習近平の中国
836円(税込)
発売日:2015/05/18
- 新書
- 電子書籍あり
習近平を最もよく知る元大使による一級の分析(インテリジェンス・レポート)。
猛烈な反腐敗闘争、戦後秩序を揺さぶる外交攻勢、急減速する経済の立て直し──。二〇一二年の総書記就任以来、習近平は猛烈なスピードで改革を進めている。基本的な方向性は間違っていない。しかし、まさにその改革によって、共産党一党支配の基盤は崩れていかざるを得ない。危ういジレンマに直面する中国は今後、どこに向かうのか。中国大使をつとめ、習近平を知悉する外交官が描いた「苦闘する超大国」の実情。
書誌情報
読み仮名 | シュウキンペイノチュウゴク |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 240ページ |
ISBN | 978-4-10-610619-4 |
C-CODE | 0231 |
整理番号 | 619 |
ジャンル | 政治、外交・国際関係 |
定価 | 836円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2015/11/13 |
蘊蓄倉庫
日本に暮らしている日本人にとって、「中国脅威論」は当然にも思える感覚ですが、当の中国人たちはなぜ中国脅威論が世界で高まっているのかが理解できないそうです。著者の宮本さんによると、これは中国人のものの考え方が理由だと言います。
その中国人の考え方とは「中国の国策は平和と発展であり、世界の平和と発展のために大国としての責任を果たす。ただし、領土や主権、海洋権益といった中国の生存と発展のために不可欠なものについては一切譲歩しない」というもの。つまり、中国人の中では、自国の核心的な利益を守ることと、世界の平和と発展のために努力することの間に矛盾が生じない。その立場からは、中国が自国の権益を守るのは当然で、それに挑戦してくる相手が悪いのだから、世界の平和と発展を損なっているのは相手側である、という理屈になってしまうのです。
中国人には、その「核心的利益」の主張がそもそも自分勝手であるという発想がないので、「中国脅威論」がぴんとこないのだそうです。
担当編集者のひとこと
習近平と最も多く会食した外交官
2012年の総書記就任以来、習近平は激烈な反腐敗闘争を展開しています。これまでに標的になった人物には、胡錦濤前政権の「官房長官的立場」だった党中央弁公庁主任(令計画)、軍人のトップである党中央軍事委員会副主席(徐才厚、郭伯雄。主席は習近平)、公安畑のトップである党中央常務委員(周永康)などがいます。まさに権力の中枢を狙い撃ちにしていて、これまでの中国共産党の常識ではありえないほどの激しさです。
習近平がこれほどまでに反腐敗闘争を展開しているのは、そうしないと中国共産党の統治がもたないと考えているからですが、反腐敗闘争に代表されるさまざまな「改革」は、深刻な矛盾をはらんでもいます。つまり、改革が進めば進むほど、共産党の統治の正当性が問われることにもなるのです。
進むも地獄、退くも地獄。その危ういナローパスを、習近平の中国はどのように進もうとしているのか。それを対中国外交の最前線で活躍した元大使が分析したのが本書です。
著者の宮本雄二氏は、2006年から2010年にかけて駐中国大使を務めました。宮本氏は2007年、まだ浙江省の党書記を務めていた習近平といち早く会食し、この年だけで3度会食の場を共にしています。後に習氏本人から「私と最も多く会食した外交官」と言われるようになってもいます。
日本とは比べものにならないほど激しい権力闘争を展開している中国の政治家たちと深く付き合い、彼らの思考パターンを熟知する宮本氏の分析は、それ自体が一級のインテリジェンス・レポートと言えます。「彼らの立場だったらどうするか」を疑似体験しつつ、一種ロールプレイングゲームのような感覚でお読み頂ければ幸いです。
2015/05/25
著者プロフィール
宮本雄二
ミヤモト・ユウジ
1946(昭和21)年福岡県生まれ。宮本アジア研究所代表。1969年京都大学法学部卒業後、外務省入省。1990年アジア局中国課長、2006年在中華人民共和国日本国大使館特命全権大使。2010年退官。著書に『習近平の中国』『強硬外交を反省する中国』など。