損する結婚 儲かる離婚
858円(税込)
発売日:2017/02/17
- 新書
- 電子書籍あり
婚姻届に判を押すのは、借金の連帯保証人になるより恐ろしい。
大人の男女にとって最大のリスクは「結婚相手」である。実際の結婚と離婚でどう金が動くのか、世間には驚くほど正確な情報が伝わっていない。知っているはずの弁護士も建前しか話さないのだ。しかし、結婚相手選びは株式投資と同じ。夫婦は、ゼロサムゲーム=お互い食うか食われるかの関係にある。そんな身もフタもない男女のマネーゲームの真相と、適切な結婚相手の選び方を、具体的なケースをもとに解き明かす。
書誌情報
読み仮名 | ソンスルケッコンモウカルリコン |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
雑誌から生まれた本 | Foresightから生まれた本 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610706-1 |
C-CODE | 0232 |
整理番号 | 706 |
ジャンル | 一般・投資読み物 |
定価 | 858円 |
電子書籍 価格 | 814円 |
電子書籍 配信開始日 | 2017/02/24 |
薀蓄倉庫
結婚制度の仕組みを端的に示す図
この本には、結婚制度の仕組みを端的に示す図が掲載されています。
それがこちら。
現在の結婚市場の特徴は、男女が強制的に1対1対応になることが前提です。つまり、自由な恋愛市場では、ひとりの男性が複数の女性と同時につきあうことができた。あるいは、取っ替え引っ替えして、重なってはいないが実質的に複数の女性とつきあうことができるはずなのに、結婚市場では、ひとりの男性はひとりの女性としか結婚できないことになっています(つまり、重婚の禁止です)。
では、このような制度で得するのはだれか。それは自由な恋愛市場ではあぶれてしまう男性です。自由な恋愛市場(緩やかな一夫多妻制)では苦戦する男性が多数なので、かれらを救済する仕組みが今の結婚制度なのです。そう考えると、図の示す意味はかなりビターな内容ですね。
さて、この事実は、民主主義を採用している先進国では一夫一妻制を強制する結婚制度が支持されていることにリンクしています。そして、これら、民主主義を採用している先進国の共通する悩みが「少子化」。これを解決するすべについても、著者の藤沢和希氏は、「コロンブスの卵」的ともいえる、これまでにない秘策を提示します。では、その解決法とはなにか。ご興味ある方は是非、本書を読んでみてください。
掲載:2017年2月24日
担当編集者のひとこと
結婚とは、男女の間の、食うか食われるかのマネーゲーム
本書のタイトルは『損する結婚 儲かる離婚』。
えっ、『幸せな結婚 不幸な離婚』なんじゃないかと思うのが、ふつうの大人だと思います。お金のことに詳しい人なら、結婚すればお互いに得することもあり、離婚すれば、二人であれば節約できるものも別々になるから『儲かる結婚 損する離婚』だよね、と考えるでしょう。
でも、実は違うんです。「結婚」という制度は、男女がいっしょになって幸せになるためというより、むしろ、将来、夫婦が揉めた時に、どっちがいくらお金を払わないといけないかを法律で決める枠組み。だから、「愛」とかフワフワしたものは直接、結婚とは関係ない、という衝撃的な事実を、著者の藤沢数希氏はわれわれに提示します。
では、外資系金融機関に勤務していた著者が「結婚の損得」を金融工学を駆使して見たら、どのような結論が導き出されるのか、その数例をここに引用します。
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結婚というのは、同じく将来の金銭の授受の権利義務関係を契約する、ある種の金融商品の取引であると考えられる。そして、この金融商品は、毎月分配型の特殊な債券なのである。(第1章より)
夫が、医師や弁護士、大企業のサラリーマン、ある程度の規模の会社経営者など、まともな職業で、比較的高額な所得を得ている場合、離婚裁判は長期化する。……奥さんは、婚姻費用を長期間にわたって搾り取り続けることにより、経済的な利益を得ることができるからだ。(第2章より)
恋愛というゲームは、……ふたりでプレイしてふたりとも勝てるゲームではあるが、結婚の金融商品としての側面に限れば、それは多分にデリバティブ商品に相似している。つまり、これまでに見てきた金持ち男性側のリスク、損失は、逆に言えば、そうした男性と結婚する女性側のリターン、利益に他ならないわけだ。(第4章より)
若いころに大きな金額を稼いで、そろそろ引退しようと考えているスポーツ選手と結婚しても、儲からないことがわかる。結婚する前に持っていた金は、財産分与の対象にはならないからだ。(第4章より)
男選びは、一にも二にもフローなのであり、株式投資と同じように将来キャッシュフローの予測が極めて重要なのだ。(第4章より)
お嬢さんとの結婚は、関係が悪化したときは、諸刃の剣だということを思い知る。妻の所得はゼロなのだから、当然だが、こちらが払うコンピ(婚姻費用)地獄は最大限のものになる。(第4章より)
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などなど、本書の魅力は、「愛」だの「恋」だの「幸せ」などのオブラートに包まれた「結婚」という制度の本当のところを、徹頭徹尾、カネカネカネ、男女間の金銭の流れに絞って見てみるところにあるでしょう。
そういう「身もフタもない」分析をしている点で、結婚したい人にも、結婚した人にも、離婚したい人にも、離婚した人にも、そして、お金にしか興味のない人にもおすすめです。
2017/02/24
著者プロフィール
藤沢数希
フジサワ・カズキ
PhD、物理学研究者、外資系投資銀行でクオンツ、トレーダーを経て、2022年11月現在は香港にて資産運用業を営む。メルマガ「週刊金融日記」発行。著書に『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門』『「反原発」の不都合な真実』『外資系金融の終わり』など。