戦犯の孫―「日本人」はいかに裁かれてきたか―
770円(税込)
発売日:2014/02/15
- 新書
- 電子書籍あり
罪をいつまで背負わなければならないのか。「東京裁判」から「靖国参拝」問題までの根源に迫る。
「戦犯」の末裔たちはどのように生きてきたのか。敗戦で個人に背負わされた“黒い烙印”は、その一族にどのような影響を与えてきたか。東条英機、土肥原賢二、広田弘毅、東郷茂徳という「A級戦犯」の孫たちの生々流転から、アジア地域での知られざる「BC級戦犯」の生き様までを掘り起こし、戦後から現在まで「国家と個人」の狭間で苦悩する末裔たちの宿命を、若き俊英が丹念な調査のもとに活写する問題作。
六歳の敗戦/強い首相/伊東/東京/平成/公のために
II 土肥原賢二の孫
中国通/敗者
III 広田弘毅の孫
異彩/虚実
IV 東郷茂徳の孫
外交敗北/三世外交官/「戦後最大の外交敗北」
小結
オランダの裁き/独立戦争/残留日本兵(一)/兵補の告発/生きて帰れぬニューギニア/フランスの裁き/残留日本兵(二)
II アジアの裁き
二つの中国の相克/残留日本兵(三)/フィリピン大統領の決断/あるC級戦犯の話
III 帝国の烙印
戦犯になったアジア人/ある台湾人戦犯の話/戦後補償を求めて/ある朝鮮人戦犯の話/歴史になりきらない過去
結
主要参考文献
年表
書誌情報
読み仮名 | センパンノマゴニホンジンハイカニサバカレテキタカ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610556-2 |
C-CODE | 0221 |
整理番号 | 556 |
ジャンル | 日本史 |
定価 | 770円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2014/08/22 |
蘊蓄倉庫
戦犯は、「A級」「B級」「C級」と区分されています。
「A級戦犯」は、東条英機をはじめ、28名の著名な人物が指定されました。
この「A・B・C」級は、あくまで犯罪や容疑での分類であり、戦争時の階級を表すものではありません。
「A級」は、ニュルンベルク裁判所憲章に照らして、侵略戦争または条約に反する違反戦争の共同謀議、その計画から遂行といった「平和に対する罪」を犯した者たちを指しています。東京裁判で訴追された「戦争指導者」と見なされる人々が、これにあたります。
一方、「B級」は、ハーグ条約、赤十字条約、ジュネーブ条約などで禁止事項とされていた集団殺害、一般人への拷問、強姦、捕虜虐待など「通例の戦争犯罪」に対する指揮、命令、防止義務違反などの責任を犯したといわれる者であり、「C級」は「通例の戦争犯罪」に対する実行者としての責任を問われた者で、各地の軍事法廷で裁かれた人々のことを指す場合が多いのです(海外の裁判や国内では横浜での裁判など)。
ただし、実際のところ、「B級」「C級」のちがいは曖昧なのだそうです。
担当編集者のひとこと
1984年生まれの俊英がひたむきに迫る「戦犯とその子孫」
『戦犯の孫―「日本人」はいかに裁かれてきたか―』の著者で、日本学術振興会特別研究員の林英一氏は、1984年生まれの若き研究者です。
慶應義塾大学塾長賞や日本学術振興会育志賞など、多くの学術賞を受賞し、慶應大学で教壇にも立たれています。
林氏は、10代から戦争体験者や戦後補償裁判の聴き取りを行い、慶應大学在学時にはインドネシアで出会った元日本兵の老人の語りに触発され、その調査や取材の末に、『残留日本兵』という著作をものしています。
『戦犯の孫』では、戦犯について丹念に調査し、「戦犯とは何か」という基礎情報から、東条英機をはじめ、土肥原賢二、広田弘毅、東郷茂徳など「A級戦犯」の子孫たちの流転の遍歴を辿っています。特に、広田弘毅のお孫さんは貴重な告白をなさっています。
また、海外で生きる「BC級戦犯」たちの肉声や知られざる戦犯裁判の真相、また、「日本人」とした裁かれた他国の人々の生き様などを、広範な踏査や深い探究心によって活写しています。
戦犯という、「東京裁判」から「靖国参拝」問題までの根源にひたむきに迫った、若き俊英の力作です。ぜひご一読ください。
2014/02/25
著者プロフィール
林英一
ハヤシ・エイイチ
1984(昭和59)年、三重県生まれ。慶大卒。日本学術振興会特別研究員・慶大SFC訪問研究員兼非常勤講師・早大OAS招聘研究員・大経法CAPP客員研究員。著作に『残留日本兵の真実』『皇軍兵士とインドネシア独立戦争』『残留日本兵』など。