今月の表紙の筆蹟は、青山七恵さん。
[青山七恵『繭』刊行記念特集]
波 2015年9月号
(毎月27日発売)
発売日 | 2015/08/27 |
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JANコード | 4910068230959 |
定価 | 102円(税込) |
[青山七恵『繭』刊行記念特集]
【インタビュー】青山七恵/幻想の「繭」から脱け出すとき
小池昌代/鏡と鍵
高橋弘希『朝顔の日』
高橋源一郎/大きな死と小さな死と、そして
内村薫風『MとΣ』
大森 望/え!? ほんとにそんなことが!
滝口悠生『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』
町田 康/歪み、軋み、熱を帯びる小説
畑野智美『みんなの秘密』
中江有里/(暗黒時代)の秘密
[ペリー荻野『バトル式歴史偉人伝』刊行記念公開対談]
ペリー荻野×中村獅童/演じてみたい、観てみたい、日本の偉人は誰だ!
大城立裕『レールの向こう』
玄侑宗久/「レールの向こう」への覚悟
葉室麟『鬼神の如く―黒田叛臣伝―』
青山文平/「葉室麟」世界、の引力
グレン・フランクル 高見浩/訳『捜索者 西部劇の金字塔とアメリカ神話の創生』
川本三郎/ペシミスティックな名作西部劇の秘密
大島幹雄『明治のサーカス芸人はなぜロシアに消えたのか』(新潮文庫)
ドリアン助川/旅の空に線引きはなかった
ジュール・ヴェルヌ 椎名誠・渡辺葉/訳『十五少年漂流記』(新潮モダン・クラシックス)
渡辺 葉/父娘が魅せられた冒険物語
[中村うさぎ『他者という病』刊行記念特集]
佐藤 優/暗黒の底から立ち上がる愛のリアリティー
中島義道/すさまじくヘンで、すさまじくまっとうな女
六車由実『介護民俗学へようこそ!―「すまいるほーむ」の物語―』
岡野雄一/みんなで食べるとおいしいね
御手洗瑞子『気仙沼ニッティング物語―いいものを編む会社―』
三宅秀道/教え子に読ませたい一冊
吉崎エイジーニョ『学級崩壊立て直し請負人 菊池省三、最後の教室』
齋藤 孝/本気の教師、教師の本気
D・カーネギー『決定版カーネギー 話す力―自分の言葉を引き出す方法―』
吉田尚記/人前で話す恐怖に負けないために
北川智子『ケンブリッジ数学史探偵』
北川智子/「基本だよ、ワトソン君」
金沢百枝『ロマネスク美術革命』
保坂健二朗/複合的な視点で見る、美の生命性
小松健一『写真紀行 心に残る「三国志」の言葉』
中村 愿/「三国志」を通して中国を撮る
[吉村昭『吉村昭 昭和の戦争3 秘められた史実へ』 吉村昭を読む]
森 史朗/文学者の眼
【新潮クレスト・ブックス2015-2016】
[ミランダ・ジュライ 岸本佐知子訳『あなたを選んでくれるもの』新刊インタビュー]
ミランダ・ジュライ(聞き手 フェリス・ルシア・モリーナ、翻訳・西山敦子)/電話をかけて、誰かと話さなくちゃ
[インタビュー]
ジュンパ・ラヒリ(聞き手 マイケル・エメリック、翻訳協力・小竹由美子)/言葉は差異の最後の砦
ただいま翻訳中!
新潮クレスト・ブックス カタログ1998-2015
【コラム】
池波正太郎『剣客商売』
宮崎香蓮/新潮文庫で歩く日本の町
三橋曉の海外エンタ三つ巴
【連載】
荒山 徹/歴史の極意・小説の奥儀 第6回
橘 玲/残酷すぎる真実 第7回
津村記久子/やりなおし世界文学 第16回
ドリアン助川/ニューヨーク・サン・ソウル 最終回
石原千秋/漱石と日本の近代 第27回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第66回
森まゆみ/子規の音 第20回
A・A・ミルン作、阿川佐和子訳/ウィニー・ザ・プーと魔法の冒険 第6回
末盛千枝子/父と母の娘 第18回
堀本裕樹、穂村弘/俳句と短歌の待ち合わせ 第25回
木皿 泉/カゲロボ日記 第17回
津村節子/時のなごり 第48回
編集室だより 新潮社の新刊案内 編集長から
編集長から
今月の表紙は青山七恵さん
◇今月の表紙の筆蹟は、青山七恵さんです。
新刊『繭』は夫婦、恋人、友人といった当り前の人間関係が孕む危うさを鮮烈に描き出す長編小説です。美容院を経営する舞と夫のミスミ、そして同じマンションに住む希子の三人を軸に物語は進行しますが、印象に残るシーンの一つが舞と希子が「ウナネ」という場所にあるひまわり畑に出かけていく場面です。「家五軒分くらいの敷地いっぱいに、大人の腰より少し高いくらいのひまわりが隙間なく植えられていた」畑で二人が交わす会話から、ストーリーは一段と加速して息もつかせぬ展開となっていきます。写真は都内世田谷区宇奈根に実在する広大なひまわり畑で、炎天下に咲き誇る花々を撮影させていただきました。
◇阿川弘之氏が逝去されました。今月刊行された『座談集 文士の好物』がはからずも遺作という形になってしまいました。バックナンバーで振り返ると、小誌には名随筆『食味風々録』の連載のほか対談、インタビュー、書評、表紙の筆跡など、実に多くの機会にご登場いただいており、その中で「あの戦争」への思いをたびたび口にされています。「横山大観に『生々流転』という名作がありますが、大東亜戦争の起承転結を立派な絵巻にする人があったら面白いと思うのです。強いて言えば、文学の上でそういうものが書きたかったのです」(七四年三月号)。「……一億玉砕とか、今に神風が吹くゾなんて信じてやしませんよ。それでも国の危機だと思うから、みんな一所懸命やった。死んだ連中も含めて、その我々の仲間のことだけは、どうしても書いておきたかった」(七七年一〇月号)。「戦後、負けてよかったっていろんな知識人が言ってるのを聞くと、ものすごく不愉快だったけど、いまになってみるとそう思うね。あれで、軍部という肥大性の癌を切り取れたんだから」(九七年一月号、北杜夫氏との対談)。戦後七十年の夏、またも愚劣な道に歩を進めかねないこの国をどのように見詰めておられたでしょうか。心よりご冥福をお祈り申し上げます。
◇新潮社ホームページ情報
http://www.shinchosha.co.jp/
◎『山崎豊子 スペシャル・ガイドブック―不屈の取材、迫真の人間ドラマ、情熱の作家人生!―』特設サイト
http://www.shinchosha.co.jp/yamasakiguide/
バックナンバー
雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。
雑誌から生まれた本
波とは?
1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。
創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。
創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。
現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。