ホーム > 書籍詳細:「忠臣蔵」の決算書

忠義だけでは首は取れない! 討ち入り費用総額「700両」(約8400万円)一級史料で読み解く、歴史的大事件の深層。

  • 映画化決算!忠臣蔵(2019年冬公開予定)

「忠臣蔵」の決算書

山本博文/著

799円(税込)

本の仕様

発売日:2012/11/16

読み仮名 チュウシングラノケッサンショ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 255ページ
ISBN 978-4-10-610495-4
C-CODE 0221
整理番号 495
ジャンル 日本史
定価 799円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2013/05/24

吉良邸討ち入りに費やされた軍資金は「約七百両」──武器購入費から潜伏中の会議費、住居費、飲食費に至るまで、大石内蔵助は、その使途の詳細を記した会計帳簿を遺していた。上野介の首を狙う赤穂浪士の行動を金銭面から裏付ける稀有な記録。それは、浪士たちの揺れる心の動きまでをも、数字によって雄弁に物語っていた。歴史的大事件の深層を一級史料から読み解く。「決算書」=史料『預置候金銀請払帳』を全文載録。

著者プロフィール

山本博文 ヤマモト・ヒロフミ

1957(昭和32)年、岡山県生まれ。東京大学史料編纂所教授。近世政治史を中心に、参勤交代や切腹などの制度に隠れた、新たな江戸時代像を提示。また、日本史全体の学び方にもさまざまな提言をしている。著書に『歴史をつかむ技法』『「忠臣蔵」の決算書』などがある。

目次

はじめに
序章 赤穂事件と「決算書」
基礎史料と事件の経過/忠義だけで首は取れたか/『金銀請払帳』という史料/貨幣制度と金・銀・銭の換算比率
第一章 お取り潰しの清算処理
1 藩札の償還と財産の処分
外様中藩の財政規模/城明け渡しの決定/藩札と岡山藩「忍頭」の報告/藩と藩士たちの財産売却

2 藩士の身分と退職手当
藩主個人との距離/上級藩士――家老・番頭クラス/中級藩士――物頭・馬廻クラス/下級藩士――中小姓から足軽まで/下級の者に配慮した退職手当/残務処理を終えて

3 四十七士の身分と役職
少ない上、中級家臣の参加/むしろ多い下級家臣の参加/討ち入り参加者の特徴/新参者と元藩士
第二章 軍資金と浪人生活
1 藩の「余り金」と瑤泉院の「化粧料」
軍資金の出所/『金銀請払帳』の原本調査

2 巨額の仏事費と政治工作費
亡君の菩提を弔う/御家再興の政治工作費/その他の出費

3 難儀する無職生活
旧藩士の身の振り方/堀部親子の裏店暮らし/行く末への「覚悟」と「借金」と「商売」/月三万円で命をつなぐ/再仕官の悲劇と裏切り
第三章 討ち入り計画の支出項目
1 上方と江戸の往復旅費
続々と江戸へ下向/暴発阻止の江戸派遣/内蔵助も江戸へ/江戸アジトの購入費

2 同志たちへの手当
上方同志の生煮え/五十五両の逗留費用/安兵衛の焦り/内蔵助の慰撫/「飢渇」に及ぶ同志/安兵衛の出京/内蔵助の「遊興」/分派行動への出金

3 江戸への片道切符
金一両の京都・円山会議/「神文返し」と残金二百両/中枢家臣グループの脱盟/最後の旅費は一人三両/元藩医への依頼
第四章 討ち入りの収支決算
1 江戸の生活と武器購入
同志たちの江戸集結/借宅住まいの家賃補助/「飯料」と「拠なき入用」/討ち入り道具の購入

