「昔はよかった」病
814円(税込)
発売日:2015/07/17
- 新書
- 電子書籍あり
「昔は安全だった」「絆と人情があった」「みな礼儀正しかった」――
日本人はなぜ過去を美化するのか?
「昔はよかったね」――日本人はそう言って今を嘆き、過去を懐かしむばかりだ。昔は安全だったのに、子どもは元気だったのに、地域の絆があったのに、みな勤勉だったのに……。しかしそれは間違いだ。捏造された追憶、あるいは新しいものを否定する年長者のボヤキにすぎない。資料を丹念に分析し、シニカルな視点で通説を次々ひっくり返す。「昔はよかった」病への特効薬となる大胆不敵の日本論。
目次
はじめに
第1章 ありがた迷惑、火の用心
「火の用心」という奇妙な風習/夜回りに寄せられる不平不満/勝手な正義にふり回される人々/切り捨てられる少数派の声
第2章 治安のいい日本で暮らせてよかった~!
振り込め詐欺って、そんなに悪いの?/被害額は“過去最悪”だけど/「水と安全はタダ」はいまも同じ/「体感治安」悪化のからくり
第3章 長くて短いクレーマーの歴史
読売投書欄によせられた悪口雑言/「ご注意承り係」の誕生/大正時代の苦情対応マニュアル/「クレーマー」が正義だった頃
第4章 そうだ、長者に聞こう。
一攫千金の夢はいつの時代も/金持ちの名言はアテにならない/長者の職業は時代を映す/多額納税者が議員になれた時代/長者番付の廃止が隠したもの
第5章 コーラとウーロン茶
下戸の芥川龍之介が詠んだ歌/なぜ戦前はコーラが作れなかったのか/財閥がゴリ押ししたウーロン茶/復活のきっかけはピンク・レディー
第6章 まちがいだらけの自警団
「凶悪高齢者」があふれる街/愚連隊が自警団を生んだ/偏見と暴力が「正義」を歪める/関東大震災後の暴走と惨劇
第7章 きれいなおねえさんは、好きですか?
美人への嫉妬は昔から/「美人、求む」の採用条件/ブスが死んでもニュースにならない/「美人妻」のハイパーインフレ
第8章 安全・安心ウォーZ
“安全”と“安心”は水と油ほど違う/言い出しっぺは誰だった?/安全・安心をばらまく政治家たち/安全・安心が不安を生み出す
第9章 ハイテンションな元気をもらいました!
あなたは高電圧? 高血圧?/天孫民族からテンション民族へ/「ハイテンション」の登場/「元気になる」から「元気をもらう」に/元気じゃなくてもいいじゃない
第10章 熱中症時代 戦前編
熱中症研究の中心地/明治のこどもも倒れた/むかしのほうが暑さに弱い?/熱中症を無視した日本軍/「若者の弱体化」という精神論
第11章 ありのままの敬老の日
敬老は爆発だ!?/善人イメージを悪用する老人たち/戦前に敬老精神はあったのか/古典文学にもある「老いの哀しみ」/老人を征伐せよ!/成果主義で評価される老人
第12章 ウザい絆とキモいふれあい
江戸の住民転出率の高さ/じつは昔から薄かった「人情」/平気でこどもを売りとばす親/一五〇〇万分の三〇のリスクに怯える
第13章 注文の多いブラック商店街
なぜ商店街を守るのか?/なんでも反対、商店街/日本最初の商店街は丸ビルにあった/ドシロウト集団だった商店街
参考文献一覧
書誌情報
読み仮名 | ムカシハヨカッタビョウ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
雑誌から生まれた本 | 新潮45から生まれた本 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 224ページ |
ISBN | 978-4-10-610626-2 |
C-CODE | 0236 |
整理番号 | 626 |
ジャンル | エッセー・随筆、ノンフィクション |
定価 | 814円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2016/01/08 |
著者プロフィール
パオロ・マッツァリーノ
Mazzarino,Paolo
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在は未確認。著書に『反社会学講座(正・続)』『偽善のすすめ』『誰も調べなかった日本文化史』など。
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