医者と患者のコミュニケーション論
836円(税込)
発売日:2015/10/19
- 新書
- 電子書籍あり
研修医諸君、画面を見ずに患者を見よ。徹底的にリアルな診察室の人間学。
病院にはストレスがたまっている。医者が患者に病名や余命を告知して、治療方針を相談しながら決めるようになった。それで関係が良好になるどころか、相互
不信は増す一方なのだ。なぜか。どこでこじれるのか。どうすればいいのか。この問題を臨床医として考え抜いた著者の思考は、「わかりあう」ということの本質へと到達する。綺麗事や建前を排した、徹底的にリアルかつ深遠なるコミュニケーション論。
書誌情報
読み仮名 | イシャトカンジャノコミュニケーションロン |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
雑誌から生まれた本 | 新潮45から生まれた本 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 224ページ |
ISBN | 978-4-10-610638-5 |
C-CODE | 0247 |
整理番号 | 638 |
ジャンル | 科学 |
定価 | 836円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2016/04/08 |
蘊蓄倉庫
今では、患者本人にがんを告知するのは「当たり前」となっていますが、この慣習はそう古いものではありません。告知のご本家とも言うべきアメリカでも、1961年の時点では、告知を「しない」が88%でした。
それが1977年には「する」方が98%と、わずか10余年で逆転したのです。
日本では、それよりもはるかに遅れていて、告知が一般化したのは1990年代に入ってからでした。
問題は、それによって患者と医師との関係が良好になったかといえば、そうとも言い切れない点です。「本人のことだから本人に自己決定権を委ね、正しい情報を提供するのは当然だ」というのは、とても「正しい意見」なのですが、それが人間の感情に即したものかどうかということは別問題です。
『医者と患者のコミュニケーション論』は、この告知の問題の他、病院内でのコミュニケーションについて、臨床医が考え抜いたことをまとめた1冊です。
担当編集者のひとこと
病院あるある
新潮新書編集部では、翌月刊行の新刊のオビについて、編集部員全員で意見を交換することになっています。
この『医者と患者のコミュニケーション論』でも、何種類かのオビについて話し合いましたが、一番人気だったのが、現在巻かれている「研修医諸君、画面を見ずに患者を見よ。」というコピーのオビでした。
担当者としては、がんなどの深刻な病気での診察風景をイメージしたコピーだったのですが、どうやらそういう経験が無い人でも、思い当たるフシのあることだったらしく、その場の老若男女すべてが「そうなんだよねえ」といった感想を口にしていました。これはもう誰にでも覚えがある「病院あるある」なのでしょう。
子供の頃かかっていた病院では、かならずお医者さんがこちらの目やのどを触り、胸に聴診器を当てたものですが、今では滅多にそういうことがありません。
もちろん、検査技術が進化した現代において、そういう触診には昔ほどの意味はないのでしょう。が、それでもこちらとほとんど目も合わさず、パソコンの画面ばかり見ている先生にはどこか不安や不満を感じてしまう。それが人情というものでしょう。
本書は、臨床医として患者に接し続けてきた著者が、「患者とわかりあう」とはどういうことかを現場で考え抜いた成果です。
いかにわかりあうことが難しいか。一筋縄ではいかないことか。
そのことがよくわかるはずです。
その前提がわかってはじめて、私たちはわかりあうことへ歩を進められるのかもしれません。
2015/10/23
著者プロフィール
里見清一
サトミ・セイイチ
本名・國頭英夫。1961(昭和36)年鳥取県生まれ。1986年東京大学医学部卒業。国立がんセンター中央病院内科などを経て日本赤十字社医療センター化学療法科部長。杏林大学客員教授。著書に『死にゆく患者(ひと)と、どう話すか』『医学の勝利が国家を滅ぼす』『医師の一分』など。