死と生
836円(税込)
発売日:2018/07/14
- 新書
- 電子書籍あり
「死」とは何か。なぜ、怖いのか。死ねば、どこへゆくのか。稀代の思想家が挑む究極の謎。
「死」。それは古今東西、あらゆる思想家、宗教家が向きあってきた大問題である。「死ぬ」とはどういうことなのか。「あの世」はあるのか。「自分」が死んだら、「世界」はどうなるのか――。先人たちは「死」をどう考えてきたのか、宗教は「死」をどう捉えているのかを踏まえながら、人間にとって最大の謎を、稀代の思想家が柔らかな筆致で徹底的に追究する。超高齢化社会で静かに死ぬための心構えを示す、唯一無二の論考。
書誌情報
読み仮名 | シトセイ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
雑誌から生まれた本 | 新潮45から生まれた本 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 224ページ |
ISBN | 978-4-10-610774-0 |
C-CODE | 0210 |
整理番号 | 774 |
ジャンル | 人文・思想・宗教 |
定価 | 836円 |
電子書籍 価格 | 836円 |
電子書籍 配信開始日 | 2018/07/27 |
蘊蓄倉庫
欲望や快楽に縛られている人生の無様さ
いま、たいていの人たちは、通常の仕事に加え、ネットやSNSなどの情報発信の業務も増え、煩瑣なことで日常に忙殺されています。さらには株や投資で儲けようとし、果たして意味があるのか、よくわからないままに、心身を削られながら、生きています。気が付けば、白髪が増え、顔にはしわができ、体調も悪くなり、人間ドックにいって癌の宣告でも受けて、いきなり「死」に襲われます。
突然、「生」が遮断されてしまうのです。
しかし、これは、現代のみならず、古代ローマ帝国でも、哲学者のセネカが似たような言葉を残していると、本書で説かれています。
――何かに忙殺されている人間は、忙殺されているうちに、稚拙な精神をもったまま、何の準備もなく、いきなり老年に襲われる。そこであわてて、この老人は、わずか数年の延命を乞い求め、空しい若作りでごまかそうとする。しかし、それでも病気や衰弱が襲ってきて、「死」を思い知らされる。そのときになって、怯えながら末期を迎え、自分の人生はおろかだったと後悔するのだ――
つまり、日常に忙殺され、「死」について一切考えないままに過ごしていくと悲惨なことになってしまうという警鐘を鳴らしているのです。
暇なことは犯罪的であると決めつけ、めいっぱい時間を使って、働き、活動し、楽しみ、幸福を追求することが充実した「生」だと思い込み、金を稼ぎ、出世し、社会的な名声を得て、他人から羨ましがられる暮らしをし、世界中を旅して、うまいものをたらふく食べ、快楽を求めるという生き方を目指していても、突然、「老」と「病」が襲い掛かってくるのです。
そして、なんとか生きながらえようと、延命治療や願掛けやお布施でも何でもやり、みじめな醜態をさらけ出すことになります。これがあまりに無様であると、セネカは示唆しています。
誰も避けられない「老」「病」「死」を常に想起しながら、「生き方」を組み立てる思考の必要性を強く説いているのです。現代にこそ必要な箴言ではないでしょうか。
掲載:2018年7月25日
担当編集者のひとこと
人間にとって最大級の謎に挑んだ書
本書の著者、佐伯啓思氏は、1949(昭和24)年生まれの社会思想家で、京都大学こころの未来研究センター特任教授(京都大学名誉教授)でもあります。
これまで「人間の幸福」について追究し、日々のニュースや国内外の情勢から、人間の本質を衝いた著作が数多くあります。新潮新書でも『反・幸福論』を筆頭に7冊刊行されています。
その佐伯氏が本書で迫ったのは、「死」という人間にとって壮大な最大級のテーマです。「『死』とは何か?」「なぜ、怖いのか?」「『私』が死ねば、『世界』はどう自覚されるのか?」という、「幸福」の対極にあるテーマについて、古代ローマ人の考え方から、トルストイや鈴木大拙など先人たちの死生観、仏教やキリスト教の思想、現代の超高齢化社会での孤独死や自死を考え尽くし、柔らかな筆致で、「死の正体」にスリリングに迫っています。
その一部を挙げてみましょう。
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○「死ぬ」とはどういうことなのか?
○「自分」が死ねば、「世界」はどう認識されるのか?
○死後、「自分」には何が起きるのか?
○「あの世」は本当にあるのか?
○先人たちや宗教は、「死」をどのように捉えてきたのか?
○「死」から「生」を見た先にあるものとは?
○老いて、生きた「粗大ゴミ」にならないためには?
○「自死」は本当に罪悪なのか?
○超高齢化社会で静かに死ぬためには?
○死ぬための生き方とはどのようなものか?
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現代の知性による思考の経緯を、読者が追体験できる、唯一無二の論考です。
ぜひ、ご一読ください。
2018/07/25
著者プロフィール
佐伯啓思
サエキ・ケイシ
1949(昭和24)年、奈良県生まれ。社会思想家。京都大学名誉教授。京都大学こころの未来研究センター特任教授。東京大学経済学部卒。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。2007年正論大賞。『隠された思考』(サントリー学芸賞)『反・幸福論』『さらば、資本主義』『反・民主主義論』『経済成長主義への訣別』『死と生』『近代の虚妄』など著作多数。雑誌「ひらく」を監修。