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ケンブリッジ数学史探偵

北川智子/著

756円(税込)

本の仕様

発売日:2015/08/12

読み仮名 ケンブリッジスウガクシタンテイ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 182ページ
ISBN 978-4-10-610630-9
C-CODE 0222
整理番号 630
定価 756円
電子書籍 価格 648円
電子書籍 配信開始日 2016/02/12

斬新な日本史講義がハーバードで熱狂を呼んだ歴史学者が、ケンブリッジに移って選んだテーマは「17世紀の数学史」。近代国家が成立する以前、知識人たちは国家の枠にとらわれず、自由に知識を交換しあっていた。著者は京都で花開いた和算を起点に、西洋、さらには中国の数学文化まで縦横無尽にたどっていく。「知の生成」の瞬間を追い求め、真にグローバルな時代に相応しい歴史の語り方を探った知的興奮の書。

著者プロフィール

北川智子 キタガワ・トモコ

1980(昭和55)年福岡県生まれ。歴史学者。米国プリンストン大学にて博士号を取得後、ハーバード大学で教鞭をとる。現在は英国ケンブリッジを研究拠点に世界中を飛び回っている。マックス・プランク数学研究所招聘研究員。著書に『ハーバード白熱日本史教室』など。

目次

まえがき
I ケンブリッジを歩く
新たな始まり/ハーバードからケンブリッジへ/ニーダム研究所とニュートン研究所/静けさと熱気/ハーバードの教え子の訪問/まったく異なる英米の試験システム/ニュートンがいた頃/数学橋/なぜ数学を好きになったのか/ハーバードで話題にされた17世紀日本の数学/数学史の醍醐味
II 17世紀の数学史
第1幕 数学史の4つのモデル
数学史とは/モデルI:進化論型/モデルII:積み上げ型/モデルIII:補正・拡張型/モデルIV:偉人伝とその系譜
第2幕 日本 京都から栄えていった「和算」
割り算の由来として触れられた旧約聖書/クリスチャン・センチュリー/『塵劫記』/テキストブックを超えた遺題継承/誰もが挑戦できる算額
第3幕 西洋 科学者たちの「知識の共和国」
「科学革命」の時代/フェルマー予想/フェルマーはなぜ定理を思いついたのか/ギャンブルから始まった確率論/フェルマーとパスカルの手紙/フェルマーの最後のお願い/知識の共和国/ヨーロッパと日本の17世紀
第4幕 中国 西洋との出会いと「思想の断層」
マテオ・リッチ/中国語に訳された『原論』/皇帝が自ら数学の勉強を開始/布教の旅から「外交」の旅へ/国境を越えて広がる知識の共和国/『易経』の線/ブーヴェとライプニッツの手紙/ライプニッツの「曖昧なスタンス」
謎ときの終わりに グローバル数学史
知識の進化には地域差がある/思い込みを植え付ける歴史/試行錯誤から学ぶこと/マルチカルチュラルな歴史のクラス/5つの教訓
III 普遍性のある歴史とは
1.日本論から一歩離れること/2.学校で習った歴史との違い/数学と歴史は誰のために
あとがき
附録/資料一覧

インタビュー/対談/エッセイ

「基本だよ、ワトソン君」

北川智子

 イギリスの名探偵といえばシャーロック・ホームズ。彼が相棒に語りかけたセリフに、こんなものがあります。

「Elementary, my dear Watson.」
(基本だよ、ワトソン君。)

 あっと驚くような発見も、基本事項に立ち返ってこそ謎ときのヒントを得るというのは、シャーロックの決め言葉のひとつです。

『ケンブリッジ数学史探偵』は、学問の基本中の基本である「数学」と「歴史」のあいだにある「謎とき」をするものです。
 わたしに、その「謎」を持ちかけたのは、新潮新書の前作『ハーバード白熱日本史教室』。日本史がアメリカでどのように語られているかを書き、これから現代にぴったりの語りとはどんなものかを考えよう、というメッセージを残したところ、現代的な歴史とはどのようなものだろうか、という質問を多く受けました。日本では「日本史」と「世界史」が分けて教えられているため、日本と世界の間には見えない壁があるという事情が、現代的な歴史叙述の生成を難しくしているのです。そこで……
 ・日本史と世界史を分けない。
 ・日本史も世界史も一気に俯瞰する。
 現代にぴったりのグローバルな歴史とは、既存の歴史の枠をとりはらった「大きな物語」。現代的な世界規模の歴史叙述の一例が、この本です。