2 決算書の提出
討ち入り直前の飛脚/提出された他の帳簿/軍資金の本当の出所/瑤泉院様の「利銀」

3 吉良邸討ち入り
直前の脱盟者/計画通りの討ち入り/幕府大目付の尋問

4 四十六士の命の決算
お預け先と身分の上下/四十六士の覚悟/遺児たちへの処罰/吉良左兵衛の処分/赦免と復権
終章 一級史料が語るもの
軍資金の使途内訳/軍資金の効用/討ち入り遅延への批判/赤穂事件の再評価
おわりに
主要参考史料一覧
史料『預置候金銀請払帳』

担当編集者のひとこと

一級史料を読み解く楽しさ

「〇〇文書を新発見!」、「△△遺跡から××を新発掘!」などで、歴史像が塗り替えられることは、皆さんもよくご存知でしょう。歴史学においては、なんと言っても新史料の発見、発掘は重要なもののようです。
 専門家でもなんでもない私たちまでが、「へえー。そんなことが……」と、新発見、新発掘のニュースに驚かされ、歴史のロマンに興奮させられることも少なくありません。
 しかし、歴史像を変えるのは、なにも新発見史料ばかりではないようです。従来から知られている史料でも、丹念に読み解き、他の複数の史料を組み合わせれば、まだまだ歴史上の発見が可能なようです。また、なかには見過ごされた「一級史料」というものもあるようです。

 本書で取り上げるメインの史料は、「預置候金銀請払帳」というものです。
 なんと、あの大石内蔵助が遺した会計帳簿です。赤穂藩の取り潰しから吉良邸への討ち入りまで、赤穂浪士たちが吉良の首を取るまでに使った費用の一切が記録されているという興味深いものです。
 そんな史料があると聞き、私は驚いてしまいましたが、じつはこの史料は新発見史料などではありません。それどころか、赤穂事件を研究している専門家であれば、誰でも知っている史料なのだそうです。しかも、史料としての信頼性が高いことから、関係論文では必ずと言って良いほど、引用や言及がなされる一級史料だといいます。
 読者の皆さんの中にも、この史料のことをご存知だった方がちらほらといらっしゃることでしょう。 この史料によって、潜伏中の赤穂浪士たちの住居費、食費、会議費、旅費、さらには討ち入りのための武器購入費まで、その使途が明らかになります。大石が用意した軍資金の総額は「約700両」(現代の価値にして約8400万円)で、そこから支出されたのは、江戸と上方の間の旅費が金三両(同約36万円)、鎗の購入費が金二分(同6万円)、長刀が金一両(同12万円)……、と記載はじつに具体的です。
 ところが、どうもこれまでの赤穂事件の研究において同史料の扱いは、ありていに言って部分部分の「良いとこ取り」で、この史料を主体とする研究があまりされてこなかったのです。
 ここにメスを入れたのが本書ですが、この「知る人ぞ知る一級史料」を検討すると、新発見が次々にあったのです。

「預置候金銀請払帳」は、討ち入り費用の個々の使途とその金額を記しただけのものですから、文書内容そのものはごく単純なものです。しかし、単純なものだけに、史料としては客観性が高く、そこから赤穂浪士たちの行動や心情が読み取れることが少なくありません。
 ・大石が、当初は討ち入りなど考えていなかったこと、
 ・元禄十五年十二月には、もはや討ち入りが延期できない状態だったこと、
 等々の事実が、この史料からは明らかになっていきます。
 そして何よりも明白になるのは、討ち入りにおける「資金」の重要さです。いかに大石がこの軍資金を巧みに使って、討ち入りを成功させたかが、史料の1行1行から伝わってきて、次第に手に汗を握るようになります。本書のキャッチフレーズは、「忠義だけでは、首は取れない」ですが、まさに綺麗事だけでは読み解けない、「赤穂事件の深層」が見えてきます。
 本書の巻末には、「預置候金銀請払帳」の全文を載録しています。本当に、歴史の素人でも内容が読み取れる簡略な文書です。しかし一方で読み取れる歴史的事実は広大です。本物の史料に触れて、これを味わいながら、そこから知る歴史を楽しまれることを願っています。

2012/11/22

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