今月号の表紙は伊坂幸太郎さん。
波 2017年10月号
(毎月27日発売)
発売日 | 2017/09/27 |
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JANコード | 49100638231079 |
定価 | 102円(税込) |
[新連載]
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲
[伊坂幸太郎『ホワイトラビット』刊行記念特集]
[インタビュー]伊坂幸太郎/立てこもり事件とミステリー
宇田川拓也/洗練された初期衝動
村上貴史/星座のような籠城劇
[帚木蓬生『守教』(上・下)刊行記念インタビュー]
帚木蓬生/隠れキリシタンの姿を書き残すために
ローレン・グロフ、光野多惠子/訳『運命と復讐』
中江有里/人生を一変させる結婚の両義性
玉岡かおる『花になるらん―明治おんな繁盛記―』
東 えりか/百貨店の母と呼ばれる女傑の物語
畑野智美『消えない月』
吉田大助/おそれながらも、断然支持する
[ビートたけし『アナログ』刊行記念対談]
ビートたけし×又吉直樹/男と女は会った瞬間が一番いい
平松洋子『日本のすごい味―おいしさは進化する―』『日本のすごい味―土地の記憶を食べる―』
ヤマザキマリ/味への恋文
木原武一『田舎暮らしと哲学』
内山 節/無事な生き方とは何か
佐藤 優『ゼロからわかる「世界の読み方」―プーチン・トランプ・金正恩―』
伊藤幸人/ダ・ヴィンチ的巨人
[藤原緋沙子『茶筅の旗』刊行記念インタビュー]
藤原緋沙子/二十年以上かかった卒業論文
廣末 登『組長の妻、はじめます。―女ギャング亜弓姐さんの超ワル人生懺悔録――』
鈴木智彦/裏社会に咲いた愛の物語
[宮部みゆき『この世の春』刊行記念]
宮部みゆき『この世の春』を読み解く8つのキーワード
[特別企画]
平松洋子/銀の皿――新潮社社食の半世紀 第3回
[短期集中連載]
南陀楼綾繁/ナミ戦記――あるリトルマガジンの50年史
太田 光『文明の子』(新潮文庫)
酒井若菜/未来はいつも面白い
乾 緑郎『機巧のイヴ』(新潮文庫)
北上次郎/“魂”を巡る、忘れがたい物語
【コラム】
高橋真理子『重力波 発見!―新しい天文学の扉を開く黄金のカギ―』(新潮選書)
高橋真理子/文系の皆さんへのラブレター
梅原 猛、上田正昭、三浦佑之、上野 誠『古事記―日本の原風景を求めて―』(とんぼの本)
藤村シシン/呼吸する日本神話
とんぼの本編集室だより
有馬哲夫『こうして歴史問題は捏造される』(新潮新書)
有馬哲夫/核ミサイルと「慰安婦」
第十六回小林秀雄賞・新潮ドキュメント賞 決定発表
【連載】
山下洋輔/猛老猫の逆襲 山下洋輔旅日記 第19回
野村 進/多幸感のくに 第11回
津村記久子/やりなおし世界文学 第41回
谷川ゆに/境界紀行 たましいの行方をさがして 第7回
堀本裕樹、穂村 弘/俳句と短歌の待ち合わせ 最終回
戌井昭人/煙たかろう、さのよいよい 第10回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第91回
佐藤賢一/遺訓 第22回
編集室だより 新潮社の新刊案内 編集長から
立ち読み
編集長から
今月号の表紙は伊坂幸太郎さん。
◇夏の終り、川本三郎さんとせんだい文学塾に参加してきました。山形でも同様の小説教室をやっている池上冬樹さんが勧進元。その長く地道な活動には頭が下がります。震災後、「こんな時に小説教室なんて」という外野の声、あるいはそう自問する受講生も多く、一時は参加者がずいぶん減っていた由。「6年たってようやく震災のことを書けるようになったかな、という感じですよ」と池上さん。
◇心残りなのはせっかく町歩きの達人・川本さんと旅しながら、仙台をのんびり歩く時間がなかったこと。かねてから伊坂幸太郎作品の舞台を散策してみたかったのです。『ユリシーズ』片手にダブリンを歩くみたいに。川本三郎『「男はつらいよ」を旅する』を持ってロケ地巡礼するみたいに。
◇今月の表紙はその伊坂さん。本になってから読もう、と書下ろしの最新作『ホワイトラビット』は初秋の大きな楽しみにしていますが、どうやら舞台はやはり仙台のようです。写真に写っているのは、執筆用の愛機レッツと打合せに使ったノート。伊坂さん筆によるウサギは、さて……?
◇南陀楼綾繁さんに50年間の「波」とその前身「Catalogue」をまとめて読んでもらいました。昔の「波」などを眺めていると、出版を謳われながらとうとう出なかった本、というのが結構あるのに気づきます。例えば「純文学書下ろし特別作品」シリーズの広告に掲載された遠藤周作『戦争』(「インパール作戦を素材として」と予告あり)も武田泰淳『夷狄の女』も開高健『白い紙』も刊行されていませんし、執筆を予告されていた三島由紀夫、吉行淳之介、阿川弘之、井上靖、佐多稲子、野坂昭如、井上ひさしといった作家たちもついにこの叢書から本を出すことはありませんでした。かつて映画専門誌「Cahiers du Cinema」が「映画監督が撮ろうとしながら途中でボツになった企画」を特集したことがありましたが、〈ついに書かれなかった文学史〉というのも想像力を刺激します。
◇堀本裕樹さんと穂村弘さんの「俳句と短歌の待ち合わせ」が最終回。お題を出してみたかったなあ。来春、増補して単行本化されます(これは間違いなく、です)。
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バックナンバー
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雑誌から生まれた本
波とは?
1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。
創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。
創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。
現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。