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こうして歴史問題は捏造される

有馬哲夫/著

880円(税込)

発売日:2017/09/15

  • 新書
  • 電子書籍あり

慰安婦、南京事件、原爆……不毛な論議に終止符を打つ。

中国、韓国から「歴史問題」ハラスメントが繰り返され、終結しないのはなぜか。彼らに迎合するかのように新聞記者やテレビ番組制作者が歴史を歪曲してしまうのはなぜか。問題の根本は「歴史リテラシー」の欠如にある。第一次資料の読み方、証言の捉え方等、研究の本道を説き、慰安婦、南京事件等に関する客観的事実を解説。プロパガンダに与せず、イデオロギーに依らず、謙虚に歴史を見つめる作法を提示する。

目次
序章 歴史問題はなぜ終わらないのか
中韓からの終わりなき「歴史問題」ハラスメントと、それに迎合するかのような日本国内のメディア。捏造とプロパガンダに立ち向かうためには、私たちのリテラシーを高めるしかない。「歴史リテラシー」の重要性を提唱する。
第一章 歴史論議とは反証可能でなければならない
水掛け論に終わらないために必要なのは反証可能な第一次資料の検討である。当事者の証言や日記、独裁国家の歴史を鵜呑みにしていては、決して事実に近づくことはできないのだ。歴史研究の基本を説く。
第二章 「南京事件」「慰安婦問題」の論議を冷静に検討する
「南京事件」も「慰安婦問題」も資料を冷静に読めば、結論は明らかである。「市民の無差別大量殺人」「日本軍の強制連行」を強引に主張する背景には論者の立場が関係している。論議の前提となる姿勢を考える。
第三章 反証を無視すれば捏造になる
NHKの歴史ドキュメンタリーや朝日新聞の「慰安婦」報道に携わる人たちに欠けているのは、歴史研究のリテラシーである。「新発見」資料に飛びついていては間違いは繰り返されるばかりだ。資料検討の方法を示す。
第四章 中国と韓国が反証不可能な論議をするのには理由がある
中韓が歴史問題を蒸し返し続ける背景を理解する必要がある。彼らのアイデンティティに関わっていて、現在進行形の問題である以上、解決することは極めて困難なのだ。ドイツと日本の決定的な立場の違いにも目を向ける。
第五章 歴史修正主義とはなにか
「歴史修正主義」というレッテル貼りは真実の追究において無意味である。「慰安婦」の問題を考えるとき、日本だけを対象にする必然性はないし、現在の基準で過去を断罪することも不毛である。歴史を動態的に捉えることを薦める。
第六章 歴史研究に右も左も国境もない
イデオロギーに依らず、プロパガンダに与せず、自国の視点のみに拘泥せず、できるだけ謙虚に、資料に忠実に歴史を考える。その姿勢こそが歴史リテラシーの涵養に求められるものだ。グローバルヒストリーの可能性を検討する。
あとがき
註釈

書誌情報

読み仮名 コウシテレキシモンダイハネツゾウサレル 
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 256ページ
ISBN 978-4-10-610734-4
C-CODE 0221
整理番号 734
ジャンル 歴史・地理
定価 880円
電子書籍 価格 880円
電子書籍 配信開始日 2017/09/22

