日本的ナルシシズムの罪
770円(税込)
発売日:2016/06/17
- 新書
- 電子書籍あり
「頼られたい」という病、消えない「甘えの構造」、私たちの民族的宿痾とは。
個人より集団、論理より情緒、現実より想像――日本人には今も昔も固有のナルシシズムが息づいている。自分のことより他人の評価、集団との一体感こそが大切で、しばしばそれは法や論理を跳び越えてしまうのだ。うつ病の急増、ブラック企業や原発事故など、昨今の社会問題すべてに通底する、いわば民族的宿痾としての「日本的ナルシシズム」の構造を明らかにする。
書誌情報
読み仮名 | ニホンテキナルシシズムノツミ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 192ページ |
ISBN | 978-4-10-610671-2 |
C-CODE | 0236 |
整理番号 | 671 |
ジャンル | 社会学 |
定価 | 770円 |
電子書籍 価格 | 770円 |
電子書籍 配信開始日 | 2016/06/24 |
蘊蓄倉庫
「日本人」を精神分析した名著『「甘え」の構造』(土居健郎)は、刊行から半世紀近くたった今でもそのまま通じる指摘にあふれています。それは嘆くべきことなのかもしれませんが、例えば「子供の世紀」と題された結びの項にはこんな言葉があります。「実際今日のように、大人も子供もなく、男も女もなく、教養があるもないもなく、東洋も西洋もなく、要するにすべての差別が棚上げされた、皆一様に子どものごとく甘えているのは、たしかに人類的な退行現象といわねばならぬ……(後略)」。
担当編集者のひとこと
年来の仮説を立証する大胆な論考
ナルシシズム(自己愛)は程度の差こそあれ、誰にもあるものです。しかし日本人の場合、他の国々に比べて顕著な傾向(=日本的ナルシシズム)がうかがわれる、と著者は言います。
個人より集団を重んじる、論理より情緒に流される、現実より想像に浸りがち――こうした特徴はこれまでも識者たちが指摘してきたところですが、必ずしもネガティヴな面ばかりではありません。これらを、規律正しい、他人を思いやる、一体感を大事にする、と言い換えることも可能ですし、成長する国家にとっては望ましいものばかりに見えます。
しかし、成長から衰退へと向かう難問山積の社会において、こうした伝統的な日本的心性が様々な面で軋轢を生じるようになりました。うつ病の急増からブラック企業、原発問題や安保法制まで、すなわち個人から国家まで、年来の臨床例と学説をひもときながら、「日本」の精神分析を試みた大胆な論考です。
2016/06/24
著者プロフィール
堀有伸
ホリ・アリノブ
1972(昭和47)年東京都生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。大学病院勤務を経て、2012年から福島県南相馬市で精神医療に携わる。現在、ほりメンタルクリニック院長。うつ病や自殺などについて精神分析学や社会病理から考察する論文を発表。『日本的ナルシシズムの罪』が初の著書。