東大卒貧困ワーカー
792円(税込)
発売日:2017/06/16
- 新書
- 電子書籍あり
「あのう……給料は?」「金なんか払うわけねえだろ」東大卒・元アナウンサーが体験した――修羅場。
東大卒、元アナウンサーの筆者が、介護退職した後に見たのは、奴隷労働にも等しい「派遣・非正規」の実態だった。徹夜での12時間労働、日給1300円の仕事、研修名目で3ヶ月間無給等々、人の弱みにつけこむ求人が、今も堂々とまかり通っている。さらに資産家のふりをさせる詐欺紛いの「替え玉」派遣まで登場――徹底した現場主義による潜入取材で見えてきた、知られざる労働現場の真実。
書誌情報
読み仮名 | トウダイソツヒンコンワーカー |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 192ページ |
ISBN | 978-4-10-610722-1 |
C-CODE | 0233 |
整理番号 | 722 |
ジャンル | ノンフィクション |
定価 | 792円 |
電子書籍 価格 | 792円 |
電子書籍 配信開始日 | 2017/06/23 |
薀蓄倉庫
「低賃金派遣は1000万人以上?」
賃金や待遇が安定しない派遣労働者について、2014年に厚労省が126万人、労働者全体の2%に過ぎないと発表しているが、実態にそぐわないと著者は指摘している。派遣登録することで送られてくる求人案件の数から推測するに、全国の短期派遣求人は常時1000万人以上になるというのだ。
人材企業の登録労働者数にしても、1社のみで600万人、大手数社も100万単位だから、やはり総数126万人とは整合しない。
本業では生活費をまかなえず、土日に派遣労働をしている人も多く、連合では何らかの形で派遣労働に従事している人は1800万人以上と推定しているが、実数は誰も把握出来ていないのが実状だという。
それだけの人がいるのにもかかわらず「いない」ことにされてしまうのは、なぜか。誰かの都合が悪いから、なのだろうか――。
掲載:2017年6月23日
担当編集者のひとこと
「働き方改革」からこぼれ落ちている人々
著者は、東京大学を卒業後、某テレビ局でアナウンサー、そして記者として活躍してきたが、身内の介護のために退社し、以降10年近く、派遣として様々な現場労働に従事してきた。
その徹底した現場ルポに加え、積み重ねた取材の中から浮かび上がるのは、日給1300円、交通費ピンハネ、12時間徹夜連続労働、3ヶ月間無給といった、まさに「奴隷」ともいえる現場派遣労働の姿だ。
有効求人倍率がバブル以来の数字となり、人手不足が叫ばれる中、労働者は本当に引く手あまたなのだろうか。そしてその先で待っているのは――。
本当に「働き方改革」が必要なのは、そもそもその想定からこぼれ落ちている人々なのだと痛感する。
2017/06/23
著者プロフィール
中沢彰吾
なかざわ・しょうご
1956(昭和31)年生まれ。ノンフィクションライター。東京大学文学部卒業後、1980年毎日放送入社。アナウンサー、記者として勤務後、身内の介護のため退社。以後、派遣労働者として働きながら執筆活動に入る。著書に『中高年ブラック派遣』など。