インタビュー/対談/エッセイ

核ミサイルと「慰安婦」

有馬哲夫

 以前から不思議に思っていることがある。なぜ、日本と韓国のメディアは、北朝鮮のミサイルと核の開発という国民の生死にかかわる問題が目の前にあるのに、そのような緊急性がまったくない「慰安婦問題」を騒ぎ立てるのだろうか。なぜ、国民の目を現在と未来、生命と財産よりも、過去と感情の問題へ向けようとするのだろうか。まるで、北朝鮮の意を受け、日韓両国民の感情を操作し、この「ならずもの国家」のミサイル・核開発から注意をそらそうとしているかのようだ。
 1990年代の米国国務省の日本・韓国・北朝鮮の状況報告書を読んで気付いたことがある。北朝鮮のミサイル・核開発が問題となった1993年に「慰安婦問題」も注目を集めるようになったということだ。それ以降の報告書も、読みようによっては、ミサイル・核の開発が進むと、それから目をそらさせるように、「慰安婦問題」が持ち出されてくるように思える。捏造ジャーナリストなら、これに飛びついて、都合のいい部分をつまみ食いして「北朝鮮がミサイル・核開発から目をそらさせるため慰安婦問題を捏造し、日韓のメディアを使って煽り立てた」と陰謀論を唱えるだろう。
 しかし、国務省文書のなかでは、韓国と北朝鮮は同じ地域のカテゴリーに入るので、米国にとって重要な事項がそのなかで並行的に報告されることになる。だから、並行関係にあるとは確認できるが因果関係があるとまではいえない。つまり、北朝鮮のミサイル・核開発が先行し、そのあとに「慰安婦問題」が出てくるのか、両者が原因と結果の関係にあるのか、証明はできない。
 しかしながら、国連人権委員会にクマラスワミ報告書が提出される1996年までには、北朝鮮が「慰安婦問題」を自らのミサイル・核開発から目をそらさせる道具として意識するようになっていたことは確かだ。当時の国連人権委員会の理事国として、韓国側のものよりもさらに信じ難い「慰安婦」の証言をほぼ丸ごとこの報告書に採用させているからだ。これを錦の御旗として、日韓のメディアが「慰安婦問題」を世界公認の「歴史問題」であるといい立て、一層日韓関係がこじれることになった。まんまと北朝鮮の術中にはまったのだ。
 今日の北朝鮮による核ミサイル危機を作り出した戦犯は数多くいる。8年間この問題に目を背け続けたバラク・オバマ前米国大統領、「慰安婦問題」を口実に2年間も安倍総理との会談を拒み続けた朴槿恵前韓国大統領、「慰安婦問題」を騒ぎ立て国民の注意をそらし続けた日韓メディア、それを抵抗なく読んでいた読者……。拙著『こうして歴史問題は捏造される』で、歴史を論じる上ではいくつかの基本的な知識や姿勢、すなわち「歴史リテラシー」が必要だと説いたゆえんである。

(ありま・てつお 早稲田大学教授)
波 2017年10月号より

薀蓄倉庫

「新発見!」に要注意

 テレビの歴史ドキュメンタリーでは、「新発見!」と謳うことがあります。「第一次資料」が新たに見つかった、という触れこみのこともあります。そう言われると、何だか凄いことのようについ思うのですが、有馬哲夫氏は、『こうして歴史問題は捏造される』の中で、こうした「新発見!」「第一次資料」を売り文句にした番組は要注意だ、と警告します。当事者の証言、手記イコール真実ではない、という前提を持たずに、一方的な内容になることが多いからです。「新発見!」した資料の信頼度を確かめるには地道な作業が必要だ、と有馬氏は説きます。そうした作業を怠った番組や報道が、ときに「歴史問題」の発火点となるのです。

掲載:2017年9月25日

担当編集者のひとこと

歴史問題のもやもやが晴れる本です

 慰安婦問題にせよ、南京事件にせよ、よくわからないのは、なぜたかだか数十年前の話で、論者によってこんなに言うことが違うのか、ということです。
 よく考えたら、社内や家庭内でも、ほんの数日前の発言を巡って「ああ言ったはずだ」「いや言っていない」といった水掛け論が繰り広げられることは珍しくないので、数十年前ともなれば、そういうこともあるのかな、という気もします。
 しかし、家庭内の問題に研究者はいませんが、歴史問題に関しては数多くの研究者がいて文献、資料もあるので、やはりこんなに違うのはどこかおかしい。もやもやします。
 じゃあなぜこうなっているのか。
 そのあたりが、本書を読めばスッキリとわかります。
 慰安婦、南京事件については、どこまでが事実で、どこからがプロパガンダの領域なのか。なぜこういう「歴史問題ハラスメント」が繰り返されるのか。
 さらに日本国内でそのハラスメントに手を貸す人たちの手口とはどういうものか。
 本書は決して「戦前の日本は素晴らしかった!」とか「南京では誰も死んでいない!」といった勇ましい内容ではありません。
 冷静、かつ客観的に歴史に向き合うとはどういうことか。
 その作法と、いまわかっている事実について知ることで、もやもやが晴れていくかと思います。

2017/09/25

著者プロフィール

有馬哲夫

アリマ・テツオ

1953(昭和28)年生まれ。早稲田大学社会科学総合学術院教授(公文書研究)。早稲田大学第一文学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。2016年オックスフォード大学客員教授。著書に『原発・正力・CIA』『日本人はなぜ自虐的になったのか』など。

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