番号は謎
858円(税込)
発売日:2020/08/19
- 新書
- 電子書籍あり
不可解な法則? なぜ伝説に? 不吉? 幸せ? すべての番号にドラマがある!
郵便番号はどう決まる? 国道100号が存在しない理由は? M78星雲ってどこだ? 交響曲マイナス1番とは? 上野駅13・5番線はどこへ向かう? バーコード、ISBN、原子番号、テレビチャンネル、マイナンバー……私たちを取り囲む数々の番号の起源から裏事情までを徹底調査。そこには混沌と秩序をめぐる驚くべき人間ドラマが――その魅力に取り憑かれた著者が案内する、面白くてためになる「番号」の世界!
参考文献
書誌情報
読み仮名 | バンゴウハナゾ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
雑誌から生まれた本 | 新潮45から生まれた本 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 240ページ |
ISBN | 978-4-10-610873-0 |
C-CODE | 0236 |
整理番号 | 873 |
ジャンル | 社会学、実用・暮らし・スポーツ、雑学・クイズ |
定価 | 858円 |
電子書籍 価格 | 858円 |
電子書籍 配信開始日 | 2020/08/19 |
インタビュー/対談/エッセイ
番号の楽しみ
筆者の本業は化学・薬学系のライターであるが、一方で国道めぐりという妙な趣味も持っており、これまで監修を含めて三冊ほどの本を出している。
鉄道マニアならわかるが、なぜ国道などに興味を持ったのかとよく聞かれるのだが、大変説明に困る。自分自身その理由をずいぶん考え、はたと思い当たったのが、列車は名前で呼ばれるが、国道は番号で呼ばれるという点であった。
筆者は小さい頃からなぜか1から順に番号がついたものが好きで、野球選手も顔は覚えていないのに背番号だけは記憶していたりする。本業である化学も、その基礎となる元素には、1から順に原子番号が振られている。なるほど、自分は番号が好きであり、番号がついたものは1から順に全てゲットしたくなる性格であったのだ。
というわけで、なぜ国道が好きかと問われた際には、「番号が好きだからだ」と答えるようにしたのだが、残念ながら相手の怪訝そうな表情は解消されるどころか、二倍ほどになってしまった。ただ数字が並んでいるだけのものの、何がそんなに面白いのかと思うらしい。
だが番号というものは、いろいろな謎の宝庫でもある。国道100号はなぜ存在しないか、テレビのチャンネル番号はなぜ地域によってバラバラなのか、住所の丁目や番地はどうやって決まるかなど、よくよく見れば番号は謎だらけであり、調べればそれぞれに理由があるのだ。
ということで勢い余って書いてしまったのが、今回の新刊『番号は謎』である。電話番号、郵便番号、車のナンバー、天体番号、学校や銀行、パソコンや車の型番からマイナンバーに至るまで、身の回りの番号の起源と謎を追いかけた一冊だ。
書き始めてみて驚いたのは、世の中には番号に関する資料が、実に少ないことであった。これほど番号は身近に満ち溢れていながら、その存在は誰にも意識されず、誕生や発展の経緯も記録に残りにくい。というわけで、執筆には予想以上に苦戦し、ずいぶん時間がかかってしまった。
もう一つ面白かったのは、番号と人間の関わりだ。番号で呼ばれたことに逆上して身を滅ぼしてしまった政治家もいれば、ひと財産をはたき、弁護士を立ててまで好きな背番号を手に入れたサッカー選手もいる。番号による図書の分類整理に生涯を捧げた者もいれば、国民総背番号制の導入に人生を賭けて抵抗した者もいる。企業の栄枯盛衰にも、番号は重要な役割を演じている。番号などただの数字と、簡単に斬って捨てられないのだ。
我ながら妙な内容ではあるが、逆に言えば類書の全くない本でもある。さらに、カバーの裏にはISBNやバーコードなど四種もの番号が印刷されており、その点でも大変お買得であるので、ぜひお買い求めいただきたいと願う次第である。
(さとう・けんたろう サイエンスライター)
波 2020年9月号より
薀蓄倉庫
上野駅「13・5番線」は別世界へのホーム
世界的ヒット作『ハリー・ポッター』の主人公は、英国キングス・クロス駅の9番線と10番線の間にある「9と3/4番線」から魔法の世界に旅立ちます。もちろん、これは架空のホームで、現在は観光客向けに「PLATFORM 9 3/4」というプレートが駅の壁に掛けられているそうです。
一方、上野駅には「13・5番線」というホームが実在します。13番線と14番線の間にあった荷物積み下ろし用ホームを改装したもので、周遊型臨時寝台列車「トランスイート四季島」の専用ホームとなっています。行き先は日光だったり函館だったりコースによってまちまちですが、別世界への旅立ちをイメージさせる粋な仕掛けです。
掲載:2020年8月25日
担当編集者のひとこと
「忌み数」を乗り越える知恵
ふだん身の回りで何気なく目にしている数多くの「番号」たち。本書を読むと、いっけん無味乾燥な数字に、思いがけないドラマが秘められていることに驚きます。
電話番号、郵便番号、背番号、テレビチャンネル、マイナンバー……本書で扱われる22種類の番号の中で、私が特に気に入ったのは「欠番」の話。欧米では「13」が忌み数として嫌われ、アメリカでは「13恐怖症」(triskaidekaphobia)に罹患している人が約2000万人もいるのに、じつは13が忌み数とされた根拠が不明だというのだから不思議です。しかも、あえて迷信を打破する意気込みで打ち上げたアポロ13号がトラブルに遭遇し、ますますアメリカ人の間に13恐怖症が広がったと聞くと、番号の魔力を感じずにはおれません。
一方、「道路」の章では、忌み数を克服した洒落たエピソードが明かされます。かつて国道444号に対して「縁起が悪い」という声が上がったものの、4を三つ合わせて「しあわせ街道」という愛称を考えて事なきを得たとか。
番号をめぐる人間の心理と駆け引きのドラマを、ぜひ本書でお楽しみいただければと思います。
2020/08/25
著者プロフィール
佐藤健太郎
サトウ・ケンタロウ
1970(昭和45)年、兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。医薬品メーカーの研究職等を経て、2020年8月現在はサイエンスライター。2010年、『医薬品クライシス』で科学ジャーナリスト賞受賞。著書に『炭素文明論』『世界史を変えた新素材』など。