
外国人が熱狂するクールな田舎の作り方
814円(税込)
発売日:2018/01/17
- 新書
- 電子書籍あり
デービッド・アトキンソン氏 藻谷浩介氏絶賛! なにもない飛騨の里山を、毎年数千人の外国人旅行者が訪れる「宝の山」に変えた逆転の戦略とは。
岐阜県北部の飛騨に、世界80ヶ国から毎年数千人の外国人旅行者を集める人気ツアーがある。その最大の売りは「なにげない里山の日常」だ。小学生のランドセル姿に、カエルの鳴き声の拡がる田んぼに、蕎麦畑の中に立つ古民家に、外国人は感動する。なぜ、なにもない日本の田舎が「宝の山」になりうるのか。地域の課題にインバウンド・ツーリズムで解決を図った「逆張りの戦略ストーリー」を大公開。
書誌情報
読み仮名 | ガイコクジンガネッキョウスルクールナイナカノツクリカタ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610748-1 |
C-CODE | 0263 |
整理番号 | 748 |
ジャンル | ビジネス・経済 |
定価 | 814円 |
電子書籍 価格 | 814円 |
電子書籍 配信開始日 | 2018/01/26 |
インタビュー/対談/エッセイ
日本の田舎は世界の宝
日本が人口減少し始めて間もない2007年の10月、私は「クールな田舎をプロデュースする」株式会社
創業から10年の節目で本書の執筆に向き合うことを決めたのには、おおきく2つの理由があります。ひとつは、私たちのこれまでの蓄積に対して、国内外の様々なメディアでご紹介頂いたり、大臣の名前が入った表彰状がオフィスに何枚も並んだり、私自身全国各地からお呼び頂いたりと、各方面よりご評価頂く機会が増えてきたことがあります。自分たちが向き合って試行錯誤してきた過去10年間を整理し、同様の分野に興味を持つ方や地方部での活動に従事する方に、改めて田舎でのビジネスの可能性を感じて頂きたい。そして、私たちの試行錯誤を地方創生の流れの糧として頂きたい、と感じたからです。
もうひとつは、地方部での新たなビジネスチャンスに関する例示という側面に加え、俗に言う「ワークライフバランス」の実現の選択肢の1つとして、地方部での生活の素晴らしさを伝えたい、ということがありました。人口や情報が過度に都市に集中する日本社会のライフスタイルに疑問を持つ人々も数多くいらっしゃるようですが、現実には地方への移住はハードルが高いと感じられる方がほとんどでしょう。そういう方々に、地方部での新たなチャレンジは、没頭できるライフワークとプライベート・ライフの両立を可能にするチャンスとなりうることをお伝えしたかったのです。
もし本書を手に取って頂く機会があれば、読者の皆さんには、シンプルにたった1つのメッセージをお感じ頂ければと思います。それは、身の回りにある「当たり前」を疑い、自らを信じて動けば道は開けるということです。田舎の何気ない日常が世界の旅行者から賞賛されていること、そんななりわいを創ったら地方部に若手住民が増えたこと、大手企業に雇われるより田舎の零細企業を営むほうが豊かであると感じられることなどは、都市に住む方にはなかなか実感して頂けないかも知れません。私たちのこれまでの取り組みを手がかりに「当たり前」を見直し、自分なりのライフスタイルを志向する人がこの社会に一人でも増えたとすれば、上梓までの労苦は私の更なるライフワークの糧に変わるでしょう。
(やまだ・たく 株式会社「美ら地球」代表取締役)
波 2018年2月号より
薀蓄倉庫
中国人の団体客より欧米豪の個人客
飛騨の里山をサイクリングするSATOYAMA EXPERIENCEのツアーは、参加者の8割が外国人という特徴がありますが、もうひとつ際だった特徴があります。それは、その外国人参加者の8割が欧米豪の個人旅行者である、ということです。
インバウンドでの街おこしを考えると、どうしても中国人の団体客を当て込むことになりがちですが、中国人の団体客を当てにするのはいろんな意味でリスクが高い。その点、欧米豪の旅慣れた個人旅行者が主要顧客になれば、事業の価値が守りやすくなります。この顧客構成は、事業を開始する際に、ターゲットを絞り込んだ結果なのです。
掲載:2018年1月25日
担当編集者のひとこと
どこでもできる地方創生の策
SATOYAMA EXPERIENCEに参加するために、岐阜県の飛騨市古川を訪ねたのは2017年9月のこと。SATOYAMA EXPERIENCE(里山体験)とは、『外国人が熱狂するクールな田舎の作り方』著者の山田拓さんが代表を務める、株式会社「美ら地球(ちゅらぼし)」が提供している着地型のサイクリングツアーです。
ツアーは、白壁の美しい飛騨古川の街中からスタート。途中、蕎麦畑の中に立つ古民家を見たり、道端の湧き水を汲んでお茶にして飲んだり、田んぼのあぜ道でカエルの鳴き声を聞いたり、飛騨牛農家の方と立ち話をしたりと、日本の田舎の「なにげない日常」を体験しながら進んでいきます。
「そんなものがウリになるの?」と思うかも知れませんが、この「なにげない日常」こそが最高のコンテンツ。事実、このツアーの参加者の8割は外国人で、その外国人の8割は欧米豪の旅慣れた個人旅行者です。これまでにツアーを体験したゲストの国籍は80にものぼります。世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」では、99%のゲストが絶賛のコメントを寄せているのです。
しかも、このツアーを支えるスタッフのほとんどは移住者。外から人とカネを呼び込んで、地域の再生を図る一つのモデル的なケースが、このSATOYAMA EXPERIENCEと言えます。
実際、優秀なガイドさんに導かれたツアーは素晴らしく、映画「君の名は。」の舞台にもなった飛騨の空は澄みきっていましたが、一方で風景は「日本のどこにでもあるもの」とも言えます。「どこにでもある風景」を「商品」に仕立て上げたビジネスノウハウにこそ価値があるわけで、逆に言えば、日本のどの地域でも同じ事業を展開できる可能性がある。
「地方創生」は、かけ声として使われることは増えましたが、本書の著者のように実際に地方部で事業を興し、それを継続・発展させている人は多くありません。地方創生に限らず、広く日本の今後を考える糧としてお読み頂ければ幸いです。
2018/01/25
著者プロフィール
山田拓
ヤマダ・タク
1975(昭和50)年奈良県生まれ。株式会社美(ちゅ)ら地球(ぼし)代表取締役。横浜国立大学大学院工学研究科修了。コンサルティング会社勤務の後、夫婦で525日間の世界放浪を経験。2007年、飛驒市観光協会の戦略アドバイザーに就任し「美ら地球」を創設。