人生の持ち時間
814円(税込)
発売日:2017/10/14
- 新書
変更できない運命の部分と、どう向き合うか。建設的に生きるための15話。
親しき者との別れ、老いにともなう病、たび重なる天災、貧しさがもたらす歪み……、いつの時代、どこの国に生まれようと、私たちを取りまく現実はしばしば善悪を超えている。自分で変更できない運命の部分とどう向き合うか。人間として魅力的とはどういうことか。「自分で方途を考え出す」「好きな人生の道を選ぶ」「時には非合理な異次元を楽しむ」など、人生の持ち時間を無駄にしないための原則を説く。
目次
第一話 自分で方途を考え出すことが、人間の条件
被災者の中の認知症高齢者/典型的な「ぼけ老人の嘘」/「安心して暮らせる」という総理の嘘
第二話 自分で好きな人生の道を選ぶ力
「善きサマリア人」と現職警察官/学校秀才は洋の東西を問わない/生き残ることの意味と幸福
第三話 日本社会に感じる未熟と喧騒
文句のつけようのない国/「人間的会話」のできない日本人/何でも「山もり」にするテレビ
第四話 機械頼みが人間的魅力を失わせる
食物と語学の密接な関係/日本人の方が異常感覚/貧しさが人間の生活を歪める
第五話 謝罪の強制は憎しみを増幅させる
謝るとはお金で償うこと/決して人を追い詰めてはいけない/民主主義的表現の自由とは
第六話 地位と名誉とお金が感情を閉じ込める
恵まれた境遇と悲劇の種/朴槿恵さんと「聖職者」/竹下総理の「寂しい場所」
第七話 真の奉仕とは排泄物の始末である
老年には何でもあり/「もうあと何年生きる気なのか」/マンパワーという緊急の課題
第八話 基礎教育の欠如が貧困をもたらす
アフリカでの人造りの難しさ/子供は労働力という計算/馴れ合い体質と汚職体質
第九話 「実態」は善悪を超えて人を考えさせる
「アフリカは人生の教師」/お金も時間も体力も余計に使う/賄賂は特権階級の証
第十話 半世紀前の東京オリンピックを思い出して
豊かな日本への幕開けの年/遠藤周作さんの幻の観戦記/主観的都会人だった亀倉雄策氏
第十一話 小出しのワルクチも誠実のあり方――三浦朱門語録
風通しのいい家で/少しひん曲がった表現/わざとねじ曲げた解釈
第十二話 言葉の上だけのポリティカル・コレクトネス
トランプという踏み絵/好悪は道徳性の物指しか/自分の素顔をさらす正直者
第十三話 「美しい状態」は偶然の結果ではない
細川護熙氏とミカンの苗木/植物も人間も顔色に出る/バオバブと「ヒョウタンの先生」
第十四話 時には非合理な異次元を楽しむ
初めての日本ダービー観戦/競馬場は合目的的である/肩書が色あせて見える場所
第十五話 誰にも変更できない運命の部分
箪笥の中の「未確認物体」/「略奪した紙幣」で子猫を買う/計測できない「役に立ち方」
書誌情報
読み仮名 | ジンセイノモチジカン |
---|---|
シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
雑誌から生まれた本 | 新潮45から生まれた本 |
発行形態 | 新書 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610738-2 |
C-CODE | 0210 |
整理番号 | 738 |
ジャンル | 人文・思想・宗教 |
定価 | 814円 |
薀蓄倉庫
権力者ゆえの寂しさ
竹下登氏(1924‐2000)が首相だった頃、偶然官邸で出会った著者を自分の執務室へと招き入れ、こう漏らしたことがあったそうです。「ここは寂しい場所なんですよ」。政界きっての気配りの人として知られた竹下氏らしく、作家という職業上、何かの役に立つこともあるのでは、との気づかいだったようですが、下心や遠慮にとり囲まれた時の権力者の心底というのは、いつの時代も、案外そういうもののようです。本文では、韓国大統領の座から陥落するはるか以前、若き日の朴槿恵氏との邂逅についても明かされています。
掲載:2017年10月25日
著者プロフィール
曽野綾子
ソノ・アヤコ
1931(昭和6)年東京都生まれ。作家。聖心女子大学卒。1979年ローマ法王庁よりヴァチカン有功十字勲章を受章、2003年に文化功労者。1995年から2005年まで日本財団会長を務めた。『老いの才覚』『人間の基本』『人間にとって成熟とは何か』など著書多数。
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