ホーム > 書籍詳細:「あの世」と「この世」のあいだ―たましいのふるさとを探して―

琉球弧から北海道まで。近代の呪縛を超えて、日本の“境界”をゆく。

「あの世」と「この世」のあいだ―たましいのふるさとを探して―

谷川ゆに/著

821円(税込)

本の仕様

発売日:2018/12/15

読み仮名 アノヨトコノヨノアイダタマシイノフルサトヲサガシテ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
雑誌から生まれた本 から生まれた本
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 214ページ
ISBN 978-4-10-610794-8
C-CODE 0239
整理番号 794
ジャンル 哲学・思想、哲学・思想
定価 821円
電子書籍 価格 821円
電子書籍 配信開始日 2018/12/21

「これほどに怪しい天地の中にある、自分自身の不思議ささえ、知覚することのできない者」――江戸後期の思想家・平田篤胤は、不思議な体験を否定する人々を指してこう言った。合理主義と科学全般のもとで日本人が失いつつある霊性、その一方で、言いがたく身体に宿る無意識の古層……琉球弧の島々から北海道まで、土地と人と自然の中にある神々や死者を想い、古代から現代に連なるたましいの水脈を探す。

著者プロフィール

谷川ゆに タニガワ・ユニ

1972年東京都生まれ。早稲田大学大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。著書に『平田篤胤 交響する死者・生者・神々』『知の共鳴 平田篤胤をめぐる書物の社会史』(吉田麻子名義)がある。2018年12月現在、学習院女子大学、東海大学、相模女子大学で講師を務める。

目次

序 旅のはじまり
一 魂のふるさとに「かえりたい」……鹿島
二 「生まれ変わり」が救う個我と孤独……日野
三 生者を見守る風葬墓……与論島
四 聖地・御嶽で子供にかえる……宮古島(一)
五 「神と人間と自然の交渉」……宮古島(二)
六 湧き上がる水の力……伯父・谷川健一への手紙/水俣(一)
七 古代を宿した身体を軸に……伯父・谷川健一への手紙/水俣(二)
八 平田篤胤「幽冥界」と、緑の中に滲み出す境界……秋田
九 古層の水脈につながる実践の旅……遠野
十 死者との踊りに満ちる愛……徳之島
十一 岩石も島も生き物……伊豆
十二 アイヌ「梟の神様」への手紙……北海道(一)
十三 生と死の連環する洞穴「アフンルパロ」……北海道(二)
十四 半島に吹きわたる「あゆの風」……能登
十五 「私の母様の橋」での共鳴を求めて……八丈島
後序 旅のあと

インタビュー/対談/エッセイ

現代人のかえり方

谷川ゆに

 この数年のあいだに、私にとって身近だった人たちが次々と亡くなりました。老齢だった伯父たちや両親です。いつまでも大人になり切れない私は、その一々がとても寂しく、それは心もとなくてずいぶん落ち込みました。
 そもそも、私には特定の宗教的信仰がありません。よって「あの世」も「かみさま」もない。今までは、それで特に困ることもなかったわけですが、いざリアルな死が目の前に突き付けられると、それについて考えるための枠組みも言葉も実は持っていない。どこに求めていいのかすら皆目分からない。そのことに愕然としました。
 いつの間にか近代的合理を身につけてしまった現代人にとっての「この世ならざる」世界や存在とはいったい何なのか。全国を旅して、その土地に古くから伝わる「あの世」と「この世」のあいだに立つことで、その問いに身を浸したくなった背景には、たしかに、そんな私の個人的な状況が関係していたのは間違いありません。
 ところが、各地を彷徨しているうち「まてよ、この世ならぬものをすっかり失ったかに見える私たち現代人も、我知らず『魂のふるさと』に触れていることがあるのではないか」と気づきはじめたのには、自分でも驚きました。
 たとえば私は子供の頃、夏に訪れた河原で、手のひらほどの大きさをした丸い石を、亀のようだと思って拾い、それから一日中、その石を亀としていっしょに遊んだ覚えがあります。川の水に放ったり、また取り出してその甲羅を撫でたり、私はすっかりその小石と仲良くなりました。日がくれて帰る頃には、まったく別れるのが切なくなったほどです。
 現代の大人からすれば、子供ならではの豊かな空想の賜物、ということになりそうですが、石に霊性を認め、親しくつながりをもつ幼い私は、その実、近代以前の信仰のありようにとても近い。八丈島ではたくさんの石を、生命体のように祀った「イシバサマ」に出会いましたし、琉球弧では「石が成長する」と信じられており、かみさまとして大切にされている場所がある。かつての私は、河原でかみさまと遊んでいたわけです。
 古来、死者や神々は、人間が暮らしの中で親しくつながる身近な山海や川、草木、岩石、動物や虫たちの中に感覚されてきました。自然の万物やコスモスこそが、いわば私たちにとっての「魂のふるさと」であるということができます。
 その懐かしい場所に現代人がかえろうとしたとき、道しるべはすでに身体感覚の中に宿っている。子供の頃はそれが顕著ですが、大人になったとしても、自分の内部にある古層、野性的感受性をたどれば、私たちはいつでもそこにかえることができる……、そんなことを感じ考えた本です。

(たにがわ・ゆに 著述家)
波 2019年1月号より

蘊蓄倉庫

物に対する日本人独特の臨在感覚

 古来、日本人は山川草木はもとより岩や石などの物にまで神々を見る、とよく言われます。山本七平氏の名著『「空気」の研究』の中に、古代墓地の発掘に従事していた日本人が連日人骨をさらううち、半病人のようになってしまったという話が紹介されています。同じ作業をしていてもユダヤ人は何ともないのに、日本人は不思議なほどに物質の背後に何らかの臨在を感じる。そうした傾向は、近代知とは別のところで日本人の身体に根付いているもののようです。本書では、「幽冥界」で知られる平田篤胤の研究者が、そうした身体性を手がかりに、日本各地に古代からある「あの世」と「この世」の“境界”を歩きます。

掲載:2018年12月25日

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