男の貌―私の出会った経営者たち―
748円(税込)
発売日:2013/01/17
- 新書
- 電子書籍あり
そこには、いつも勁(つよ)さと優しさがあふれていた。経済小説の第一人者が贈る骨太のリーダー論。
「勁さ」と「優しさ」を持つ者が、真のリーダーである──。なぜ日本ではリーダー不在がつづくのか? 本当に人材はいないのか? 長年にわたって数多くの経営者たちの姿を見つめてきた経済小説・企業小説の第一人者。その眼が捉えた本物のリーダーの姿とは。“財界鞍馬天狗”の異名をとった中山素平をはじめとして、昭和時代を担った男たちの素顔と実像を伝えながら、漂流する現代日本の病巣を撃つ入魂の全6章。
書誌情報
読み仮名 | オトコノカオワタシノデアッタケイエイシャタチ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 192ページ |
ISBN | 978-4-10-610503-6 |
C-CODE | 0234 |
整理番号 | 503 |
ジャンル | ビジネス人物伝 |
定価 | 748円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2013/07/26 |
担当編集者のひとこと
小説のモデルと作家の闘い
小説のモデルになる人とは、どんな方でしょうか。多くは、亡くなってから少なくとも十数年以上にもなる、人物評価も定まった「歴史上の人物」たちでしょう。
ところが、経済社会や企業組織を活き活きと描いて、経済小説・企業小説の世界を牽引し続けている作家の高杉良氏は、そのモデルのほとんどを「現役の経営者」に求めて、現代社会の生々しいダイナミズムを作品に描き込んできました。
しかし、これは想像以上に難しいことです。
いくら魅力ある経営者でも、そのモデルの美点を描くだけでは、作品の勢いもリアリティーも殺がれて読者を裏切ることになりますし、かといってその「負の面」を遠慮会釈無しに好き勝手に書いてしまっては、ドラマ性もかえってしぼみ、酷いときにはモデルとの訴訟沙汰にもなりかねません。小説のモデルの大多数が「歴史上の人物」なのも、これが主な理由の一つでしょう。
しかし、高杉氏は入念かつ綿密な取材と、モデルとなる経営者との間に築き上げた人間関係で、この微妙な「綾」を乗り越え、傑作を産み出し続けているのです。
本書は、リーダー不在の日本社会へ警鐘を鳴らすべく、昨今の世を騒がせている「マガイモノ」の似非リーダーや俄かリーダーではなく、高杉氏がこれまで出会ってきた本物のリーダーたちの実像を伝えることを主眼としています。高杉氏だけが知る名経営者たちのエピソードの数々は、小説とはまた違った形で、「リーダーとはどうあるべきか」を私たちに真剣に問いかけてきてくれます。
財界鞍馬天狗の異名をとった中山素平氏をはじめ、登場する経営者たちの豊かで魅力ある人間性はもちろん、新書でもあえて彼らの「負の面」まで伝えるところが高杉節です。詳しくは本書を読んでいただくとして、「負の面」がありながらも、それを律することが出来たところに、高杉氏の評価するリーダーたちの真骨頂があったのだと、きっと理解していただけることでしょう。
そして本書は、名経営者たちの実像を伝えるとともに、そうした人々を描いてきた一人の作家の闘いの記録にもなっています。とくに本書の第五章「『悪』を描くとき」は必見。作家と「悪役のモデル」たちとの攻防がじつにスリリングです。
いろんな視点から楽しめる一書をどうぞ手におとり下さい。
2013/01/25
著者プロフィール
高杉良
タカスギ・リョウ
1939(昭和14)年、東京生れ。石油化学専門紙記者、編集長を経て、1976年『虚構の城』で作家デビュー。以来、経済界全般にわたって材を得て、綿密な取材に裏打ちされた問題作、話題作を次々に発表している。主な作品に『小説 日本興業銀行』『労働貴族』『広報室沈黙す』『燃ゆるとき』『王国の崩壊』『金融腐蝕列島』『不撓不屈』『乱気流』『挑戦 巨大外資』『反乱する管理職』『青年社長』『破戒者たち』『人事の嵐』『第四権力』『小説ヤマト運輸』『めぐみ園の夏』『破天荒』『転職』等がある。