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1949年の大東亜共栄圏―自主防衛への終わらざる戦い―

有馬哲夫/著

858円(税込)

発売日:2014/06/16

  • 新書
  • 電子書籍あり

「この国を守る」――そう信じて戦い続けた男たちがいた。【発掘資料をもとに描く驚愕の昭和裏面史!】

一九四九年、中国・山西省でまだ日本兵たちは戦っていた。彼らだけではない。帰国した大本営参謀、軍人や児玉誉士夫らは、「理想」の実現を諦めずに戦い続けていたのである。ある者はアメリカと手を結んで反共活動に身を捧げ、ある者は日本軍復活のために奔走し、ある者は政界工作に突き進んだ。その活動はいつしか、東アジア全体へと波及していく。CIA文書など発掘資料をふんだんに使いながら描く、戦後の裏面史。

目次
プロローグ──四枚の絵
第一章 敗れざる者たち──一枚目の絵
敗戦から四年たってなお中国で日本兵たちは戦っていた。
いち早く帰国した指揮官は、更に大きな作戦に着手する。
第二章 国民党の参謀となった大本営参謀──二枚目の絵
アジアから極秘帰国した元陸軍大佐・辻政信。
石原莞爾の理想を実現すべく、再び彼は工作に乗り出した。
第三章 国防再建と秘密機関──三枚目の絵
祖国を共産主義者から守るためには軍隊が必要だ。
総理大臣を目指す宇垣一成の下に大本営参謀たちが集結する。
第四章 国粋主義者たちの祖国再建──四枚目の絵
数々の秘密工作に関与してきた児玉誉士夫。
自らの潤沢な資金を背景に天皇制保持のための戦いを開始した。
第五章 「国際義勇軍」と警察予備隊──大きな絵
山西残留軍救出のために台湾の国民党を支援せよ。
その動きは壮大な反共のための参謀団、義勇軍へとつながっていく。
第六章 宇垣派を分裂させた朝鮮戦争──分かれていく絵
マッカーサーの命令で警察予備隊が発足。
再軍備が現実化する一方で、吉田茂は旧軍人たちの力を殺いでいった。
第七章 遠ざかっていく自立自衛──絵にならなかった絵
日本が完全な独立国となるには強大な国防軍が必要だ。
大本営参謀たちのこの構想をアメリカは認めなかった。
第八章 しのびよる戦後──フェードアウトする絵
秘密機関が解体される中、児玉は孤独な戦いを続ける。
しかし、政治家たちの思惑はもはや別のところにあった。
エピローグ──未完の自立自衛

あとがき

注釈/参考・引用文献

書誌情報

読み仮名 センキュウヒャクヨンジュウキュウネンノダイトウアキョウエイケンジシュボウエイヘノオワラザルタタカイ
シリーズ名 新潮新書
雑誌から生まれた本 新潮45から生まれた本
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 256ページ
ISBN 978-4-10-610573-9
C-CODE 0221
整理番号 573
ジャンル 日本史
定価 858円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2014/12/19

蘊蓄倉庫

1949年の武力行使

「憲法9条のおかげで日本は戦争をしなかった」というような話をよく耳にしますが、実際には1949年になっても中国で戦闘行為に参加していた日本人は沢山いました。山西省では、「特務団」として元日本軍人たちが中国共産党と戦っていたのです。
『1949年の大東亜共栄圏』では、戦後なおも戦い続けていた元軍人や政商らの動きを追った昭和の裏面史です。彼らを動かしていたのは、「この国を守る」という強い使命感です。
 それを正しいと思うか、おかしいと思うか。ご一読の上、ご判断ください。
掲載:2014年6月25日

担当編集者のひとこと

軍人たちは戦後も戦い続けていた

 このところ「集団的自衛権」についての報道が増え、国会やメディアにおいても、よく議論されています。
 その是非については、色々な考え方があると思うのですが、ちょっと気になるのは「戦後、平和憲法になってから、海外で武力行使をしていないことが日本の誇りだ」という主張です。当然、こういう主張は「行使容認反対派」の方に多く見られます。
 何が気になるかといえば、「海外で武力行使をしていない」という点です。
 本書『1949年の大東亜共栄圏』は、タイトル通り、1949年頃の日本について描いたものです。
 当時、日本人が何をしていたか。
 たとえば、ある元日本軍人だちは中国の山西省で「特務団」として、中国共産党と戦闘を行っていました。特務団には、敗戦直後は1万5000人もいたのが、1949年には1600人ほどになっていたそうです。それでも大変な人数の日本人兵士が、異国の地で戦っていたのです。この場合の「戦い」は比喩ではなくて、本当に武器を使って戦闘行為を繰り広げていました。
 他にも、元軍人たちは、中国共産党と戦っていた中国国民党のために軍事アドバイスをするグループを結成し、現地で指導を行っています。このグループは白団と呼ばれ、1960年代まで活動をしていました。
 こういう行為が良いか悪いかについてはまた議論が分かれるところでしょうが、事実として戦後も海外で何らかの戦闘にかかわっていた日本人は多くいたのです。
 せっかく平和になったのに、何でそんなことをしていたのか。
 疑問に思われる方は、ぜひ本書をお読みください。
 平和というものは一筋縄ではいかないということがよくわかります。

2014/06/25

著者プロフィール

有馬哲夫

アリマ・テツオ

1953(昭和28)年生まれ。早稲田大学社会科学総合学術院教授(公文書研究)。早稲田大学第一文学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。2016年オックスフォード大学客員教授。著書に『原発・正力・CIA』『日本人はなぜ自虐的になったのか』など。

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