コンビニは通える引きこもりたち
814円(税込)
発売日:2020/09/17
- 新書
- 電子書籍あり
「部屋から出ない」「原因は不登校」「暴力事件を起こす」全部誤解です! 激変する「引きこもり事情」とその対処法を徹底解説!
「9割近くは外出している」「不登校がきっかけは2割以下」「10年以上働いた後になることも」――。顕在化してからおよそ25年、かつては「青少年の一時的な現象」とされた引きこもりの内実は激変した。その数はいまや100万人を優に超え、問題も多様になり、従来のイメージでは捉えきれなくなっている。親は、本人は、社会は、何をすればいいのか。引きこもり支援で圧倒的な実績を誇るNPOの知見で示す最適解。
書誌情報
読み仮名 | コンビニハカヨエルヒキコモリタチ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610874-7 |
C-CODE | 0236 |
整理番号 | 874 |
ジャンル | 社会学、福祉、ノンフィクション |
定価 | 814円 |
電子書籍 価格 | 814円 |
電子書籍 配信開始日 | 2020/09/17 |
インタビュー/対談/エッセイ
一筋縄ではいかない
引きこもりと言えば、自室や自宅にこもり、外に出ないもの――。そんな風に思っていませんか? 実際は、9割近くが近所のコンビニ程度の外出はしており、自宅から出ない人は少数、自室からもめったに出ないという人は稀です。
引きこもりは、昨年起きた2つの事件(登戸通り魔事件、元農水事務次官長男殺害事件)や「8050問題」が取り上げられたことなどから、大きな注目を集めています。引きこもりという言葉自体も20年以上前から使われており、十分に浸透しています。
ですが様々なイメージや事件による報道が先行し、その実態が正しく理解されているとはとても言えません。そこで本書ではその理解を進めるべく、引きこもりに関する様々な事柄を、支援現場に居る立場から書かせていただきました。
私が所属する「認定NPO法人ニュースタート事務局」は、1994年から25年以上、引きこもりなどの若者の支援活動をしています。訪問活動と共同生活寮の運営がその中心で、これまで1600人以上を支援してきました。私はそこで年間約150組(今年はかなり減っていますが)の親御さんの対面相談や、ブログやメールマガジンなどの文章での発信を担当しています。
本書のキーワードは、引きこもりにまつわる「多様性」です。
コンビニに通える人から、自室からもほぼ出ずに親も何年も姿を見ていないという人。学生時代のいじめがきっかけという人から、10年同じ会社に勤めていた後に引きこもりになったという人。引きこもり半年という人から、30年という人。親子で外食に行き仲良く会話する人から、親を骨折させるほどの暴力をふるう人。健康な人から、精神疾患や発達障害がある人。
引きこもりと一括りにされますが、その実態はとにかく多様です。私自身が相談を受けたケースや、団体として支援したケースを元にした事例を入れることで、その多様さがイメージしやすくなるようにしてみました。
多様な実態には多様な支援によって対応するしかありませんが、それゆえに親が迷ってしまうことはよくあります。うまく解決できない親には、言いがちな言葉と定型的な考え方が共通してあります。そうした状態から抜け出すためにはどうすればいいのか。私たちの支援の実態から、親に求められる「変化」と「覚悟」についても記してみました。
本書は、引きこもりをあまり知らない方に向けて、なるべく客観的な視点で全体像を伝えることを目指して書きました。正しい理解が、この大きな社会問題の解決への第一歩となるはず、と信じています。
(くぜ・めあり 認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ)
波 2020年10月号より
薀蓄倉庫
「勉強になりました」
引きこもり支援のNPOで働く著者は、引きこもりに対する啓発のための講演活動などもしています。聴衆は主に子どもが引きこもりになっている親たちですが、講演後のアンケートを読むと、むやみに我が子の引きこもりを長引かせている親たちに共通する感想があるのだそうです。それが「勉強になりました」です。
こう記す親は、いつまでも「勉強」を続けるだけで、行動しない。しかし、引きこもり問題の解決には、勉強はそこそこにしてできるだけ早く行動に移り、その行動がダメなら支援団体や方法を変えるなど、あの手この手での「行動」を続けていくことこそが必要だ、と著者は言います。
掲載:2020年9月25日
担当編集者のひとこと
引きこもりの9割は外出している
昨年(2019年)は、引きこもりに関連した重大事件が2つ起こりました。川崎市登戸の通り魔事件と、元農水事務次官による長男殺害事件です。農水事務次官の長男殺害事件では、被害者である長男が近隣の小学校の運動会に怒って「ぶっ殺す」と叫んだことから、加害者の元事務次官はその3日前に起こった登戸の通り魔事件を想起して、「自分の息子も周りに危害を加えるかも知れない」と考え、犯行に至ったとされます。
こうした事例が強烈なことから、引きこもりを「暴力事件を起こしがちな人」と見る向きがありますが、著者によると引きこもりのほとんどは「おとなしい人たち」だそうです。暴力が発生する場合でも家庭内限定で、その矛先が社会の不特定多数に向かう、ということはほとんどありません。
そもそも、引きこもりはいまや、優に100万人を超えています。しかも、そのおよそ半数は40歳以上で、「きっかけが不登校」という人は2割以下。「部屋からぜんぜん出てこない」という人はほとんどおらず、実際の引きこもりのうち9割は近所のコンビニ程度の外出は繰り返しています。 問題が顕在化してからおよそ25年。もはや引きこもりは「青少年の一時的な現象」とは言えず、極めて多様な様相を呈しているのです。
本書は、引きこもり支援で圧倒的な実績を誇るNPO法人スタッフによる、現代の引きこもり事情と支援策の解説です。一読すれば、引きこもりという問題が誰にでも起こりうる、極めて身近な問題であることが分かります。また、この問題をどんな形であれ本当に解決に導こうとすれば、親の側にも相当な覚悟が求められることにも気づきます。自宅にリアル中二病の息子を抱える身の私にも、とても参考になりました。
2020/09/25
著者プロフィール
久世芽亜里
クゼ・メアリ
認定NPO法人「ニュースタート事務局」スタッフ。2023年10月現在は主に親の相談、事務、広報などを担当している。青山学院大学理工学部卒。著書に『コンビニは通える引きこもりたち』。