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広島はすごい

安西巧/著

814円(税込)

発売日:2016/06/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

マツダもカープも大復活。「独自の戦略」で勝て!

三期連続で最高益を更新したマツダ。新球場の設立以来売り上げが二倍になった広島カープ。両者に共通するのは、限られたリソースを「これ!」と見込んだ一点に注いで結果を出したことだ。独自の戦略を貫くユニークな会社や人材が輩出する背景には何があるのか。日経広島支局長が、「群れない、媚びない、靡かない気質」「有吉弘行や綾瀬はるかが体現する県民性」などに注目し、「今こそ広島に学べ」と熱く説く。

目次
まえがき

序章 広島にハマってしまった!
雑談抜きでいきなり本題/金井マツダ会長の自信/地位に恋々としない経営者たち/元気な製造業が発する「熱」/金メダリストの実兄が作った会社/カープも熱いぞ!/ベースボール・ビジネスを熟知するオーナー

第1章 黒田が戻ったのには理由がある――市民球団カープ考
凱旋初登板の日/遅咲きのエース/広島にもあったドーム球場構想/「縄ホームラン」を放った名選手/地元財界の熱意で作った広島市民球場/「樽募金」が行政を動かした/FAを認める余裕はなかった/黒田を感動させたファンの熱意/黒田と新井、FAを宣言/そして同時にカープ復帰/広島人にとってカープは「暮らしの一部」

第2章 広島とHIROSHIMA――「軍都の被爆」がもたらしたもの
吉田拓郎が絶叫した里心/岩国基地から流れてくるアメリカン・ポップス/軍都として発展/なぜ広島に原爆が落とされたのか/リーダー不在の地/中心市街地は賑わっているものの/日本一の路面電車網/外国人観光客は欧米人が主体/「爆買い」の恩恵を受けられない街

第3章 独立不羈だか天下は取れない――歴史から見る広島人気質
村上水軍の当主・武吉/織田、豊臣とも真っ向勝負/求めたのは「自由な海」/現代の広島人にも通じるメンタリティ/結局、天下は取れない……/安芸国人の性格/海外移住者が最も多い県/ハワイの日系人社会では広島弁が標準語

第4章 アンデルセンとカルビー――職人肌の経営者たち
パン屋のセルフサービスを発明したアンデルセン/菓子パンの冷凍に四苦八苦/特許の開放は「市場を育てるため」/銀行をベーカリー兼レストランに/アンデルセンとカルビーの不思議な縁/実家は原爆で全壊/カルシウムとビタミンB1/「かっぱえびせん」で求めた広島の味/藤谷美和子のCMで「ポテトチップス」大ブレーク/経営者の顔が見えない会社/経営者というより職人

第5章 戦艦大和とジェットエンジン――産業集積都市・呉の実力
遣唐使船も建造/浅野藩の船舶建造拠点に/東洋一の軍港/「大和ミュージアム」に活かされた呉の技術力/トヨタも参考にした作業工法/呉の造船を体現した男・真藤恒/90年代以降は航空機事業が活況/エアバスのエンジン製造を担う

第6章 1番ピンを狙え!――「弱者」マツダのモノ造り戦略
ロータリーエンジンに社運を賭ける/取引先を前に社長が大演説/ガソリンがぶ飲み車/住銀の進駐からフォード傘下へ/販売ディーラー5チャネルの無謀/リーマン・ショックで追い詰められる/どん底から連続最高益へ/狙うのは「1番ピン」のみ/「モノ造り革新」から「経営革命」へ

第7章 ニッチを磨き続ける――「媚びない」広島人たち
『里山資本主義』のエコストーブ/過疎を逆手にとる会/酒屋の主人にしてピエロ/実は日本の三大酒処/「酒都」西条/なでしこジャパンに贈られた化粧筆/一大勢力を築いた「ゆめタウン」/電子マネーを最も使う街/「100円ショップ」ダイソーも広島発/芸能人たちにも濃厚な「広島気質」

