ぼくは眠れない
792円(税込)
発売日:2014/11/17
- 新書
35年間、不眠症。一部始終を初めて告白。
ガバッと起きると午前二時、それが不眠生活の幕開けだった。毎夜同じ時刻に目が覚めて、眠れないまま朝になる。七十歳にして探険旅行に挑み、ビールだけは欠かさぬ豪快さの持ち主には三十五年にわたる孤独な「タタカイ」があった。発端となった独立騒動、はかられた精神科受診、手放せない睡眠薬、ストーカー事件のトラウマ、眠気をさそう試行錯誤等を初めて告白。果たして「やわらかな眠り」は取り戻せるのか。
主な参考文献
書誌情報
読み仮名 | ボクハネムレナイ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
雑誌から生まれた本 | 新潮45から生まれた本 |
発行形態 | 新書 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610593-7 |
C-CODE | 0295 |
整理番号 | 593 |
ジャンル | エッセー・随筆、ノンフィクション、暮らし・健康・料理 |
定価 | 792円 |
蘊蓄倉庫
椎名誠さんが、同じく不眠の悩みを抱える知人から「効果的」と聞いて取り寄せたのがバスソルトでした。フランスのブルターニュの海水に手を加え原始海水に近い状態に結晶化させたもの……豪快な椎名さんのイメージとなんだかマッチしませんが、それを溶かした塩風呂につかるのだそうです。それも最低12分間。しかし初回は誤って大量にソルトを入れたため、湯船からあがるとき倒れかけ、ベッドに横たわったら記憶なしという事態に。翌朝は「痛風」症状にもおそわれました。でも確かに眠れるわけです。以降はお風呂の前後に大量の水を飲むこととし、真面目にソルト風呂を実践しているそうです。
担当編集者のひとこと
作家生活35年、不眠症歴35年。
「孤独で押しつぶされそうな夜もある」――これが椎名誠さんのインタビューなのかと、思わず誌面を見直しました。でも著者名も写真も、椎名さんで間違いありません。不眠のつらさを吐露した記事(「中央公論」2012年1月号)を読み終えたときには、ぜひ一部始終を書いて頂きたいという気持ちでいっぱいになっていました。焚き火と仲間とビールがいちばん似合う作家が、人知れず闘ってきたというのですから。
担当編集が興味を惹かれたのには、「眠れない」が肌感覚として分からないということもありました。眠気に負けてやるべきことをやれない日の方が多いですし、以前父親が「眠れないんだよ」とつぶやくのを聞いてなんとも言えない思いがしました。
しかし、椎名さんから頂いた原稿で明かされたのは、34歳まで不眠と無縁だったという事実でした。毎晩バタンキューという人でも、いつ不眠におそわれるかは分からない。ならばもう他人事ではありません。
2014年11月16日、椎名さんは作家デビュー35周年を迎えました。じつは不眠症歴も35年。サラリーマンだった椎名さんが、作家として独立するかどうかという迷いが不眠生活の引き金になったのだそうです。35周年記念のトークショーの挨拶で、椎名さんは眠れぬ夜について触れていました。
「眠れなくて仕方がないから、原稿を書くんですね。そうしたら250冊も出してしまいました。発売になったばかりの『ぼくは眠れない』はね、オビの『不眠症』がタイトルより大きくてどうかと思いますが、251冊目の本です」
椎名ファンにも、不眠を抱えている方にも、新しい発見のある一冊です。
2014/11/25
著者プロフィール
椎名誠
シイナ・マコト
1944(昭和19)年、東京生れ。東京写真大学中退。流通業界誌編集長を経て、作家、エッセイスト。『さらば国分寺書店のオババ』でデビューし、その後『アド・バード』(日本SF大賞)『武装島田倉庫』『銀天公社の偽月』などのSF作品、『わしらは怪しい探検隊』シリーズなどの紀行エッセイ、『犬の系譜』(吉川英治文学新人賞)『岳物語』『大きな約束』などの自伝的小説、『犬から聞いた話をしよう』『旅の窓からでっかい空をながめる』などの写真エッセイと著書多数。映画『白い馬』では、日本映画批評家大賞最優秀監督賞ほかを受賞した。