社会脳とは何か
814円(税込)
発売日:2013/08/10
- 新書
- 電子書籍あり
世渡りも、人間関係も「脳」次第。若き科学者が挑む社会脳研究の最前線!
ヒトの大きな脳が作り上げた「社会」は、私達の生きる基盤でもあり、悩みのタネでもある。この社会という厄介な問題を脳はどう処理しているのか。その謎を解く鍵は「社会脳」にある。なぜ他人の視線が気になるのか。赤ちゃんは生きる術をいかにして身につけるのか。ネットで誤解が生じやすい理由とは――ロンドン在住の若き科学者が、自らの軌跡と共に「社会脳」研究の最前線を平易に説く。知的興奮に満ちた一冊。
書誌情報
読み仮名 | シャカイノウトハナニカ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 240ページ |
ISBN | 978-4-10-610533-3 |
C-CODE | 0245 |
整理番号 | 533 |
ジャンル | 心理学、サイエンス・テクノロジー |
定価 | 814円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2014/02/21 |
蘊蓄倉庫
『社会脳とは何か』の著者、千住淳さんは、本のタイトルにもある「社会脳」の研究者です。その研究の過程で、千住さんは「あくび」に関する研究も手がけました。あくびがうつる、というのは俗説ではなくて、実際にそうした現象は人間のみならずチンパンジーなどにも見られるものです。
千住さんが、「自閉症児にあくびがうつるか」というテーマの研究をしたところ、一般児童と比べてうつりにくい、という結論が出ました。なぜそうなるのか、については説明が長くなるので本書をお読み下さい。
ちなみにこの研究は世界中のメディアで報道され、千住さんはパリで行われた「第1回国際あくび会議」にも招待されることになりました。
担当編集者のひとこと
ネットのトラブル
『社会脳とは何か』の中に、「ネットでトラブルが起きやすいのはなぜか」という項があります。
その一部を引用します。
「相手の視線や表情、しぐさや声の抑揚などの情報を素早く読み取り、自発的に反応する社会脳の働きは、普段意識している以上に、他者との関わりやコミュニケーションに大きな役割を果たしている可能性もあります。例えば、インターネットやメール、ソーシャルネットワークなどを介したコミュニケーションで誤解や行き違いが生じやすいのは、相手の顔が見えず、声も聞えないため、私たちが普段意識せずに使っている相手の視線や表情、自分の動きに対する相手の反応などの情報が使えないことによるのかもしれません」 たしかに、普段話している時には気持ちのいい人なのに、メールになると何となくイヤな感じ、ということはよくあります。とても人当たりのいい人が、妙に攻撃的なメールを送ってきたので、「怒らせたのかなあ」と思っていると、全然そんなこともなく、単にメールの文章だけが変わった人だったなんてこともありました。
本書は、ヒトの脳が社会というものをどう処理しているのか、という謎を解く鍵を握る「社会脳」についての入門書です。なぜ他人の視線が気になるのか。ヒトの白目はなぜ大きいのか。あくびはなぜうつるのか。さまざまな身近な問いを考えながら、「社会脳」研究の初歩から最前線までを、とてもわかりやすく解説しています。科学関連の「入門書」のお手本のようなものになっていると思います。
ちなみに、実は本の編集過程において、担当者と著者は一度も顔を合わせていません。依頼、打ち合わせ、修正等の作業は、すべてメールでのやり取りで済ませました。
著者がロンドン在住という事情が第一の理由ですが、実のところこの本に関してはメールでのやり取りだけで極めてスムーズに事が進んでしまったのです。メールゆえの行き違いやトラブルも皆無。
おそらくこれは赤ちゃん相手の実験も多く、社会脳研究の最前線に立つ著者のコミュニケーション能力の高さゆえだったのだろう、と思っています。そして、過去のメールでの不快なやり取りの発端は自分だったのかもしれない、と思い反省もしております。
2013/08/23
著者プロフィール
千住淳
センジュウ・アツシ
1976(昭和51)年長崎県生まれ。ロンドン大学バークベックカレッジリサーチフェロー。東京大学大学院総合文化研究科修了、博士(学術)取得。専門は発達社会神経科学。東京大学総長賞、日本心理学会国際賞奨励賞、英国心理学会ニールオコナー賞等を受賞。著書に『社会脳の発達』。