 探偵となる我々の舞台は17世紀の世界各地。日本の京都を出発点とし、ヨーロッパはパリへ。さらに中国の北京から数学の歴史をたどります。17世紀といえば、フェルマー、パスカル、ニュートン、ライプニッツなど、数学界のスターが生きた時代。しかし数学史に関係した人は意外に多く、時空を超えた旅の中で我々が出会う人物は、色々な場面にユニークな足跡を残しています。一体誰が、どんな発見の跡を残しているのでしょうか。17世紀を地球規模で眺めてみると……
 出来上がった世界の俯瞰図を見ると、数学も歴史もごくごく基本の事項に立ち返ってみることで、目の前にある問題がすらすらと解けていくのです。やはり、様々な発見の根底にあるのは、シャーロック・ホームズの名言そのもの。

「Elementary, my dear.」
(基本こそが、大事なんだよ。)

 もちろん本書はその「基本」の掘り返しだけでは終わりません。どんなふうに「基本」が「発見」に昇華するのか。謎ときの果てにあるものは「歴史が未来を創るためにくれるヒント」なのです。ヒントがいくつ見つかるかは、あなた次第。どうぞ、楽しんで読んでください。

(きたがわ・ともこ 歴史学者)
波 2015年9月号より

まとめテーマでくくる 本選びのヒント

担当編集者のひとこと

「知の生成」の現場を追い求めて

 著者の北川智子さんは3年前に著した新潮新書『ハーバード白熱日本史教室』で大きな話題を呼んだ歴史学者です。当時、映像や音声を駆使した斬新な授業に注目が集まりましたが、北米の大学で教えていた著者のそもそもの関心は、「グローバル化の時代に相応しい、ナショナルの枠にとらわれない歴史の語り方とはどういうものか」を考えることでした。本書は17世紀の数学史を材料に、その問いへの答えを探ったものです。
 しかし、「歴史の語り方」を探るのに選ばれたのがなぜ「17世紀の数学史」だったのでしょうか。それは、17世紀は西洋の主権国家体制がまだ完全には確立されていない時期であることに加え、数学が「普遍的なもの」であると同時に「文化的なもの」でもあるからです。
 西洋の17世紀は「科学革命」の時代で、ニュートン、フェルマー、パスカル、ライプニッツといった綺羅星のごとき天才たちが、国家の枠を超えて協力しながら「知の生成」に携わっていました。一方、日本の京都では宣教師たちの持ち込んだ数学も取り入れて和算の花が開きます。中国では清朝の皇帝が自ら西洋の数学を学び始めました。こうした知識人たち、そして文化の相互作用をたどっていくことは、そのまま「グローバル時代に相応しい歴史」の姿を描き出す作業となるのです。
 本書では、探偵のように「知の生成」の現場を追いかけていくことにこだわりました。その過程は実にスリリング。皆さんにもこの興奮を味わって頂ければと思います。

2015/08/25

蘊蓄倉庫

和算書の中に登場するアダムとイブ

 江戸時代前期を代表する和算書に、毛利重能が書いた「割算書」という本があります。この本では、割り算の起源を「ユダヤのベツレヘムというところに、智恵と徳を備えた名木があり、そこにモモ味の不思議な実がなっていた。人類の最初の二人(アダムとイブ)がその実を2つに割ったのが、そもそも割り算の始まりである」と記しています。和算書にバイブルの話が出てくるのは不思議な感じ(エデンがベツレヘムにすり替わっているのはご愛敬)ですが、1600年の前後100年くらいは、海外で語られる日本史において「クリスチャン・センチュリー」と呼ばれるくらいキリスト教の影響の強い時代でしたから、当時の常識ではそれほど不思議ではなかったのかも知れません。
掲載:2015年8月25日

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