/特定の業界を持たない役所/手柄は大臣、秘書官は黒衣/事情が異なる国際金融の世界/強い自信とプライド/幹部たちの再就職先/天下りは「人事システム」の一環/政治家の事務所通いは日課/政権交代で遠くなった政治との距離/財務省にとっての「いい大臣」/財政の危機的な状況/増税は財務省の悲願/増税論は財務省の陰謀?/日本は欧州型の「高福祉・高負担」を目指せ
第六章 財務省支配の功罪
政治との妥協のさじ加減/プライドが傲りに転じる時/遊びっぷりが有名だった田谷廣明/逮捕されたキャリアは「スケープゴート」/大蔵行政の何が問題だったのか/金融自由化の流れを読み切れなかった/財政・金融分離は正しかったのか/「マクロの健全性」の視点/財政と金融の一体化を/財務省の国際的役割/誤った「政治主導」の修正を/財務官僚はエリートたれ

書評

波 2012年7月号より 「ミスター円」が描いた黒衣たちの肖像

幸田真音

消費増税をめぐって政治の世界が揺れている。
増税はいつの世も歓迎されないものではあるが、不満の声が批判となって、いまは財務省や霞が関へ向かい、官僚バッシングはますますエスカレートしている。
なかには「財務省が政権と国民をマインドコントロールしている」とか、「国の累積債務一〇〇〇兆円なんて大したことではない。バランスシートをしっかり見れば、国には資産がたっぷりあるではないか」などというものまである。
野田佳彦総理大臣は、そんな声に追い立てられるようにして、ついに「公務員数の削減」も口にし始めた。
だが、それは本当なのだろうか。
われわれは財務省の内部や、彼らの仕事、財務官僚の実態をどこまで理解しているのだろう。そもそも、日本の官僚はそれほど多すぎるのだろうか。
そんな疑問に答えてくれるのが本書である。
愛嬌のある笑顔で、ガハハと高笑いをしながら、そのくせいつもズバリと世相を斬ってみせる著者だが、自身を「親財務省」であると明確にしたうえで、みずからの出身母体である財務省を語っているのだから、面白くないはずがない。
キャリアとノンキャリア。組織と昇進のメカニズム。歴代の大物次官の肖像。官僚の国際比較も必読だが、ここまで書いていいの? と心配になるほど、内部にいた著者ならではのエピソードが満載で、読む側を飽きさせない。
「野中広務は苦手だったけど、事務所にいかざるを得なかった」とか、「新自由クラブから選挙に出ようとした時、竹内道雄次官に、新自由クラブは長続きしないよ、と言われた」など、政治の世界の裏側も垣間見られ、興味が尽きない。
「榊原英資」といえば、「ミスター円」という呼び名がすぐに浮かんでくるのだが、その背景ともなった九五年の為替介入で、一ドル八〇円を切っていた市場が一気に九九円五〇銭まで戻ったときのことは、記憶している読者も多いだろう。
あのときの日米独の協調介入では、米国側のカウンターパートだったのが当時の財務副長官ローレンス・サマーズ。そして、最前線で為替介入の指揮を執っていたのが、当時の為替資金課長、現在の勝栄二郎財務次官だという。
合言葉は「サプライズ」。規制緩和を組み合わせ、日米独連携の介入で、著者は部下の勝課長に「勝つまで続けろ」と指示を出す。かくして市場は円安に流れを変えたのである。
八〇年代、銀行業界が「護送船団」のぬるま湯にどっぷりと浸っていたころ、霞が関に君臨していた大蔵省による裁量行政の実態と、それゆえまかり通っていた「接待漬け」という「常識」のなかで、米銀時代の私はたびたび大蔵省の中堅官僚たちを料亭に招き、情報収集に努めたものだった。
その後、作家になり、小説の取材で当時の大蔵省の若手官僚と会ったとき、彼の口から上司に「お仕えする」という古風な言葉が聞こえてきて、驚いたのを覚えている。
冷静で優秀、どんなときも素早く答えをくれるのが財務省の官僚だが、なにより、徹底的に黒衣に徹するのが財務官僚としてのDNAであり、矜持なのである。
接待スキャンダルがもとで、大蔵省が財務省と金融庁になった「財金分離」も、見直すべき時期が来たと著者は述べている。金融庁の存在感の低下を危惧する声は、金融界からも聞こえてくるが、不正年金運用のAIJのような事件の発生を許す背景にもなっている。短絡的な時代の逆戻りは望ましくないが、本書が議論のきっかけになったらと心から願う。
政権交代を経て、やたら演説ばかりうまいアマチュア集団に政治を委ねてしまったわが国は、いまやあちこちで軋みが生じている。だからこそ、せめて国の根幹を担う税財政や金融だけは、まともなプロたちに任せなければならない。
ポピュリズムに走る無責任なメディアに惑わされず、安易な官僚批判ではなく、いまこそこの国になにが必要かを知るべきだと訴える著者の声は、きっと読者に伝わるはずだ。

(こうだ・まいん 作家)

蘊蓄倉庫

大蔵スキャンダルで肝を冷やした著者

 90年代に大蔵省をめぐるスキャンダルが勃発した際、現役のキャリア官僚で逮捕された人が一人だけいます。その人の名前はたまたま「榊原」といいました。本書の著者ではありませんが、当時の大蔵省で「榊原」と言えば「榊原英資」のことなので、香港の新聞には著者の逮捕情報が載ったそうです。その時、たまたまロンドンに出張中だった著者は、「オレが逮捕される理由はない」と信じていたものの、詳細が分かるまでの半日くらい、多少心配だったそうです。
掲載:2012年6月25日

著者プロフィール

榊原英資

サカキバラ・エイスケ

1941(昭和16)年東京都生まれ。青山学院大学教授。財団法人インド経済研究所理事長。東京大学経済学部卒。大蔵省に入省し、国際金融局長、財務官を歴任。1999年に退官後、慶應義塾大学教授、早稲田大学教授を経て現職。経済学博士(ミシガン大学)。著書に『財務省』など。

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