
墓と葬式の見積りをとってみた
770円(税込)
発売日:2015/02/16
- 新書
- 電子書籍あり
結局、いくらかかるのか? 徹底取材をもとにした前代未聞のハウツー・ノンフィクション。
幸い両親はまだ元気だ。しかし、だからこそ今のうちに「その時」の準備をしておきたい。そう考えた著者は取材に出かけた。人気の樹木葬や、都心部の有名霊園に入るにはいくらかかるのか。散骨、宇宙葬、土葬の実態は。葬儀社の良し悪しはどこで見分けるか。時に遺された人たちの死生観にしんみりし、時に「入棺体験」をして悲鳴を上げながら現代日本の「墓と葬式」事情をとことん掘り下げたハウツー・ノンフィクション。
1 死んで土に還る樹木葬
永代供養墓は子孫なしでも無縁化しない
内縁の配偶者、ペット、同性愛者の待遇
房総半島の樹木葬は一人七十万円
お金のことは躊躇せずに質問を
都心の樹木葬霊園事情
都立霊園ならば一人四万三千円から
なぜ樹木葬や納骨堂が人気なのか
有名霊園の厳しい倍率とコスト一覧
墓石の種類、価格のいろいろ
良質な石材店で良質な石材を購入するには
海洋散骨には三タイプある
散骨はこんなふうに進む
江ノ島沖の散骨クルーザーに体験乗船
海外での散骨は三十万~四十万円
勝手な散骨は違法になる
トラブルが多発している陸の散骨
経済的な理由で散骨を選ぶ層も
作家、桐島洋子さんが世界中で散骨する理由
納骨堂の老朽化が進むと遺骨はどうなる
親子で「手間」についての意識が異なる
公営の納骨堂はどうなっているか
骨をアクセサリーにする
太陽系の外に葬られたい!
土葬をするには理由がある
おばあさんを埋めたらおじいさんが現れた
離れるお寺には誠意をもって相談しよう
墓地や霊園の経営母体をチェックすべし
生き方次第で葬られ方も違う
1 理想的なお葬式とは?
父親の最期には考え得る最高の演出をしたい
生前相談を利用し、相見積りをとろう
ぴんぴんしている両親の葬式の見積り
お布施の相場はいくらか
遺された人たちに映像でメッセージを贈る
生前映像制作は三十万円くらいから
生きたまま棺に入ってみた
生きたまま棺に入ると長生きできる?
ヘア&メイクして遺影を撮影してみた
互助会やJAのお葬式
優良な葬儀社と出会うチェックポイント
丹波哲郎さんは「セックスと天国」を語った
自分のお葬式を見ることができるか
主な参考文献
書誌情報
読み仮名 | ハカトソウシキノミツモリヲトッテミタ |
---|---|
シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 192ページ |
ISBN | 978-4-10-610607-1 |
C-CODE | 0277 |
整理番号 | 607 |
ジャンル | 常識・マナー |
定価 | 770円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2015/08/14 |
蘊蓄倉庫
東京都内には「有名霊園」とされるものがいくつかあります。中でも有名なものの一つが青山霊園です。大久保利通、犬養毅、尾崎紅葉、中江兆民等々、教科書に出てくるような方々が眠っているこの地に死後入るにはどうすればいいのでしょうか。『墓と葬式の見積りを取ってみた』にはその具体的な方法が書いてあります。
当然ながら、かなりの狭き門になっているのが現状です。墓地が購入できるのは東京都内に5年以上住んでいる人のみで、応募者から抽選で選ばれます。抽選の倍率は10~20倍。墓地の価格は1平方メートルあたり271万4000円とかなり高額です。
有名人と友人になるのには、それなりの覚悟とお金が必要なようです。
故人が語るお葬式
結婚式で新郎新婦に関するムービーが流されることはもう珍しくもなんともありませんが、葬儀にもこの流れが来ているそうです。『墓と葬式の見積りをとってみた』の著者が取材した映像製作会社によれば、「メモリアル映像 30万円」「インタビュー付き映像 40万円」「メモリアル映画 80万円」。
「メモリアル映画」とは、本人の記憶をもとに脚本を作り、人生をドラマ化したもので、プロの俳優、脚本家、カメラマン等スタッフが丁寧に作ってくれるのだそうです。
生前にこの「映画」を毎日のように見て楽しむ人もいるとのことです。
担当編集者のひとこと
考えるのを避けたいことなので
墓と葬式のことについて考えるのは気が重い。
これは普通の反応でしょう。
なかには、自分の理想の葬式や墓について夢を持って、着々と手を打っている人もいるのでしょうが、おそらくは少数派。少なくとも私は考えるのを避けてきたところがあります。いずれ夏休みが終わるのはわかっているのに、絵日記を見るのを避けるようなものでしょうか。
その点、『墓と葬式の見積りをとってみた』の著者、神舘和典氏は立派です。まだ両親はご健在なのに、「その時」に備えてあれこれ調べて、最終的には1冊の本にまとめてしまったのですから。
ありがたいことに、この本には、私のような臆病かつ怠け者が知っておくべき情報が網羅されています。今の霊園はどんなものがあるのか。葬儀社の良し悪しはどこで見分けるべきか。著者自身が体当たりで取材しているうえに、どこかユーモラスな筆致なので、すいすいと読み進めることができます。
オマケのようについている「死後の世界」に関する考察も、かなり興味深いものがあります。紹介されている丹波哲郎さんと鈴木ヒロミツさんとの対話には笑いながらも何となく心が温まる気持ちになりました。
丹波さん「ヒロミツ、天国はな、そりゃあ、素晴らしいところだぞ」
鈴木さん「ホントですか?」
丹波さん「本当だとも。その証拠に、誰一人としてこっちの世界に帰ってこない」
深刻にならずに、「墓と葬式」を考えておきたいという方はぜひご一読ください。
2015/02/25
著者プロフィール
神舘和典
コウダテ・カズノリ
1962(昭和37)年東京都生まれ。雑誌および書籍編集者を経てライター。政治・経済からスポーツ、文学まで幅広いジャンルを取材し、経営者やアーティストを中心に数多くのインタビューを手がける。中でも音楽に強く、著書に『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』など。