あとがき

書誌情報

読み仮名 ヒロシマハスゴイ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-610672-9
C-CODE 0225
整理番号 672
定価 814円
電子書籍 価格 814円
電子書籍 配信開始日 2016/06/24

蘊蓄倉庫

海外移住者が最も多い県

「陽気で楽天的」な広島人気質をよく現す指標として、海外移住者の多さが挙げられます。明治から昭和にかけての海外移住者の出身地を見ると、広島県が10万9893人で第一位。特に多かったのが、1885~94年にかけて日本政府と協約を結んでいたハワイ王国への移民です。この10年間のハワイへの移民2万9084人のうち、実に1万1122人が広島出身者でした(県別でももちろん第一位)。その数の多さもあって、「ハワイの日系人社会では広島弁が標準語」と言われるほどだったそうです。
掲載:2016年6月24日

担当編集者のひとこと

マツダ車の思い出

 母親が免許を取って、初めて我が家が所有することになった車はマツダの大衆車「ファミリア」でした。4速のマニュアル式で、室内の付属設備はほとんどなし。正確に言えばカセットデッキだけはついていたのですが、オートリバース機能がなく、片面の再生が終わると「ガチャ!」とすごい音を立ててロケットのようにカセットが飛び出してくるという驚きの仕組みになっていました。正直なところ安さ以外に取り柄がない車でしたが、30年前のマツダの大衆車は、まさに我が家のような「貧乏家庭にお似合いの車」のイメージでした。

 そのマツダの近年の躍進ぶりには目を見張るものがあります。2012年、新エンジン「スカイアクティブ」を搭載しデザインを一新したSUV(スポーツ用多目的車)「CX-5」を発表すると、この車が同年の日本カーオブザイヤーを受賞。さらに、その二年後には大衆車「デミオ」、昨年には小型スポーツカーの「ロードスター」と、二年連続でマツダの車が日本カーオブザイヤーを受賞したのです。この間、売り上げも絶好調で、ここ三年は毎年史上最高益を更新している状態です。かつて住友銀行やフォードに「支配」されていた弱小メーカーのイメージは完全に払拭されました。
 実際、他のメーカーの車と比べても、マツダ車の美しさは際立っているように感じます。他のメーカーの車が直線的なのに対し、マツダ車は曲線を使って流れるイメージを形にしており、生き物のような躍動感がある。マツダの表現で言えば、zoom-zoomってやつです。ソウルレッドのCX-5を見てしまうと、他のメーカーのSUVが見劣りする気がするほど。30年前の「カセットガチャ!」のマツダ車に乗っていた身からすると、マツダの車がこんなに評価される日がくるとは隔世の感があります。

「広島はすごい」を企画したきっかけは、このマツダの大復活だったのですが、調べてみると、マツダの復活を生んだ原動力に「広島的なるもの」があるのが分かりました。実は、広島には独自の戦略を磨いて特定の分野で圧倒的な存在感を持っている会社がたくさんあるのです。「広島の話、誰か書いてくれないものか」と思っていたら、以前に『経団連』の執筆をお願いした安西巧さんが昨年の春に日経の広島支局長に赴任されることになり、ベストのタイミングでベストの方に執筆をお引き受けいただけることになりました。
 安西さんご自身、東京から広島に家探しに出かけた日が黒田投手の復帰登板のオープン戦に重なり、「カープ現象」の洗礼を最初から受けたそうですが、今では「カープ現象」にも驚かなくなり、すっかり広島人化しているそうです。
 広島の会社や人は実にユニーク。日本再生のヒントもそこかしこにあります。面白いですよ。

2016/06/24

著者プロフィール

安西巧

アンザイ・タクミ

1959年福岡県北九州市生まれ。日本経済新聞編集委員。早稲田大学政治経済学部を卒業後、日経に入社し、主に企業取材の第一線で活躍。広島支局長などを経て現職。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』など。

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